紫斑 purpura

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さまざまな原因により静脈(小静脈~深部静脈)に,血栓形

成を伴う炎症を生じた病態である.

皮膚科学的に主に取り扱う表在性の静脈炎は,静脈への物理

的刺激(静脈ライン留置・血管拡張薬や抗生物質,FOYなどの

薬剤投与)によるものが最多である.そのほか,うっ滞性静脈

瘤などの静脈循環障害,結核などの感染症,Behçet病で下肢に

血栓性静脈炎を生じることが多い.その他の類縁疾患,悪性腫

瘍などが関与することもある.

下腿や静脈ライン留置部に好発する.静脈の走行に一致して

圧痛~ 痒を伴う索状の硬結をきたし,発赤を伴うことも多い.

重症例では潰瘍形成をきたすこともある.病因によっては週単

位で病変が移動し,再発性に経過することもある.

特徴的な臨床症状により診

断は容易である.薬剤投与歴や

Behçet 病,結核の有無などの検索も必要になることがある.索

状の硬結をきたす鑑別診

断としてMondor病や顎口虫症などが

あげられる.

第一に安静,そして冷却が重要である.NSAIDsが必要とな

ることも多い.症状が強い場合はステロイド内服も考慮される.

血小板減少に伴う紫斑の総称である.血小板数が 10 万/mm3

以下で打撲などによる皮下出血をきたしやすくなり,5 万/mm3

以下になると出血傾向が著明となり紫斑が生じる.病因から,

特発性(自己の抗血小板抗体によるもの),症候性(薬剤性,

定義・分類

治療

診断・鑑別診断

症状

病因

概念

紫斑/1.血小板減少性紫斑  

151

11

7.血栓性静脈炎 thrombophlebitis

紫斑 purpura

1.血小板減少性紫斑 thrombocytopenic purpura





白血病,癌の骨髄浸潤,SLE,感染症,DICなど),遺伝性

(Wiskott‑Aldrich症候群および Fanconi症候群)に分類される.

1)特発性血小板減少性紫斑

idiopathic thrombocytopenic purpura;ITP

小児では感染症の回復期に,成人ではとくに原因なく緩徐に

発症する.皮膚の点状出血,斑状出血などが主である.ほかに

口腔粘膜,鼻粘膜,歯肉などの粘膜出血,血尿,下血,月経過

多などもみられる.脾腫はみられない.

血小板結合性免疫グロブリン(platelet associated IgG;PAIgG)

が産生された結果,血小板が破壊され,血小板が減少すること

により生じる.自己抗体が産生される機序は不明である.

血小板数の減少(10万/mm3 以下),出血時間延長(3 分以上)

を認める.90%以上の症例で血中にPAIgGを認め,骨髄穿刺

では,血小板消費を反映し骨髄巨核球の増加を認める.凝固系

に異常はないので,プロトロンビン時間(PT),活性部分トロ

ンボプラスチン時間(APTT),フィブリノーゲン値などは正常

である.

確定診断にはPAIgG の検出と骨髄穿刺が不可欠である.ま

た,以下に記す症候性あるいは遺伝性血小板減少性紫斑を除外

する.Henoch‑Schönlein紫斑や血友病が鑑別を要する.前者は

下肢に比較的限局した紫斑を形成し,皮膚症状以外に関節痛,

腹症など多彩な全身症状をきたす点で,後者は関節内出血など

深部出血を認める点で鑑別される.

第一にステロイド内服が行われ,重症例では免疫グロブリン

を大量投与する.免疫抑制薬や一時的な血小板輸血も有効であ

る.これらの薬物療法で

80%以上が寛解するが,慢性的に寛

解しない症例に対しては摘

脾術を行う.

治療

診断・鑑別診断

検査所見

病因

症状

152

11章 血管炎・紫斑・その他の脈管疾患

11





2)症候性血小板減少性紫斑

symptomatic thrombocytopenic purpura

薬剤,白血病,悪性腫瘍の骨髄転移,SLE,ウイルス感染症,

血管腫(Kasabach‑Merritt症候群.21 章参照)などによって,

血小板の産生低下ないし消費亢進が生じ,血小板が減少して紫

斑をきたす( 表11.5 ).

3)遺伝性血小板減少性紫斑

Wiskott‑Aldrich症候群(7 章参照)やFanconi貧血(奇形を伴

う先天性再生不良性貧血)などがこの症例に分類される.

中年女性に好発する.紫斑のほかに点状出血ないし出血性丘

疹.斑状出血,紅斑,皮下結節を伴うことがあり,ときに壊死

性である.下腿に好発し,大腿,殿部,下腹部にも拡大するが

体幹や顔面には少ない.指では

Raynaud現象を呈する.腎症状

(蛋白尿,血尿,ネフローゼ症候群,高血圧,急性あるいは慢

性腎不全),関節痛,肝障害,多発神経炎などを認める.

クリオグロブリンが血中増加することによる.感染症(とく

にウイルス性肝 炎),多発性骨髄腫,マクログロブリン血症,

膠原病(SLEやRAなど),悪性腫瘍などを伴うことがある.血

液粘稠度が亢進して血流が低下,血管壁に蛋白が沈着して白血

球破砕性血管炎を引き起こすため紫斑が生じる.まれに基礎疾

患なく原因不明に出現する.

皮膚では病変部にクリオグロブリン塞栓によってできた白血

球破砕性血管炎を認める(ただしⅠ型クリオグロブリンが関与

した場合は血管炎を伴わないことが 多い).腎における膜性増

殖性糸球体腎炎が特徴的である.

クリオグロブリンの検出は採血から血清分離までを 37℃で

行うことが重要である.リウマトイド因子陽性,低補体血症,

検査所見

病理所見

病因

症状

紫斑/2.クリオグロブリン血症性紫斑  

153

11

2.クリオグロブリン血症性紫斑

cryoglobulinemic purpura

表11.5 症候性血小板減少性紫斑の原因

疾患

治療に伴う

疾患

治療に伴う

再生不良性貧血

発作性夜間血色素尿症

白血病,悪性リンパ腫,癌浸潤

遺伝性血小板減少症

ウイルス感染症

薬剤,放射線照射

血小板の産生低下

膠原病関連

播種性血管内凝固症候群(DIC)

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

溶血性尿毒症症候群(HUS)

ウイルス感染症

薬剤,輸血

血小板の消費・破壊亢進

MEMO

クリオグロブリン

cryoglobulin

免疫グロブリン(Ig)およびその

類似物質

(Bence‑Jones蛋白など)がその本態.37

℃以下

の低温で沈降し,それを

37℃に戻すと溶解する

易熱性(熱により変化および崩壊しやすい性質)

の蛋白質である.下の 3種に大別される.

Ⅰ型:単クローン性

Igによる.多発性骨髄腫や

慢性リンパ球性白血病など.

Ⅱ型:単クローン性

Ig+多クローン性Ig.膠原

病や各種感染症を基礎として生じる.

Ⅲ型:多クローン性

Ig+補体などが関与.膠原

病や各種感染症を基礎として生じる.





HBs抗原陽性,C型肝炎ウイルス抗体を認めることもある.血

清蛋白電気泳動像でM蛋白が認められることがある.

ステロイド全身投与および血漿交換療法によるクリオグロブ

リンの産生抑制,除去を行う.加えて基礎疾患の存在する場合

は,その治療を行う.

同義語:慢性色素性紫斑( purpura pigmentosa chronica )

中年男性の下肢に好発する.点状出血を主体とし,その後に

色素沈着をきたす.皮疹は自覚症状に乏しく,他の全身症状を

伴うこともない( 図11.17 ).主に皮疹の分布形式から,

Schamberg(シャンバーグ)病,Majocchi(マヨッキー)血管拡

張性環状紫斑,Gougerot‑Blum(グージュロー・ブルム)病の 3

型に分類されるがいずれも本態は同じである( 表 11.6 ).

病因は不明であるが,静脈性循環障害,病巣感染あるいは薬

剤性の要因が考えられる.

真皮上層の血管周囲に,リンパ球浸潤,血管拡張および出血

を認める.慢性の出血性炎症であり,古い病巣ではヘモジデリ

ンの沈着をみる( 図11.18 ).

病理所見

病因

症状・分類

治療

154

11章 血管炎・紫斑・その他の脈管疾患

11

3.特発性色素性紫斑

idiopathic pigmentary purpura

表11.6 特発性色素性紫斑の鑑別

性別

年齢

発症

好発部位

症状

静脈うっ血

色素沈着



男性に多い

20~50 歳代

徐々

下肢

点状出血が不規則

に融合

あり

多い

なし,あるいは軽度

Schamberg病

(Schamberg disease)

血管拡張性環状紫斑

(Majocchi's purpura)

男性に若干多い

30~40 歳代

急性

下肢,上肢,体幹

出血性の褐色丘疹,苔癬

状丘疹の集簇融合

なし

あり

あり

紫斑性色素性苔癬状皮膚炎

(Gougerot‑Blum disease)

女性にやや多い

30~40 歳代

徐々

下肢

点状出血が拡大,

環状病変を形成

ときどき

あり

なし

図11.17 特発性色素性紫斑( idiopathic pigmentary

purpura )





下肢の安静および挙上,ステロイド外用を行う.そのほかに

は,血管強化薬(ビタミン

Cなど),止血薬,抗プラスミンな

どを投与する.

加齢変化により血管支持組織が脆弱になり,自覚しない程度

の刺激によっても容易に紫斑を形成する.手背や前腕伸側に好

発し,境界明瞭な皮下出血斑を認める.

女性の下肢に好発し,境界のやや不明瞭な点状出血が多発す

る.やや大型の紫斑が数個みられることもある.浸潤を触れず,

自覚症状はない.血液検査上異常所見を認めない.一般的に安

静にて自然消退するが,血小板減少

性紫斑や初期のHenoch‑

Schönlein紫斑との鑑別が必要になる.

ステロイドの長期的な内服や外用により血管支持組織が脆弱

になり,機械的な刺激によって容易に毛細血管の破綻をきたし

て紫斑を形成する( 図11.19 ).老年に多い.機械的な刺激の回

避やステロイド使用の適正化を図る.

四肢の動脈に粥状硬化を生じた結果,末梢の虚血を呈し皮膚

蒼白や疼痛,潰瘍などをきたす疾患である.基礎疾患として糖

尿病や高血圧を有することが多い.

虚血や血行不良による症状が出現し ,Fontaine分類が有名で

ある.1度:四肢末端の冷感や軽度のしびれ,2 度:間欠性跛

行(一定距離以上の歩行が不能),3 度:安静時疼痛,4 度:末

症状

概念

治療

その他の脈管疾患/1.閉塞性動脈硬化症  

155

図11.18 慢性色素性紫斑の病理像

真皮上層の血管周囲のリンパ球浸潤 .ヘモジデリン沈着.

11

4.老人性紫斑 senile purpura

5.単純性紫斑 purpura simplex

6.ステロイド紫斑 steroid purpura

その他の脈管疾患 other vascular disease

1.閉塞性動脈硬化症

arteriosclerosis obliterans;ASO

図11.19 ステロイド紫斑( steroid purpura )

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