21世紀呼吸器疾患に罹患する人も亡くなる方も増加すると推定されて ...

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なお、個人的にご覧になうのは結構ですが学習会等でお使いになりたい場合は広瀬俊雄迄メールにて御連絡下さい)




§はじめに

21世紀呼吸器疾患に罹患する人も亡くなる方も増加すると推定されています。呼吸器疾患の診断(ガイドライン)も呼吸管理等も20世紀後半大変進歩し今世紀一層更なる進歩することは明らかです。その中で忘れてならないのは疾病・健康障害に影響する労働・生活内容と環境因子です。私は1977年坂総合病院に呼吸器科長として帰任した際「産業医学科」を開設し科長を兼任し、以来この視点を一貫して重視した医療活動を重視してきました。ここにいくつかの事例を取り組みが始まった起点毎に紹介します。




(1)診療の場面から

①大豆粉塵による有機塵肺

  咳で受診したD氏は胸部写真で全肺野網状影。塵肺に典型的な粒状影ではないが塵肺を疑い職場を訪れました。職場は大豆油を抽出した後の「豆かす」を備蓄している倉庫です。もうもうとした粉塵を吸いながらクレーン車を担当し手ぬぐいで口を覆うだけで何年も働いていました(図表1)。「豆かす」は再出荷後動物用の固形飼料になります。D氏を東北大学第一内科で精密肺機能検査施行したところ典型的な抹消気道障害を示していました(図表2)。D氏は2年後肺癌で死亡しました。剖検後の肺組織では大量の粉塵(アントラコーシス)と間質の繊維化が見られています(図表3)。先に紹介した胸部レントゲン写真上の網状影に符合しています。肺胞内には「大豆かす」も見られていました(図表4)。藤田保健衛生大学元学長・元日本産業衛生学会理事長)島正吾先生に相談し「精密肺機能成績、剖検所見のある貴重な有機塵肺」とされた例です。その後数人の同僚の塵肺健診と職場改善も取り組まれました。




②内職でのチップ製造時のホルマリン喘息―作業場改善によって内服治療も不必要になった例―

私が坂総合病院時代診ていた気管支喘息例で、ステロイド点滴・内服が恒常化していた男子です。職業は農夫でビニールハウスを主とした野菜を作っていた。悪化時期に何か変わったことが無かったかの問診には「家電の部品としてのチップ製造を内職で始めた後」と答えています。実際に職場(自宅の納屋)見させて貰いました(図5)。3坪程の所に工作機械は置かれ粉塵はほぼ無かったのですが刺激臭が鼻に突きました。検知管ではホルマリンが検知され、ガス採取での測定では1.5ppm程の濃度でした。ホルマリンは1型アレルギー様の喘息発作を起こすことが文献的に知れたので、「作業負荷試験」を試みました。納屋にフローボリュームを持ち込み作業前・作業中・作業後に測定しました。明らかに作業による悪化が見出されました(図表6)。そこで機械を窓際角に移動し周りをブリキで覆い手頃なファンを設置したところ(図表7)刺激臭も消え、測定値も「検出せず」となりました。その後この方はまず大きな発作が消え、しばらくして内服剤全てが不要になるまで改善しました。職場の治療が身体も治した事例です。

③携帯型ポリウレタン注入機によるMDI呼吸器障害

この例は「風邪」と考えられたのが吸入物質による呼吸器障害であった例です。症例は35代の男子。咳、呼吸困難で内科を受診し風邪薬を処方され帰宅したが呼吸苦が改善せず翌日も受診し私が(一般外来で)診ました。胸部にラ音が聴取しチアノーゼもあり血液ガス分析を施行した。酸素分圧61.5torr、炭酸ガス分圧43.9torrであり即入院となっています。翌日酸素3L下で順に85.6、37.6、第5病日酸素無し下88.5、38.1で退院しました。約一ヵ月後64.6、40.1で再入院となりました(図表8)。この時点で疑っていた作業中のガス吸入を確かめるために「作業負荷試験」が行われました。

入院したまま午前に肺機能を行い、その後通常の作業をしてもらい帰院後再度施行しました。前後の肺活量曲線、努力性呼気曲線、フローボリューム曲線での比較では明らかな悪化が認められました。(図表9)それぞれを悪化指数として表しますと、酸素分圧が36%減、肺活量が23%減、1秒量が47%減、ピークフローが59%減でした。炭酸ガス分圧は7%の減でした(図表10)。作業によって明らかに悪化していますので「作業が原因」といえます。回復は翌日の昼頃でした。この方は一人で営業所責任者と実際の扱い説明技術者を兼ねていました。販売製品は花瓶とかキーボードのような壊れやすいものを輸送する際に箱と運ぶものの間にエバーソフトを充填するものです(図表11)。この機具は「携帯型ウレタン注入機」であり、重合過程でTDIの亞形である「MDI」を発生します。即ちこの事例は「MDI呼吸器障害」です。尚、本事例は福井大学医学部日下教授によって国際学会にて報告されています。




(2)健診を通じての事例

①刃物工場での金属粉塵による末梢気道障害

私が初めて産業医としては働いた工場での経験です。工場巡視ではかなりの粉塵であり、作業環境測定機関の値も溶接38.3㎎/㎥、切削15㎎/㎥研磨4.5㎎/㎥でありその影響が心配でした。文献的には鋼鉄粉塵は有害でないとする見解が多く、例えば末梢気道障害はどうだろうかと「肺機能健診」を企画しました。坂総合病院、東北大学第1内科、チェスト社から計4台のフローボリュームを持ち込み粉塵職場の約100人で実施しました。20代、30代に一秒率正常&フローボリューム(V50、V25)異常が多く見出されました(図表12)。更に呼吸器症状が無く非喫煙者で半年間は風邪に罹患していない4人を東北大学第1内科で精密肺機能を施行したところ明らかな末梢気道障害が全員で見出されました。広島県の針製造工場位しか知られていなかった鋼鉄粉塵による呼吸器障害が明らかにされた事例です。




②パラコート健診

坂総合病院に主婦のパラコートによる自殺者が受診しました。服毒は明らかであるが症状、検査異常は全く無かったのですが文献で注目していましたので直ぐ入院させました。尿が十分出ていた時点で血液ガスでのPH酸性化が始まったので東北大学付属病院に透析を目的に移送しています。しかしどの科も異常が軽いことを理由に経過観察を主張しました。止む無く入院だけは了解して貰い経過をみて貰っていましたが、その日の夜半に時間尿が減り始め、翌日の昼には亡尿となってようやく透析に踏み切りましたが数日後に死亡しました。剖検をしましたが東北大学では初めてのことで病理医も途中海外文献を見ながらの実施でした。この事例を坂病院でCPCとして報告しましたが、参加していた古川民主病院の彦坂直道院長(当時)が「酸素療法がかえって低酸素を惹起する病気」という説明を頭に残してくれていました。後にその病院に我が国始めての初めての自殺に拠らないパラコート中毒症例(農婦)を疑う患者が入院され、私が相談を受け診断出来た例に遭遇しました。農民が農作業でパラコートによって死亡することがあることを日本農村医学会に報告する一方農協と協力して大規模な実態調査(肺機能・胸部レントゲン含む)を行っています。その内容も学会報告、論文投稿しています。

今回紹介するのは、ある公営農園での「パラコート健診」の結果です。パラコートを扱う19人の内高率に肺機能異常が見出されています。肺活量約30%、一秒率41%、V50とV25が43%、酸素分圧とAaDO2が47%に昇っています(図表13)。更に影響を明らかにする為に、パラコート接触の程度で比較してみました。「散布中や散布後の異常」「呼吸器症状」共に「原液付着又は散布液吸入「希釈液・散布液付着」「不自然接触無し」の順に高率でした(図表14)。

更に、パラコート使用量を年間総量で聞きその量が9本以上(10人)と6本以下(9人)に分けて肺機能を比較したところ、%肺活量(減少)、一秒率(減少)、酸素分圧(減少)、AaDO2(増大)で有意な差が出ました。V50、V25では数値では明らかに差が出たが統計学的には有意ではありませんでした(図表15)。肺機能成績で典型的な3人を東北大学第1内科で精査したところやはり肺活量の増加、一秒率の低下、酸素分圧の低下が共通し、それぞれ2例で拡散障害、肺コンプライアンスの高値が示された。これがパラコート障害の肺機能上の特徴と思われます(図表16)。以上の事例、疫学調査、健診成績をもって農村医学会にパラコートの有害性を訴え「学会声明」が出されそれを機に「パラコートの製造・販売」が中止されることになりました。(従来のパラコートは25%溶液で、中止後はダイコートとの合剤5%で再販売されている。欧米の固形程では無いが事故・中毒はかなり減っている)




②健診職種別有訴率で職場改善が図られた車体工場

健診を実施したら生かすのが大切なのは言うまでもありません。いわゆる「生活習慣病」も「事後措置」が必須ですが、職場にある要因対策も大切です。その事例を紹介します。

職場毎に症状の有訴率を比較しました。「咳・痰・喘鳴」「アレルギー症状」「頭痛」で見ますと現業で高率なのが分かります。事務の喫煙者が多いのを考慮してもこの高率な症状の原因は職場にあるのは十分推定出来ます(図表17)。健診前には断られていた職場見学が実現しましたが、作業者は防具をせずにスプレーを扱う等悪い環境下での作業実態が判明し(図表18)、その後依頼された有機溶剤健診での尿中代謝産物でも異常に高かい方が発見されました。早速作業場の換気改善、保護具、特殊健診等の改善策が取り組まれました。




(3)調査事例

宮城県北に1200年続いて閉山した細倉鉱山元鉱夫の離職後の進行の調査結果を紹介します。

162名の管理2以上の要療養者で1987年の閉山後5年目での進行率は、PR1で約8%、PR2、PR3+4では33~36%であった。進行所見に気腫化を含めていません(図表19)。進行は予想されるより顕著であったが、特に典型的な事例を紹介します。離職時には全肺野に粒状影が見られていましたが1年後より塊状影が現れ次第に大きくなり5年後には相当の大きさに成長していっている。この成長の度合いは正に肺癌並みです(図表20)。離職後の進行を別の切り口で検討する目的で「拡散機能」と「AaDO2」を測定しました。進行中の事例は全て「AaDO2は正常で拡散機能が異常」という象限に集中していました。このことからは進行病変は「肺胞領域」にあることが推定されます(図表21)。我々は東北大核医学施設(当時)の藤原竹彦医師と共同でPET(ポジトロンCT)を用いて肺内の状態を解析しました。先に紹介した急速な進行を示した例では両側の塊状影(大陰影)で肺癌並みの強い活性化像が得られました(図表22)。離職後10年を経ても肺内で繰り広げられている「進行現象」が世界で初めて画像として確認された訳です(第9回国際職業性呼吸器疾患学術会議にて発表)。




§終わりに

この場で紹介した事例は私の重視する課題のひとつ「環境と呼吸器疾患」の例で、日常の医療活動の中で「労働・生活内容を把握」し、「職場をも治療する」活動例でもあります。このことは例えば読売新聞連載の「医療ルネッサンス*優しさのカルテ:職場の健康つくり」でも「患者の労働環境着目*経営者に改善指導も」の見出しで大きく紹介されました(図表23)。労働環境から労働者・患者を見る(診る)ことは益々重要なことでないかと考えています。参考にして頂ければ幸いです。

ウエッブサイト:-------http://www.pdffind.com/pdf/bsm30/

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时间(じかん)を発表した:2010-01-15   ファイルサイズ:0   フォーマット:doc ファイル
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