リスク低減の方策

-->

「災害・事故防止のための」

リスクマネジメント




(社)日本労働安全衛生コンサルタント会会員 埼玉支部

技術士・労働安全コンサルタント   矢島 藤一




目   次

 はしがき

 リスクマネジメント



人と環境との出会い



温度環境

湿度環境



要因抽出の必要性



要因抽出

正しい点検試験周期の検討



(3)点検周期等の決定

3 リスクマネジメントの設定

4 人とリスクマネジメント

5 人の行動理論

6  人の評価レベルの決定

(1) 人の意識レベル



教育によるレベル

覚醒効果によるレベル

安全衛生意識によるレベル

作業環境によるレベル

バックアップによるレベル

補正の例示



電気設備の例



(2)危険性物質の例

(3)機械設備の例

(4)適用の実際

8 設備・機械の信頼性



設備・機器・部品の信頼性

故障までのプロセス

リスクへの適用

信頼性管理



9 設備・機器への対応



予防保全周期の決定

事後保全に係わるもの

リスクレベルの取り方



10 災害・事故の防止方法



適用の実際

実際の評価

システムの責任分野

責任者等の役割・分担

これからの課題取り組み



あとがき


はしがき

 リスク・マネジメントで災害・事故に係わる範囲を特定して検討することは意義あるものと考えます。リスクの発生要因は多角的にあらゆる分野におよび、災害・事故に限定して話を進める必要があり、とくに労働安全衛生面に限っても、その範囲は広範の内容に及び一人の思考範囲を超越するものです。

 一口に労働安全衛生といっても、学術分野は工学から医学さらに境界領域にわたる、あらゆる課題を検討しなければなりません。現在このような意味合いから専門分野として次のように分類しています。

(1)機械的エネルギーに係わる工学分野



機械部門

電気部門

化学部門

建築部門

土木部門



(2)健康管理にかかわる分野



衛生工学

保健衛生



そして、これらを結ぶ関連分野として次のような学問体系のことも香料する必要があります。



安全心理学の要因

人間工学的の要因

信頼性工学の要因

その他の関連工学の要因



これらの内容は、「リスク」の課題処理の段階で避けて通ることができません。また、相互の関連事項も検討しないと課題処理が進みません。したがって、課題を検討していく段階で、それぞれの専門家の専門領域に係わる知識・知見等の素養がないと総合的な検討が進みません。

 ここに示される内容は、筆者が経験したことを基にして、現在の災害防止の手段として用いられている採点法による技法により、リスクの程度を推計することにより、マネジメントの基本にしていこうとするものです。テーマの取り方、リスクレベルの点数等十分な検討がなされないため、記述してありますので、いささか納得のいかない面があるかもしれません。

 いずれにしても、はじめての構想ですから、中々良い着想にいたらない面が多々あります。また、この構想を生かしていくためには、一人の努力ではどうにもなりません。発想の着眼が人の「意識レベル」を基本にしているからです。これは、本人の「自己申告」が基本ですから、「睡眠が足りない」「なんとなく不調」「精神が不安定」といった不調原因があるにも係わらず「正常の精神状態」をっていたのでは、良い管理方法がえられません。

 最終的には、いくつかの基本データを「コンピュータに有力」し、その結果に基づいて人の作業に対する適応性を見出す方向を考えたいと考えます。大方のご批判、ご指導を経て何らかの結論にもっていきたいものです。


(注)リスクマネジメント

 リスクとは、危険または危険性などと訳されていますが、その概念には二つの要素を含んでいます。

 ① 事象(event)が顕在化すると、望ましくない影響が出ます。

 ② 事象の顕在化が不確定です。

 このようなリスクは次のように表されます。

リスク=(発生の確率)×(被害の量/額)

 この概念は、プロジェクト管理、設備や品質の経済的管理、労働災害・自然災害のリスク管理の全般に言えることです。ある意味では、望ましくない事象を発生させる確率ないしは損失ともいえます。

 ここでは、このリスクを生命の安全や健康に限って検討していくことにします。このリスクを出来るだけ抑制するためには、リスクを出来るだけ最小化することが望まれます。

このための手段・方法を科学的手法を用いて対策を立てるというのが、リスクマネジメントです。

 ① まずリスク対応方針を定め、リスクの性格を特定します。

 ② リスク発生の頻度とその大きさ(被害規模)を想定します。

 ③ リスクの領域分類(機械から電気、化学、土木、建築、環境、保健等)を行います。

 自己の管理対象からこのような内容を拾い出します。

 リスクの領域には、

 ① 発生確率も被害規模も大きいリスク領域を取り上げます。

 ② 次いで、発生確率は小さいが被害規模が大きいものとします。

 ③ 発生確率は大きいが被害規模の小さいものとします。

 ④ 許容できるものとします。

 在来からの「リスクアセスメント」の手法と異なったところはありません。リスク対策としては次のようなことが上げられます。

 ① リスクの移転

 ② リスク回避

 ③ リスク低減対策、リスク保有

 これらの内容から該当する必要項目を選択します。

 リスクマネジメントを進めうえに大きな課題があります。これらの全てを計画し、実行して、成果を期待するのは、当事者であるということです。労働安全・衛生においては、OSHMSの実施により、その体系化が進んでいます。その内容は、PDCAによるサイクルの更改です。この中の骨子となっている「リスクアセスメント」が中核となるものです。

 リスクアセスメントは、「受動的」な後進的施策によるものとされています。リスクマネジメントは「能動的」な発想から出発しています。潜在的な危険源をどのようにして選択されるかということが重要となります。

 潜在的な危険源して取り上げられても、在来から手の打ちようのなかったものに「人の意識」があります。人の意識というものは、偏在的なもので、人それぞれ100%異なるといわれます。安全・衛生を進めるためには、通常、トップから末端までの労働者が組織の一環として連携する必要があります。この間には、各部署別に担当責任が課せられ、実行は先端労働者が行うものとされています。

 災害が発生するということは、組織にひびが入ったことを意味します。このひびが何に起因しているかということが大きなテーマとなります。したがって、組織責任ということと科学的分析をどのように結びつけていくかということが大事です。


1.人と環境との出会い

 人の行動は不可解なものとされています。設備・機械は使用過程によって劣化の進行が異なります。ここに関係する様々な要因は謎に包まれています。何れにしても人の介在が複雑なものとします。私達は、このようなものを災害・事故の発生から避ける防止手段を講じているわけです。しかしながら、万全な方法が中々取れません。

 右図に示すように、危険源が無ければ




ハザート




危険要因

危険源




リスク




危険源

人の行動があっても、災害・事故は発生

しません、

 何等かの危険源があった時に人の介在

があると物理現象が発生することにより









行動

災害・事故につながることが予想される

ようになります。

 人の行動が無くても、施設・機械の劣

化・損壊等により、事故が発生すること

があります。その割合は20%と言われま

す。人の行動か係った時の災害・事故は

80%とも言われます。

 多くの施設・設備では、人が介在する       図  災害・事故の発生

計画的な「点検・試験等」の計画的な予

防活動を有効に取り入れることによって、災害・事故の発生を大幅に減少することができるといわれます。その過程で人の介入による災害・事故も無視できません。人災と言われるものです。

(1) 温度環境

 温度には、周囲温度と設備等の負担となる温度上昇があります。これらの要因は設備・機器等の寿命を縮めたりします。JIS等においても使用時の温度範囲を示しています。この範囲を逸脱すれば機器等の寿命が短縮されたり、機器等の災害・事故の連鎖反応が始まります。

 ⅰ 負荷

設備・機器等に対する使用年数と負荷状況との事故発生率等を勘案した評価点をつくる必要があります。困難を伴ないますが、データの蓄積によって改善資料を整えていきます。

予防の周期決定に一役買うことになります。

  負荷は荷重積載量、電気的な負荷耐量、負荷に対する磨耗度等々

 ⅱ 周囲温度

  周囲温度がJIS規格を上回るようになると材料の枯化、電気的部品の劣化等が進行します。使用箇所によって、どのような過程を辿るかを取り上げる必要があります。

  いわゆる安定使用の状態により、評価点を見付け出します。

(2) 湿度環境

  相対湿度の変化は、それぞれの設備に対して機械的、電気的、化学的な変化を出します。それぞれの評価点を考えます。

 ⅰ 機械設備

   材料に対する伸び、縮み等による劣化、使用材料の腐食等いろいろな偏倚がでていまます。

 ⅱ 電気設備

  電気設備では、相対湿度が90%以上になると絶縁劣化等いろいろな災いの基となります。

 ⅲ 化学設備

  材料の化学的変位の促進、劣化の促進、腐食の進行等が表れます。

 また、故障・事故・災害の過程では、設備の劣化過程を調査するだけでは、十分ではありません。必ずそのプロセスの中に、人の要素が絡んできます。したがって、設備・機器を保守する人との兼ね合いを考えてみることにします。いま、そのプロセスの一端を示すと図1,2,3とおりです。


設備・機器の故障要因






 




潜在するリスクの内容




予防保全対策が不十分、保全従事者の教育不足、ヒューマンエラー




故障・事故・災害の事象


図1  設備・機器の故障要因が事故・災害に至るプロセス


リスク




発生する可能性




危険事象・事故の重大さ




=       ×


極めて重大

1.機器の停止・災害の発生

2.サービス機器の前面停止




高い

このまま使用すれば、近日中に確実に発生する。




重大

部分的に機器の停止がある



一部の機器が停止

偏倚が認められる






わずかに危険

機器の停止が影響少ない



関連機器の停止

偏倚散見






低い




中程度




図2  リスクの考え方


       自主管理




環境・保全




保安・防災




安全・衛生




設備・保安




図3  レスポンシブル・ケア

2.要因抽出の必要性

(1) 要因抽出

設備・機器の欠陥又は劣化により、どのような過程をへて故障に発展するかということは、使用環境、周囲環境等により決まります。その過程は千差万別な過程を辿ることは知られています。この過程の内容を検討することによって、予防保全の体系が位置づけられるわけです。

現実には、その体系付けが科学的に立証されるようなものは、現存しないというのが実態です。在来からのデータ、経験則等を基にして、点検内容、周期、試験・測定方法を案出して実施いるというのが、現在の予防保全の体系です。

その基本的な判定方法を図に示します。

設備・機器の危険要因(ハザード)の特定


危険要因事象の決定




停止範囲の特定




停止の影響




停止による影響調査




リスクの判定




リスクマネジメント




リスクコミュニケーション


図4  影響がはっきりしている場合のリスクの判定












極めて重大

重大

僅かに

発生の可能性が多い

許容できないリスク

実質的なリスク

中程度のリスク

発生の可能性が少ない

実質的なリスク

中等度のリスク

許容できるリスク

極めて稀に起こる

中等度のリスク

許容できるリスク

ごく軽微のリスク








表1  定性的なリスクの判定

 要因抽出に当たって、設備・機器を構成する機器の劣化要因別と機器との関係を検討する必要があります。

 設備・機器が故障し事故の発生する確率と問題を起こる確率は、前述のとおり「設備・機器の負荷状態、周囲環境(温度、湿度)及び機器の使命度(停止することの影響等)」を考慮して決めなければなりません。

 その大綱を分類したのが次の表です。

 これらの状態に応じた機器個々の物理的性能を調査する必要があります。大別すると「自然劣化特性、機器の負担(負荷率)、周囲環境の影響」を設備・機器を構成するパーツ毎に作成することとします。構成するに当たっては、製造者のデータ、保全上のデータ、経験則から得られた資料等を基に作成することになります。




(2) 正しい点検試験周期の検討

 故障・事故の要因と考えられる設備・機器の選定を行い、在来の方法と異なる点検・試験方法、点検・試験周期について検討を始めます。この際、在来の周期等の全面見直しを行ない、真に必要な点検・試験の方法を案出します。

 在来の見直しとは、安全重視のため、必要とみられない項目や点検・試験の周期に対して再検討を行うものです。因みに、基準として措置するため、周期の決められている「各種の規程」等制定されているものの内容をつぶさに検討して、保安上必要なものの検討を行います。「各種規程」は広く一般的指標を与えるものと解釈して、真に必要なものは、自主管理によって樹立すべきものと考えます。

 このような考え方に基づけば、いささかも法の精神を乱すものではありません。ということは、製造者の取扱説明書等に余りにも多くのことが羅列され、現実的に実行するには、不具合の面がみられるからです。

 規程等は最低の基準を定めるとはいうものの、実行することが難しいことや、無駄とみられるものがあるからです。これを内容検討することによって、法の精神をより有効に働かすために、いろいろな設備の実態に照らして次の表のようなまとめ方を検討するものです。

 一般的には、設備・機器は、この表に上げられるように三つの要因によって故障・事故の要因が出てまいります。設備がこのような条件に曝されなければ、長い期間の使用に耐えるものです。それにしたがって、保全周期としての点検・試験内容を決定すべきものと思料されます。

 表2で示されるように、設備・機器の故障・事故の起因となる要因は次の3点です。

 ① 自然劣化

  自然劣化といわれるものは、経過年数によって材質の枯化(エージング)によって、電気特性の偏倚、変質、損傷等が表れ、使用目的にそわない結果をもたらすことになります。しかしながら、その傾向をつかむということは、②と③の諸要件が重なり把握することが困難です。

 ② 周囲温湿度

  設備・機器にはJIS規格によって使用温度範囲が示されています。その使用温度を逸脱すれば各種の特性が偏倚したり、機器が事故を発生する確率が増加してきます。また、湿度が高くなれば、前述のとおり機能が下がり事故の発生確率が高くなります。

  このようなことから、設備・機器を安全に運転するためには細心な注意が必要となります。

 ③ 負荷状態

  設備・機器には、各種の定格容量が定められ、その定められた容量以内で使用するのが原則です。定格には、連続定格と不連続定格(間歇負荷)があるから、常にこのことを念頭に正しい保全を行う必要があります。


故障・事故の要因




機器の自然劣化特性




周囲温湿度の影響




負荷が定格の50%

以上で危険性あり




使用年数が寿命領域に入り、機器の点検を重視して観察等を行う必要のあるもの




室温が-5℃~40℃、湿度85%以上の環境で使用する設備・機器であって、危険性の認められるもの




温度上昇が所定の範囲

に達し、危険性のある使用方法のあるもの

全パーツの洗い出しを行う




正しい点検・試験周期の設定




個々の機器に対して、正しい点検・試験方法の設定




周囲の温湿度範囲が逸脱した場合、正しい点検・試験方法の設定




温度上昇が危険領域にあるものの点検・試験周期の短縮を考慮


表2  故障・事故の要因となるものの点検・試験周期の見直し




(3) 点検周期等の決定

 このような要因から、各種機器に真に必要な点検・試験の周期を割り出し、点検指標とするものです。一例を上げれば次のようなものです。

 ① 油等の劣化  油には潤滑油、冷却用、絶縁油等があり、様々な条件により劣化が進行します。そのまま使用を継続すれば災害・事故の起因となります。これらの劣化過程は使用負荷条件、温度-湿度等の周囲環境等によって支配され、それぞれの設備・機器によって異なります。点検・試験周期も3年、5年、10年、15年等と異なり、正しい設定をしなければなりません。

 ② 磨耗劣化  設備・機器等に使用される廻転機器、接触部分等は使用時間により磨耗・損耗の度合いが異なります。前記同様に点検・試験周期を設定する必要があります。

 ③ 接点劣化  設備・機器等に使用される継電器等は使用頻度、環境(温度・湿度等)により汚損・劣化が進行します。その内容により点検・試験周期を設定する必要があります。

 ④ 整備作業  設備・機器は各種の環境によって、弛緩、ゆがみ、汚損等が発生して周期的に点検する必要があります。正しい点検周期もその機器の設置条件等を考慮して点検・試験周期を設定する必要があります。

  ⅰ 設備の負荷  

  ⅱ ホコリ等の集積

  ⅲ 高温・高湿環境

  Ⅳ 経過・使用年数等




3.リスクマネージメントの設定

このような「リスクマネージメント」を作り上げても、満足するものは中々えられません。ということは、実施する中味を吟味する必要があることを示します。だから「リスクアセスメント」が必要となります。リスクアセスメントの体系はいろいろ考えられますが、

一般的な例を上げますと図6のとおりです。




開 始


  事前準備




リスクの低減




終 了


 手順2


              手順3


              手順4


               手順5




許容可能なリスクは達成したか!




リスクの評価




リスクの見積り




危険源の特定




使用又は予見可能な誤使用の明確化


手順1


リスク分析


リスクアセスメント


手順6

     いいえ


              はい

   

文書化




図6  リスクアセスメントの手順




 この手順は、OSHMSに示された例を取り上げましたが、設備内容によって「項目別」に内容を取り上げて見直しするのが良いと考えられます。

 設備・機器の構成部品の多くは、半永久的な寿命を保証されるものが多く、危険性のあるものは、数が少ないのが一般的です。この少数のパーツをどのようにして見出し、危険性の経過を把握するかということが重要なテーマになります。

 リスクマネージメントの設定を行い、在来の総花的な保全体系から重点的な保全ポイントを定め、そのポイントを平素の点検指標として捉えるという思想体系を作り立てる必要があります。このような体系の中味は、少なくても1年に1回程度内容を見直す必要があります。例示として、通常行われている月例点検の体系、年次点検の内容等があります。これらの内容も項目別に評価点数を付け実施する方法がよいと考えます。




人とリスクマネジメント



リスクはいたるところに存在し、何時どのような場所で発生するかを予測することは不可能です。自然界(自然現象で地球規模で発生するもの、各種の気象現象等)、物性(物の自然界における偏移、劣化、破壊等)、人の行動(生産現場、日常行動等)などあらゆる個所で想定されます。

物は自然界の法則にしたがって、劣化が進行して破壊(破損)現象が伴い、寿命がつきるものです。その過程は短時日に発生するもの、半永久的な進行により発生するもの等、周囲の環境に支配されて様々な様相を示します。このような自然界の現象に、人の行動が関わり、カオス性に富んだことになると、多岐にわたる態様を示し,捉えようのないものになってしまいます。実態を示すのが容易ではありません。

在来このような、人との係わり合いから災害・事故が発生すると、リスクの諸因がある程度把握されても「ヒューマンエラー」ということで、リスクの顕在化原因を検討せず放置してきたきらいがあります。リスク原因を科学的に立証できなければ、同種災害が再発しても不思議ではありません。

物のリスクについては、「品質管理」の進展によって「製品品質」が良くなり、製品の寿命が大幅に伸び、性能も向上してきましたので、リスクの発生確率も大幅に減少してきました。しかしながら、物の故障を皆無にすることはできません。このような設備・機器の故障・事故が発生すれば、そこには必ず人の介在が出てくるわけで、その過程で災害の発生が生まれてきます。

また、設備・機器等は劣化過程を辿るので、特定の設備・機器では、劣化過程とか性能を測るため、点検・試験・整備等を行うのが一般的な傾向です。このとき、設備・機器等の劣化過程を科学的に推定して無駄作業を無くすことも忘れてはならない重要な課題です。こ

のための検証も必要です。そのときの人の係わり合いから発生する災害・事故の回避方法も大きな課題となります。

在来からの手法は、このような検証を行う手段として次のような方法がとられてきました。



経験則と事例の重視

災害・事故事例

製造者等の指摘事項

自然界の状態把握

他から情報収集、etc



 したがって、周期のとり方、作業内容の方法等、実態との即応性等に差がでてまいります。差が出るのはまだしも、評価方法に科学性が無いというのが実態ではないかと思料されます。内容にカオス性が多く、計数化が困難であるからです。

 災害・事故の発生と人と物との係わり合いはどうなっているかというと、一般的に次のように言われています。

人の行動 80%、物の起因 20%

 このように人の介在がなければ、災害・事故の発生確率は大幅に減少することになります。そこで、人の介在する行為に対して対応が考えられないかということが本題の主題ということになります。

 人が介在したときの取り組み方に積極的になれない理由として、人の行動が余りに不可解であり、多様性に富んでいるからではないかと考えます。また、人の本質的なものとして、「保守的な性格」があるためではないかと思います。自己の内面的な面は他人には見せない。知らせない。そして、自己保身に走るというものがあります。

自己保存の本能は、自己保身ということと同義語であると考えられます。自己の行動の誤りが発生したときに、誰だって本質は隠そうとします。そのことによって、自己の破滅を招くといったことになるからです。



人の行動理論



人の行動は常にリスクと裏腹の関係にありリスクを共有しています。災害・事故が発生しますと、必ずといっていいほど人の行動が批判の対象になります。あからさまに出来ないのは、内容に千差万別の多様性があり、その要因が幾つも複雑に絡み合っているからです。したがって、事後の対応がなおざりにされるというものです。人の意思行動はレヴンの法則に従えば次のように示されます。

B=f(P・E)

 ここに、Bは人の行動、Pは人の意識要素、Eは各種の環境要素です。この式を偏微分すれば次のようになります。

δB/δt=δB/δP・δP/δt ×δB/δE・δE/δt

K=K₁・δP/δt ×K₂・δE/δt

 Kを安全度指数、K₁を人間適正指数、K₂を環境係数とします。

 PとEの要因の概要を示したのが表3、表4です。










Pの要因

Eの要因



1.素質:性格、知識、知能、感情、感

覚、etc

2.経験:年齢、職歴、etc

3.意欲:希望、地位、待遇、金銭、etc

4.心身状態:疲労、疾病、欠陥要素、etc

5.人間関係:家庭、社会、職域、etc

1.自然環境:温度・湿度、気圧、振動、騒音、空気、色彩、照明、etc

2.設備:設備の不安全状態(不備、老朽、劣化等)、材料の欠陥、レイアウト(狭隘の配置)、保護具、工具、整理整頓、etc

3.手順:無し、欠陥、作業速度、教育不足、連絡協調、etc








表3  PとEの要因










K₁に関わる要因(人の要因)

K₂に関わる要因(環境の要因)



行動評価に係わる要素



素質、感情、年齢、疲労、疾病、睡眠



行動評価に係わる要素



人間関係が悪い



 教育評価に係わる要素



 知識、知能、経験、職歴

② 教育評価に係わる要素

 知識、知能、経験の不足



覚醒効果に係わる要素



 性格、素質、意欲

③ 覚醒効果に係わる要素

 心身状態の疾患



自意識評価に係わる要素



 家庭、意欲、待遇、金銭

④ 自意識評価に係わる要素

 意欲に欠けている



環境に係わる要素



 知識、感覚、職域

⑤ 環境に係わる要素

 不安全状態、保護具等の着用、自然環境



バックアップ体制に係わる要素



 経験、年齢、心身状態、人間関係等

⑥ バックアップ体制に係わる要素

 作業指揮者の心身状態、側面からの支援








表4  行動評価に係わるK₁とK₂の要因




 このように人の行動が伴うときには、計数的に評価点をつけるのが難しくなり、どのような補正措置が必要かということを個々に決めなければなりません。あからさまに評価すれば人を傷つけることにもつながります。いろいろと禍いの基になります。①行動評価は自己申告、②教育効果は客観的な上司の評価、③覚醒効果は上司の評価、④自意識評価は客観的な上司の評価、⑤環境評価は上司の評価、⑥バックアップ体制の評価は体制の評価等として決める必要があります。




3 評価レベルの検討

 評価レベルを決定する場合、行動要因の細かい内容に入っていく必要がありますが、余りに多くの要因を取り上げてもその効果に疑問が出てきます。 安全・衛生教育等で示されている効果的な方法に絞って考えることにしましょう。全ての項目の効果に「カオス性」があるからです。






人の意識レベル



 人の意識レベルは極めて多岐にわたり変動するもので、個人差は健康状態、社会環境、人間関係、生育過程、その他各種の環境等によって異なった態様を示します。

 各種疾病によるもののほか、生理的要因による睡眠時間、疲労、欠食や温熱、寒冷、高湿、運動後等による心循環系の調節異常、薬剤要因など多くの原因が存在します。

 人の意識行動は大まかに次のようなフェーズで示されています。表3は「橋本邦衛先生の発表」この表に示されますように,意識行動の信頼性は実に曖昧なものです。24時間を通じて多岐にわたり変化し、その時の精神状態、健康状態等に影響され、本人以外には察知することが不可能です。このように混沌としたものを取り扱う学問としては、カオス制御がありますが、ここに示されるような意識行動を取り扱うことは現時点では不可能とされています。

 通常の作業はフェーズⅡの段階で実施されていますが、高度な作業密度を求めるときは,フェーズⅢの時がよいとされています。この時間は短くフェーズⅡやⅠに低下してしまいます。










フェーズ

意識の状態  注意の作用

生理的な状態

信頼度・作業失敗率

脳波パターン

記  事



無意識ゼロ

睡眠中、脳発作等

0      過多

δ波

事故発生



意識ボケ  不注意を起こす

疲労、単調作業、眠気

0.9以下、10回に一回

θ波

不安定



普通  内の方へ

定常作業時、休息、他

2~5nine、 少ない

α波

普通



冴えた状態  前向き姿勢

積極的な活動

Sixnine以上、極小

β波

 普通



過緊張    一点に固執

感情興奮時、ヒステリー

0.9以下、10回に一回

テンカン波

不安定





(注)Ⅲは正常な状態で、一日に1~2時間しかありません。Nineは9の数(99.9999)  橋本邦衛先生発表資料




表5 フェーズによる意識レベル




 このような意識行動は、人の自己保存性が極めて大きいことが禍して本人以外から察知することはできません。自己保存性が強いのは当人の評価が低下するからです。したがって、意識の隠蔽が図られることになります。行動評価点はこのようなものを基として出発する必要があります。職場の指導層の人は平素の指導の中から掴み取る必要があります。また、間接的に察知する努力も必要となります。

 毎日脳波測定として状態把握することはできませんから、管理する者(管理職、職長、作業指揮者等)がその作業の人の当日の状況から察知し、配置と作業員の事故申告等を待つことになります。人の管理の難しさがあります。必要以上に介入すれば、人権問題に係わることになります。

 人の注意力とは、人の情報処理能力が入力感覚情報に比べて中間情報処理能力が極端に少ない「単一チャネル情報系」であるからです。ここに、人間は本質的に不注意傾向を持つデザインがなされています。このため中枢処理にいたる前で情報の前処理がなされます。この前処理特性が、言い換えれば注意の選択、方向、深さを決めることとなります。

(新・産業安全ハンドブックp373黒田勲)






人の行動評価点 (表6)












RL

評価点

人の意識状態

周囲環境・その他



信頼度

想定の意識状態

具体的内容

温度・湿度

その他

5

0

睡眠、居眠り状態

睡眠中、うつろ寝等





4

以下>90

感情興奮状態

興奮、ヒステリー



悪い環境

3

90<以上

寝起、就寝前等

開放から1時間程度

45°90%以上

悪い環境

2

以下>99.9

普通の状態

一般の行動

45°90%以上

普通の環境

1

99.9<以上

はっきり意識

1日に1~2時間

〃  以下







 赤字が危険点と考えられます。

表6 人の行動リスクレベル(RL)評価点






教育によるレベル



教育効果への期待への期待として、労働者が作業を行うときは,作業内容によって相応な技術・技能などの熟練度が要請されます。要するに、リスクを避けるためには、相応な安全教育を実施する必要があります。その程度は内容によって高低様々です。人の扱いのうえで最も大事な要素です。トップ、中間管理職(課長等)、職長等の指導者に課せられた課題です。それぞれの作業には、最低限度の教育効果を示す必要もあります。

 このような教育効果としては、その評価として「表5の評価」を把握しておく必要があります。この評価は単純に教育をしたからといってすぐ出てくるものではありません。教育効果の上がる者、中々上がらない者があります。作業を実施する場合は、その作業内容によっては、厳しく査定する必要もあります。「要は当人に作業内容を任せられるか」といったことになります。トップ・中間管理層は、これらの計画・実施の責任があります。

 通常、法的な免許取得、技能講習、特別教育および指定教育あるいは他の法令に伴う国家試験等が優先されますが、リスクを回避するためには、最低限の技術分野の素養は必要とされます。それぞれの分野における教育修了者が核となって指導する必要があります。

 労働安全衛生法に示される教育で、各分野における主な教育を示すと表7のとおりです。

 在来、災害・事故の防止手段しては、物を中心とした施策が講じられてきましたが、実際の諸問題は人に関係する課題が多く散見されています。ひとの問題を解決するためには、広範な難題を解決しなければなりません。だから、新しい「OSHMSにおける、有害性評価の評価点法においても危険性の評価を強調し、教育等人の介在にかかわる評価方法には入っていません。

 ここでは、総合的な「管理体制」から始まる「人の所在と責任の明確化」を示し、災害・事故の対策はそれぞれの分野で分担して施策を講じていこうとするものです。このような意味で暫定的に①から⑥までの要素の対応に評価点をつけ、欠陥評点の責任所在も明白に捉え、再発防止の成果向上に寄与していこうとするものです。教育成果に期待するところが非常に大きいことを付け加えておきます。再掲してみますと次のとおりです。



行動意識レベルの評価点

教育の評価点

覚醒効果の評価点

自意識向上策による評価点

環境(安全衛生用保護具等)による評価点

バックアップ体制(作業指揮、2人以上の応援)による評価点



 これらの評価点を知り、施策を運営していくためには、全般を教育して理解を求めていかなければなりません。








分 野

代表的な教育内容

主な内容

備  考

1 機械

プレス機械の取り扱い

木工機械の取り扱い

クレーン、車両の扱い

加工系の機械の取扱い

作業主任者教育、

作業主任者教育,

玉掛け操作、運転操作、材料破壊、他

接触、挟まれ・巻き込まれ、運転操作の誤り

2 電気

低圧及び高圧電気の活線および近接作業

低圧及び高圧特別教育、静電気・電磁ノイズ、他

電圧対応の危険性

付帯内容、保護具

3 化学

有害物質の取り扱い

爆発物の取り扱い

原材料、製品、反応、混合・溶解、乾燥、粉砕等

混合危険性

着火源等

4 建築

高所作業の転落

専門分野の総合管理

保護具の適正使用

総合管理

転落・墜落の危険性,連携方法等

5 土木

各種支保工、

土砂崩壊等

作業主任者教育

工事間の連携

工事方法

土砂崩壊の防止

6 衛生工学

有機溶剤等の扱い

粉じん取り扱い、化学物質取り扱い,他多数

危険物取り扱い、有害性・中毒等の扱い、化学反応等の内容

健康障害、爆発災害の防止、その他

7 保健衛生

有害性物質の対応、健康保持対策、食事療法

精神衛生、その他

ガン、高血圧、心臓病対応、THP対応、メンタルヘルス対応等

健康障害対策、メンタルヘルス対応

その他

8 一般

新入社員等の教育

境界領域の教育

高年齢者の教育

火災防止・消防対策

OSHMS施策の推進

不定期社員の教育

人間工学入門

高齢者の災害防止,健康

火災防止訓練

スタッフの教育

リスクマネージメント全般の教育








表7  主な教育内容の一覧




 このように、教育内容は多岐にわたり必要とされますが、専門分野は勿論のこと、他の専門分野にわたる境界領域の教育も必要です。人の行動が伴えば、追突、転落、落下等、接触、巻き込まれ、滑る、転ぶといった単純なことも考える必要があります。これらは、全て「リスク」の領域に含まれるものです。その教育も大事です。

 また、安全衛生教育は作業者ばかりではなく、経営首脳者、各段階の管理者にも必要な項目は理解と教育が求められます。




 ② 教育に対する評価点(表8)







RL評価点

教育レベルの状態

教育の内容

4

安全教育未実施

体制整わず実施されていない。

3

安全教育不完全

実施したが、作業内容を任せられない。

2

安全教育実施

作業内容を任せられる。

1

内容完全理解

よく理解している。







表8 教育レベル(RL)評価点






覚醒効果によるレベル



 覚醒効果は必要とされる内容と必要とされないものがあります。通常、その日の作業前を捉えて行います。その効果は「Cの効果」として示します。次のようなものがあります。

「表9の効果」として上げられます。

 ① TBM(ツールボックスミーティング)の実施

  作業を実施する前に、作業者に作業手順の説明、注意伝達事項、作業内容の要点、作業内容のやり方等を作業指揮者(または指導者)が口頭または文書で伝達します。作業指揮者は伝達したからといって一切を任せるというものではなく、重要なポイントに対しては、バックアップ機能も担っていることを認識する必要があります。バックアップの機能分担は(6)で説明します。

 ② 朝礼時伝達

  人は「忘れ」ということが、常に付きまとっています。職長等の責任者は「当日の伝達事項等」は習慣として行う必要があります。これは意識覚醒効果を上げるために行うもので、その効果を把握しながら実施しなければなりません。

 ③ 重要作業前の覚醒方法

  必要な時は、「注意・伝達事項」として覚醒効果を計らなければなりません。作業員の覚醒効果も確かめる必要もあります。


 ③ 覚醒効果の評価点(表7)







RL評価点

覚醒の状態

効果の内容

3

作業員任せで実施していない。

相手任せで作業している。

2

作業前に実施している。

毎日のことで、十分理解していない

1

TBMにより、周知徹底している。

理解している。

1

十分に理解している。

完全に理解している。





表9 毎日の覚醒方法による評価レベル(RL)評価点




(4) 安全衛生意識によるレベル

  安全衛生管理で従業員の意識を向上させることは大きなテーマです。最も大事の要素は自意識の向上策ではないかと思います。自意識の自然醸成は各種の教育成果を経て自然に醸成されるものです。いくら周囲で効果的と考えられる施策を図っても中々向上するものではありません。リスクの発生する要素を個人に認識してもらい、「あなたの安全意識」が対応を考慮しないとリスクが回避できないことを納得していただきます。

 自意識向上策は「作業目的・使命・効用等」を個人が認識して初めて効果が現れます。

このような施策をあらゆる機会を捉えて訴えます。安全教育として「安全衛生意識向上策」を計画して実施します。このような計画は、「忘れ」ということを考えますと,周期的に計画する必要があります。「表10の効果」として上げます。


④ 自意識向上策による評価点







RL評価点

自意識向上策

効果の内容

3

作業員任せで実施していない。

成り行き任せで効果がない。

2

たまに自意識向上を訴える。

ある程度ある。

1

絶えず自意識向上を訴える。

ある。

1

十分に理解している。

ある。





表10 自意識向上策による評価レベル(RL)評価点




(5) 作業環境によるレベル

 環境把握は対応が極めて広範囲にわたります。人の行動に影響を与えるいろいろな要素があります。これらの要素は陰に陽に人の行動を左右します。次のようなものです。「Fの効果」とします。

 ① 周囲環境

  周囲環境として人の行動に支障をあたえるのは、「温度、湿度、振動、騒音、空気環境等」各種のものがあります。これらの要素が一定限度を超えて存在すれば人の行動に影響を与えることは必然であります。たとえば、温度35℃以上、5℃未満、湿度95%以上、振動過多、騒音85ホーン以上、空気環境劣悪等です。

 ② 保護具、防護具、防具等

  安全の確保は、ⅰ遠隔制御,ⅱ隔離、ⅲ保護具等の順序により行われます。最終的に人の安全を確保する手段が保護具等であることを再認識する必要があります。次のような作業です。

  保護具の選択に当たっては次の順序に従い、選定する必要があります。



危険要因、有害因子は何か、その特性と程度(大きさ等)をしることから始まります。

防護性能



次に①に適合する保護具の選択に当たっては、まず、保護具の種類とその防護性能が十分あるかを確認します。防護性能を確保するためには、国家規格が制定され、検定の対象品目に指定されているかを確認します。それにしたがって、使用できる作業環境、条件、対象物質、使用可能な時間-期間を確認します。さらに、取扱説明書をよく読み、確実な使用方法を身につけます。



人体へのマッチング性



作業者に受け入れられ易いものを採用し、保守管理を厳重に行います。



使用に対する教育・訓練



保護具、防具、防護具等は単に性能を確認するだけでなく、なぜ使用しなければならないかを徹底的に教育する必要があります。



安全作業手順の励行



用意されても正しくしなければ「絵に書いた餅」になります。確実な使用が求められます。

 ⅰ 機械的な接触作業、重量物取り扱い、ⅱ危険性物質の取り扱い、ⅲ活線電気取り扱い、ⅳ健康上害を及ぼす各種危険取り扱い等

 ⅱ 産業用安全帽

   飛来物・落下物用、墜落時保護用、電気用等の種類があります。性能の選択を誤ってはいけません。

 ⅲ 安全帯

   種類、性能の選び方、使い方に留意します。

 ⅳ 絶縁用保護具

   絶縁用防護具、絶縁用防具があり種類、性能の選び方、使用範囲の限定、使い方に留意し、保守管理を厳重にします。

 ⅴ 防塵マスク、防毒マスク

   土石粉塵、金属粉塵、トンネル掘削などの現場で必要です。種類、性能の選定、使い方、維持管理を守ります。

 ⅵ 安全靴、静電気帯電防止衣類、防塵マスク、防毒マスク、呼吸用保護具、防音保護具、防振保護具、保護めがね、遮光保護具、化学防護衣類、機械安全用防護衣類、電離放射線保護、耐熱-耐寒保護、サポータ、労働衛生保護具等

   多種類の及びますが、種類、性能の選び方、使い方、管理方法に留意する必要があります。また、どの時点で廃棄するかも必要です。

  適用範囲は極めて多岐にわたり、即危害に関わるものから、直ちに害に結びつかないもの等があります。このため、疎かに取り扱うことが多く、管理が十分に行き届かないのが一般です。「表11の効果」として上げています。

  特に作業指揮者と実務者の取り組みが大事です。




⑤ 環境(安全用保護具等の対応)による評価点







RL評価点

保護具等の着装状態

効果の内容

4

保護具等なし。

危険点近接、接触による危険大。

3

保護具不全(欠陥品、不良品等)

不良品、劣化品使用。

2

不完全な使用方法による。

着装方法に問題あり。

1

大体良い。

指定期日にテストをしていない。

1

良好

効果あり。





表11 環境(安全用保護具等の対応)による評価レベル(RL)評価点




(6) バックアップによるレベル

(1)から(5)まで、全てバックアップ体制になりますが、ここでは、対象を二人以上の複合作業のときに配置される作業指揮者に当てはめて考えます。

 作業指揮者は実務作業者の行動上の欠陥補正のためのバックアップ機能としての役目を果たします。したがって、作業指揮者の意識が実務者の意識の欠陥に並列的に作用して信頼度向上する役目を果たします。「表6の効果」としてあげました。

多くの災害・事故の発生過程を調査してみますと、「作業指揮者」がその機能を十分に果していないものが數多く報告されています。作業指揮者の任命に課題があるようにも考えられます。

 ここに取り上げた「①から⑥」以外の項目があれば、取り上げ取捨選択してかまいません。内容は、事業場の実情によって選択すればよいわけです。

 信頼性は設備・機器等の構成物はパーツの直列性からできていますが、人の信頼性は各種のアプローチによって向上しますので、並列的要素によって構成されます。このような意味によって、人の行動性に欠陥が生まれる可能性のあるときは、作業指揮者または補正者が補って行動の信頼性を上げます。




⑥ バックアップ体制(作業指揮、2人以上の応援)による評価点









RL

評価点

人の意識状態

周囲環境・その他



信頼度

想定の意識状態

具体的内容

温度・湿度

その他

5

0

睡眠、居眠り状態

睡眠中、うつろ寝等





4

以下>90

感情興奮状態

興奮、ヒステリー



悪い環境

3

90<以上

寝起、就寝前等

開放から1時間程度

45°90%以上

悪い環境

2

以下>99.9

普通の状態

一般の行動

45°90%以上

普通の環境

1

99.9<以上

はっきり意識

1日に1~2時間

〃  以下







 赤字が危険点と考えられます。

表12 2人以上の行動リスクレベル(RL)評価点


 前述の①~⑥までのような内容についても評価点を付けて対応することができます。

 補正内容を①、②、③、④、⑤、⑥等とするならば、①×(②×③×④×⑤×⑥)に評価点を入れれば総合評価点がえられます。単独で評価することなく、必ず一つ以上の補正を考えます。

 評価点が多ければ多いほど「リスク」が高いこととなります。何点以上が危険点かを決めればよいわけです。レベルが決定されればバックアップの内容から、リスクアセスメントのRL評価点を上位に設定して、改善を行い総合評価点を危険レベルの下位へ下げればよいわけです。




(7)補正の例示

ここでは、施設・設備のリスクマネージメントについて例示を上げ説明します。

人が介在する設備は、通常、危険物質に人が「近接・接触」することにより「リスク」が発生するものとされています。①危険性物質(化学物質等)に接近したり、直接触れる作業、吸引の危険性がある作業等、②電気設備の活線近接作業と直接触れる作業(電圧の階級「低圧、高圧、特別高圧別」によりリスクの状態が異なります)その他があります。③機械設備等では、プレス、切断機等の危険性のあるものの操作に伴なう各種の作業があります。

ⅰ 電気設備の例

一例として電気設備に係る作業の一端を示して説明します。

 ①~⑥の組み合わせより、リスクの評価点を例示します。

RL評価点=①×(②×③×④×⑤×⑥)

 ここでは、概ね15点以上を不良とみて改善策を考えます。










作業内容

RL

評価点





評 価 点 の 項 目

作 業 内 容













1 定期検査

 整備作業

12



3

2

1

1

1

2

高圧活線に接触又は近接する作業

2 定期検査

 整備作業

48



3

2

2

2

1

2



3 耐圧試験

 作業

8



2

1

2

2

1





4 高圧内整備清掃作業

96



2

3

2

2

2

2



5 日常点検作業

5



3

2

1

1







6 柱上で試験作業

24



2

2

2

1

1

3



7 継電器試験作業

8



2

2

2

1



2



8 低圧絶縁測定作業

8



2

2

2

1



2

低圧活線に接触又は近接する作業

9 低圧工事作業

36



4

3

3

1
















表13  電気活線作業における評価点




 1例を示しましたが、計画の中で評価点、項目等実際に沿わないときは、任意に表を作成して実態と併せて評価点をつけて実施して下さい。

 この表に示されますように、人の行動に対しては一般的な脳波の状態ばかりでなく、安全教育の効果、作業前の覚醒効果、平素の自意識向上策、保護具等の使用、作業指揮の良否がリスクを発生させる要因になるかが判ります。

ⅱ 化学関係の危険性物質、危険作業の例

 危険性物質の対応にはいろいろありますが,化学関係にはいくつもの有害・危険性物質があります。その例として上げたのが「危険・有害物質」の事例です。ここでは、細かい事例を上げて説明することを避け(細かいことは、専門者が自ら検討していただきたい)大まかな課題に限定して事例を上げました。










作業内容

RL

評価点





評 価 点 の 項 目

作 業 内 容













1 危険性物質の保管

12



2

3



2

1



保管によるもので、設備が完全ならば問題少ない

2 危険性物

 質の移送

96



2

2

2

2

3

2

各種の移送作業を想定

3 設備の操作、点検

8



2

2

1

1

1

2

定期点検試験、一般の操作作業








表13  化学関係の危険作業における評価点




ⅲ 機械設備の危険作業の例

 







作業内容

RL

評価点





評 価 点 の 項 目

作 業 内 容













1 プレス加工作業

8



2

2

1

1

2



日常作業

2 シャーの

 切断作業

72



2

3

2

2

3



日常作業

3 木工機械

 の操作

12



2

3

2

1

1



日常作業








表13  機械関係の危険作業における評価点




各種の機械設備について事例を上げて検討しましょう。

(8)適用の実際

 作業内容には種々雑多なものがあります。(3)に取り上げたものは一般的な例を示したものです。したがって、次のような内容については、実態に合わせて適切な方法を用いる必要があります。

 リスクマネージメントは広義に解釈すれば、全ての分野に適用されますが、ここでは、限られた範囲の「電気設備」「化学設備」「機械設備」に関わる内容を検討してきました。適用に当たっての考え方について説明します。



評価点を示す内容①~⑥の指数  必要を認めないものはやめて(-斜線)、必要なものを追加することもあります。また、点数の取り方は、危険性の少ないものは、1,2,3とし、高いものは計算しないようにします。

点数  ここでは、5点法をとりましたが、必要に応じて点数を10あるいは20等とすること考えられます。実態に即して、点数を上げ下げすることが考えられます。余り多くの点数にしても良い結果が出てきません。



③ 危険レベル(RL)の設定  レベルの設定は何点を危険レベルにするかといったことは、その設備のおかれた重要性、管理レベル等管理のやり方により異なってきます。許容される水準ということになります。高い値が出るような時は、リスクアセスメントによる下げる方向で努力します。

④ 総合点数のつけ方  ここでは、掛け算によりましたが、足し算による方法もあります。たとえば、どの指数でも1であれば掛け算の答えは1です。

⑤ 基本ベース  人の行動が中心課題になりますから、①を原点に考えます。だから、②から⑥までをいくら改善しても①が5であったら改善効果は出てきません。




4 設備・機器の信頼性

 機械・設備はその構成要素を総称して信頼性工学において、「所定の条件下で、定められた期間中、要求される機能を果すことができる性質」と定義されています。この条件下というのは、期間中、要求される機能を果すことができる確率(probability)とされ、信頼性(reliability)としています。

 機能遂行能力の終結を故障「failure」といい、機能遂行能力が失われている状態をフォールト(fault)といっています。この過程でしばしば危険事象(harmful-event)の発生を防止するため,止める、動かす,冷却する、加熱する、閉じる,開く、といった安全措置をとったりします。または、終期寿命になれば設備・機械の故障・事故の発生をみることになります。

 このような事象が発生すれば、人の介在が必要になり、危険状態が発生することになります。信頼性工学の最も基本的な概念は確率です。この言葉は、物理・生物・工学・医学等及び学術・技術分野で広く使われている概念です。




(1) 設備・機器・部品の信頼性

 何時かは故障する運命をもっています。故障したものは、修理、部品の交換をし

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