京都市住宅審議会2001年答申に向けた中間まとめ(改定案)

-->




21世紀における安らぎあるくらしを支える

住宅政策のあり方について




( 答 申 )




~ いきいき市民居住の実現 ~


平成13年5月




京 都

市 住 宅 審 議 会





- 2001(平成13)年答申の構成 -


1.市民の居住を巡る状況

(1)居住の動向

(2)これまでの答申と住宅政策の変遷




2.21世紀初頭における居住の目標

(1)住宅政策の理念

(2)政策の基調となる考え方

(3)居住の目標

~ いきいき市民居住の実現 ~


(1)多世代が支えあう地域居住の支援

ア.多様な世代のニーズに対応した住宅の供給

イ.地域の福祉と居住の安定

ウ.住み続けられる住環境づくり




4.具体的な施策展開


(3)

市民、事業者、行政の信頼関係の構築と連携の仕組みづくり

ア. 市民の学習支援と相談機能の充実

イ. 多様な主体の連携と適正な市場誘導の仕組みづくり


(2)すまいの質を高める仕組みづくり

ア.すまいの品質の確保

イ.木造住宅の価値の再発見と有効活用

ウ.安全・安心のすまいづくり

エ.分譲マンションの適切な維持管理

オ.市営住宅ストックの活用


はじめに ・答申の役割と構成


5.地域で展開する7つの重点施策


3.21世紀初頭における住宅政策の課題

(1)いきいきとした暮らしを支える

(2)いきいきとしたすまいづくりを支える

(3)いきいきとした連携を支える


用語解説

参考資料






はじめに

 本答申は、2000(平成12)年6月5日に、市長より審議会に諮問され、委員一同が市民や専門家の協力も得て鋭意検討の結果をまとめたものである。

 千年にわたる都市居住の経歴を有する京都は、町衆と京町家・町並みで代表される、また、地域を基盤とする、すまい=居住の文化様式を完成してきたが、近年の開発エネルギーは増大する一方で、住宅の消費財化、居住の不安定化、コミュニティの衰退などによって大きな変容が起こっている。新しい理念、技術、開発力、制度を生かし、どのように住み心地がよく安定した市民の居住を実現するのか、あらためて基本に立ちかえって検討する必要があろう。

 時あたかも21世紀となり、京都市域においても、郊外への人口分散化と中心部の空洞化という状態から、再びバランスのとれた都市居住へと回復する兆しがみられる。また、高齢化・少子化の進行が大都市の中では早い京都にあっては、住み慣れた地域で住み続ける、そして若い世代を受け入れながら多世代が交流し支えあえるコミュニティを営みたいという志向が高まっている。さらに、地球環境問題を背景として、住宅のスクラップ化を最小限にし、環境共生のすまいを追求しようという意識の向上も見られる。さる1月に策定された「京都市基本計画*-くらしに安らぎ、まちに華やぎ、信頼で築く21世紀の京都」においても、このような兆しを計画課題として方向づけている。 

 本答申では、このような市民のニーズと新しい基本計画の方向を受けとめ、当面している様々な問題の解析にはじまり、すでに提起されている方策を吟味しつつ、新しい発想でもって表題のテーマに即した取り組むべき提案として取りまとめたものである。

 すなわち、答申においては、まず、21世紀初頭(2001(平成13)年~2010(平成22)年)において実現すべき市民のすまい=居住の目標像を描き、つづいて、それを実現するための、すまいづくりの仕組み=住宅政策の体系と個別施策のあり方を検討して、どのような行動が必要かを提案した。この答申の内容が、市民、事業者、行政が協働する今後の京都のすまいづくりの指針として役立つこと、また京都市が近々策定する新たな住宅マスタープラン*(京都市第八期住宅建設五箇年計画*を含む。)に反映されることを期待するものである。


注)右肩に*印が付いている用語については、後ろに用語解説を付けている。




1.市民の居住を巡る状況




(1)市民の居住動向




① 成熟社会における居住の趨勢

(人口・世帯数の動向)

・国立社会保障・人口問題研究所の将来人口中位推計によれば、わが国人口は2007(平成19)年の1億2778万人をピークにして、その後減少に向かうと予測されている。

・京都市人口は、今後減少するものと予測され、市推計によれば、1995(平成7)年の146万人から2025(平成37)年には131万人程度にまで減少の見通しである。

・一方、近年、都心部では、マンション供給等を背景にして、人口が増加に転じた区もあり、居住者の入れ替わりを伴いながらも、人口回復の兆しがうかがえる。

・世帯数については、少子化、単身化が進行する中で数的には増加している。人口からは遅れるものの、2015(平成27)年をピークとして、減少に転じると予測されている。

(経済不況に伴う居住不安)

・バブル経済の崩壊後、地価が下落を続けている中で、既存の住宅の資産価値が低下し、担保割れを起こしたり、住み替えを図ろうとしても売るに売れないといった状況が見受けられる。

・また、経済の低成長や競争の激化と年功序列型賃金体系や終身雇用の見直しなどに伴う雇用不安を背景として、将来の収入を見通すことができない中で、住居費負担が重くのしかかっている。

(居住ニーズの多様化)

・一方で、就業形態の多様化や精神的な豊かさや生活の質を重視する価値観の広がりの中で、市民個人のライフスタイルや居住ニーズの多様化が一層進むと考えられる。




② 家族・世帯構成の変化と居住問題

(高齢化と高齢者世帯の居住)

・2000(平成12)年の65歳以上の高齢者比率は17.2%となっており、東山区の26.1%を筆頭に、都心区の上京、中京、下京区はいずれも20%を超えている。(京都市推計人口7月現在)

・高齢者のいる普通世帯は増加しており、1998(平成10)年には高齢単身世帯が39,500世帯,高齢者夫婦世帯が40,800世帯、合計80,300世帯(普通世帯総数の13.7%)が高齢者のみの世帯であり、今後とも増加することが見込まれる。(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度))また、その他、福祉施設等に入所している高齢者も9,640人(1998(平成10)年10月)いる。(第2次京都市高齢者保健福祉計画・京都市介護保険事業計画(2000(平成12)年2月))

・高齢者のみの世帯では、持家の場合に、経済的な余裕がないあるいは心理的な問題から、老朽化を放置しがちである。

・また、賃貸住宅では急病などの緊急時を懸念して家主から入居が敬遠されるなど、居住の安定が図りにくい問題がある。

・高齢者向け住宅として、シルバーハウジング*等の供給が図られてきているが、高齢者の多様なニーズや所得・資産等の条件に見合うだけの供給量及び選択肢が十分にあるとはいえない状況である。

(高齢者の居住の安定に向けた取り組み)

・国においても、高齢者の居住安定に向けた総合的な対策に取り組んでおり、特に、民間賃貸住宅に力点をおいた、バリアフリー*化の促進や終身借家契約、高齢者入居住宅登録システムといった制度の創設を含む「高齢者の居住の安定確保に関する法律*」が2001(平成13)年4月に制定された。

(少子化と子育て世代の居住)

・京都市の合計特殊出生率*は、1999(平成11)年には1.20人(全国平均1.34人)にまで低下し、少子化が一層進んでいる。その背景には、20~30代の晩婚化などによる単身比率の上昇が大きく影響している。

・都市の安定的な維持の観点からも、子どもを産み育てたい若い世帯に対する支援が求められている。

(外国籍市民や留学生の居住)

・京都市は、留学生や外国籍市民が多数居住しているが、言葉や生活習慣の違い、あるいはトラブルが発生した場合の保証問題などが障壁となり、こうした人々を受け入れる住宅が不足している状況にある。

(居住を支える地域福祉の動向)

・地域ぐるみの福祉コミュニティづくりの活動(防災、ミニデイサービス*等)も、いくつかの地域において取り組みが進められている。

・また、加齢や障害に伴う機能低下等に対応する住居の改善について、現在、保健、医療、福祉、建築等の各方面の専門家が半ばボランタリーに住居改善チームのネットワーク化の取り組みを進めており、その需要は増加傾向にあるが、十分な対応がとられているとはいえない状況にある。

・一方、子育て世代については、女性の社会進出が進展するに伴い共働き世帯が増加しており、多様な保育サービスに対するニーズが生じている。




③ 住宅ストック*の現状

(住宅ストックの増加と空き家の増加)

・住宅総数は、1998(平成10)年現在で682,840戸であり、世帯数の増加に伴い、年々増加している。

・また、空き家戸数も年々増加の一途をたどっており、1998(平成10)年現在で101,210戸と、住宅ストック総数の約14.8%に至っている。(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度)

・これらのうち、別荘などの二次的住宅や、普段居住している者がいない住宅などが約42,000戸を占めている。残りの賃貸・売却用あるいは建築中である約6万戸の状態をみると、約26,000戸が、一般的に居住に適さないと考えられる「危険又は修理不能」もしくは「大修理が必要」である住宅、又は、延べ床面積18㎡未満の狭小住宅、設備共用住宅にあたる。有効活用が可能と考えられるストックは約34,000戸となる。(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度)

・一方、新規住宅建設は縮小傾向にあるとはいえ、1998(平成10)年で16,500戸あり、このことは、ストックの有効活用が十分になされないまま、新規住宅建設が進んでいる状況を示しているといえる。

・以下、主なストックの類型別に特徴的な現状をみる。




④ 木造住宅ストックの現状

(耐震上の問題と防災の取り組み)

・市内には、新耐震基準*以前に建設された住宅が294,120戸(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度)存在し、うち木造住宅が、153,980戸を占めている。

・その中でも、京町家の多くは、建築基準法上はいわゆる「既存不適格建築物」であり、耐震性の確保や延焼防止などの防災対策の問題をかかえている。

・しかし、経済的なハードルから耐震診断や耐震改修が行われるものは、ストック総数から見るとごくわずかに過ぎない。

・また、京都に特徴的な袋路も同様に防災上の問題を有しているが、連担建築物設計制度*の京都らしい運用など、再生整備の手法が整備されつつある。

(狭小敷地住宅の増加)

・一戸建て及び長屋建ての専用住宅において、取得時期別の敷地面積をみると、年々減少傾向にあり、1994(平成6)年~1998(平成10)年に取得された敷地面積の平均は、93.7㎡と100㎡を割り込むに至っている。一戸建て及び長屋建ての約4割にあたる約10万戸が、75㎡未満の狭小敷地住宅となっている。(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度)

・こうした狭小敷地住宅(いわゆるミニ戸建て)は、主に郊外部における、敷地の分割やミニ開発によって供給されているものである。木造3階建ての建築によって、狭小敷地でも住戸規模を比較的確保できることも、増加の背景にある。

・これらには、住環境上、都市計画上の問題があると同時に、増築の困難性、住環境上の問題からの市場価値の低下、また違反建築も多く含まれていると見られ、将来的にストックとして活用の困難なものがある。

(京町家の減少と再生の取り組み)

・京都の伝統的な生活文化の器である京町家は、年々減少の一途をたどっており、京町家再生プラン*によれば1998(平成10)年時点で都心4区において約2万8千軒が数えられている。(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度)

・戦前木造住宅に広げてみると、1998(平成10)年では50,800戸で、1968(昭和43)年の189,680戸の三分の一以下に減少しており、同じペースで減少すれば、ほぼ20年で消滅することになる。

・京町家の改善・活用については、近年その価値の見直しにより、商業施設への転用をはじめとする多様な再生・活用が急速に進みつつある。

・また、京町家が備える省エネルギー性、木材のリサイクル性などの多面的な特長を再評価し、これからの住宅供給に生かそうといった動きも生まれつつある。

・さらには、京町家に凝縮された木造建築技術や、手を加えながら丁寧に住みこなすライフスタイルといった、京都特有の住文化を継承する考え方も育まれつつある。




⑤ 分譲マンションと管理問題

(分譲マンション供給の動向)

・持家・共同住宅の居住世帯は42,500世帯である。(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度)

・民間調査によれば、本市においては、分譲マンションの供給は1966(昭和41)年が最初で、その後年々増加し、現在約1,000棟近くが立地しているといわれている。

・1980(昭和55)年前後に公的ニュータウンでの大量供給があり、1990(平成2)年前後のバブル期には「億ション」に象徴される資産運用型マンションが増加し、近年では、人口の都心回帰を促す比較的低価格のマンション供給が盛んである。

・一方、中古マンションは新築マンションの価格低下などから流通しにくい現状にある。

(分譲マンションの管理問題)

・分譲マンションが都市居住の一形態として社会的にも定着し、区分所有という形態も理解されつつある。

・近年、管理組合の協議会組織や、それらを支援する専門家の組織などが急速に成長している。

・京都市においても、1991(平成3)年頃から、マンション管理の支援を行う団体が本格的な活動を開始しており、そうした組織・人材と取り組みの広がりとともに、マンション管理のノウハウも蓄積されてきている。

・2000(平成12)年12月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律*」が制定され、マンション管理士*の資格、マンション管理業者の登録制度の創設などの対策を講じることとしている。

・こうした動きの中で、修繕積立金の不足などのマンション管理の初歩的な問題についての認識が深まり、新規に供給されるマンションでは改善される傾向が見られるものの、既存のマンションでは、いまだ解消されず問題となっているものも多く見られる。

・また、居住者や管理組合の情報、知識の不足から、分譲主や管理会社に都合のよい契約がかわされていたり、居住者や管理組合がマンション管理に無関心というケースも少なくない。

・マンションの管理問題は、ハード・ソフトにわたる条件の違いから、それぞれのマンションの個別性が強く、通り一遍の対策では対応できない現状である。

(マンション建設における地域社会とのあつれき)

・マンション建設においては、日照・通風等の相隣環境への影響が大きく、とりわけ日影規制のかからない都心部商業地域では建築紛争が少なくない。

・また、数十あるいは数百世帯という大量の人口流入は、町内会などの地域社会に激変をもたらすものであり、建築紛争などの問題があればなおのこと、新しい住民とそれを受け入れる地域住民との間にあつれきを生み出すことにもなっている。

・こうしたことから、マンション建設において、町並み景観や地域社会との調和をいかに図るかが問題となっている。




⑥ 市営住宅ストックの現状

(市営住宅ストックの維持・改善問題)

・京都市においては、現在、公営住宅及び改良住宅をあわせて、約23,000戸を超える市営住宅を管理しているが、このうち約5割に当たる住宅が1970年代(昭和40年代後半から昭和50年代前半)に建設されており、今後これらが一斉に更新時期を迎えることになる。

・これに対して、これまでの建て替えを中心とした手法だけでは対応が困難となっている。

(市営住宅・団地と地域社会)

・公営住宅は、当初の供給段階においては、都市に集中する低所得勤労者向けの低廉な住宅としての役割を持っていたが、現状ではむしろ高齢世帯の受け皿としての性格を強めている傾向にある。

・また、改良住宅は、不良住宅が密集する地区の環境改善を目的に、従前居住者向けの住宅として整備されてきたが、狭小、老朽化による建替問題や高齢化等による地区活力の低下等が生じている。

・こうした状況の中、住戸規模や設備、バリアフリーなど、高齢者の居住ニーズに対応することが強く要請されており、さらに、地域における有用なストックとして、団地内でのコミュニティの形成や地域の活性化に対する市営住宅の役割が見直されつつある。




⑦ 地域のまちづくりと居住環境への取り組みの現状

(密集市街地の状況)

・市内には、道路等の基盤が未整備で、老朽・狭隘な住宅が密集するなど、生活環境面や安全面において課題を抱える市街地が多数残されている。

(居住環境の保全・向上の取り組みの動向)

・良好な居住環境の保全・向上に向けた市民の自主的なすまい・まちづくりの取り組みも盛んであり、地区計画*や建築協定*等の法定制度に基づく取り組みや、任意のまちづくり協定、更に、市営住宅の建て替えを契機とした入居者によるまちづくり活動など、多様なバリエーションがある。これらについては、個々の課題状況が異なるため、適切な専門的支援や住民と行政の協力など、きめ細かな対応が求められている。

・一方で、市民のまちづくりに対する意識は高まっており、居住者自身がまちの将来像を考え、合意を形成し、行政とのパートナーシップ*によりまちづくりを進める気運が高まりつつある。

(住環境整備施策の新しい段階)

・これまで、住環境整備施策は、同和地区の総じて低位な住環境の改善という緊急性や重要性から、一般施策を補完する形で取り組まれてきたが、今後は住民と行政による協力連携により、「住み続けられるまちの形成」というより普遍的な目的の実現を目指して、一般施策として再編・確立する時期を迎えつつある。




⑧ 住宅の品質の確保を巡る動向

(住宅の質の問題)

・本市の住宅ストックをみると、一般的に居住に適さないと考えられる、「危険又は修理不能」もしくは「大修理が必要」である住宅や延べ床面積18㎡未満の狭小住宅、設備共用住宅が11万戸存在する。(住宅・土地統計調査(1998(平成10)年度)

・高度経済成長の中で、住宅についても、こまめなメンテナンスを行い長く使うよりも、新しく建て替える、つまり使い捨ての感覚が主流となってしまっている。そのため、老朽化したまま放置される住宅も増加している。

・一方、新規供給においても、長期的な活用には向かない狭小敷地における木造3階建住宅や違反建築、欠陥住宅などが供給されている。

・また、建材に使用される化学物質を主な要因とするシックハウス症候群*などの健康問題も顕在化している。

(中間検査制度*等の導入と違反建築に対する取り組み)

・建築基準法の改正に伴い、京都市においては、1999(平成11)年度に中間検査制度が導入されるとともに、民間の指定確認検査機関*が創設された。

・違反建築の大半を占める住宅について、中間検査制度に加えパトロールの充実、行政と関係機関や団体との連携による違反建築防止推進会議等の取り組みが進められている。

・こうした取り組みが、違反建築の抑制に成果を上げつつある。

・また,金融機関においても違反建築に対する融資を控える動きが生まれてきている。

・一方,消費者サイドでは、構造的な欠陥に対する意識が高まりつつあるものの,集団規定を含めた違反に対する認識および市場における扱いはまだ十分とは言えない。

(住宅の性能表示制度*等の創設)

・住宅の瑕疵保証制度*の充実や、性能表示制度の創設が行われた。消費者保護の視点からのトラブルの未然防止とともに、質の高い住宅の供給を促進する制度として期待される。

・一方では、伝統工法等の「品質」については、こうした「性能」に乗りにくいため、そのあり方についての検討も必要となっている。

・これらの制度や取り組みは、まだ端緒についたばかりと言え、今後、住宅の供給側、消費者側双方への普及と制度を有効に機能させていくことが課題となっている。




⑨ 住宅市場とすまいづくり政策の現状

(中古住宅の流通問題)

・前述したように、新設住宅着工戸数は近年やや減少傾向にあり、1998(平成10)年で16,504戸となっているが、全体としては、まだ新規フロー*主導の市場構造であり、中古住宅の流通は低迷している。

・その背景には、ユーザーサイドからみれば、中古住宅の評価制度の未発達や流通情報の不足、それに伴う不安感の問題が大きいと考えられる。また、供給サイドにも様々な問題があると考えられる。

(住宅市場の情報化の現状)

・急速に普及したインターネットによる住情報の提供が広がっており、公的住宅については全国一元的な情報サイトの創設が進められている。今後、情報化の進展に伴い、住宅流通産業の構造変化もますます進むものと考えられる。

・その一方、ユーザーにとっては、手軽に住情報を入手できる反面、多様な側面を持つすまいの性能を評価できるに足る情報や基準が整っておらず、住宅の供給側とユーザー側の情報格差によるトラブルの発生が懸念される。

(賃貸住宅市場の動向)

・地価の下落やこれに伴う安価な分譲マンションの供給が相次ぐ中で、賃貸住宅市場も右肩下がりとなっており、空き家の増加、家賃の低下などより、賃貸住宅経営も困難な状況となっている。

・その一方で、原状回復を理由に借家人に不当な負担が生じるなど賃貸借契約上のトラブルも多く発生している。また、礼金をとる賃貸住宅も少なくなってきてはいるが、いまだに不透明な慣例が残されている。

・定期借家制度*がスタートし、住宅の供給サイドからみた住宅の流通方策の選択肢が広がっており、これまであまり市場には出てこなかった戸建住宅の賃貸住宅市場における流通や家賃の低下などの効果が期待される。

・しかし、まだ貸主側、借り主側双方とも、制度そのものが正確に理解されていない状況であり、今後、契約上のトラブル等の発生も懸念されている。

(賃貸住宅市場における公民の連携の取り組み)

・市場への公的支援として、京都市住宅供給公社と民間の土地所有者が連携した特定優良賃貸住宅*が、これまでに約2,200戸供給されており、良質な賃貸住宅の供給や都心居住の促進において成果を上げている。

・また、2001(平成13)年には、バリアフリーや福祉サービスの付加など高齢者の居住に適した、高齢者向け優良賃貸住宅*の制度が京都市においてもスタートしている。

(総合的なすまいづくり政策の取り組み)

・設計、施工、流通、管理等に携わる関係団体において、地域のまちづくりや市民のすまいづくりを支援する取り組みが進められている。

・また、京都市においては、京都市住宅供給公社をはじめ、(株)京都すまいづくりセンター、(財)京都市景観・まちづくりセンターなどが、市民のすまいづくりの支援・コーディネートを行う役割を担っている。

・更に、地域福祉の支援機能をはじめ、すまいづくりや地域居住を支援する様々なNPO*やコミュニティビジネス*が胎動し始めており、住宅ユーザー、供給主体、行政の連携とともに、重要な役割を担う主体として期待される。

・行政においては、住宅政策の居住政策としての広がりに伴い、福祉政策をはじめとする他の分野の領域とオーバーラップする中で、他部局との連携がますます重要となっている。


(2)これまでの答申と住宅政策の変遷




・京都市住宅審議会は、1980(昭和55)年に最初の答申となる「都市居住政策の確立に向けて」を答申し、家族構成、ライフステージ、居住地域に応じた良好な居住環境の下に安定した生活を営むに足りる住宅の確保を掲げ、5つの基調を位置付けた。

・すべての人が居住の権利を有するという理念のもと、居住水準の確保を最大の課題としつつ、住宅の量的な拡大を中心とした住宅供給が進められた。

・1986(昭和61)年の答申「すまいづくりにおける市民と行政の連携」にも最初の答申の5つの基調は長期的な目標として引き継がれ、その中で、地域特性を大切にするHOPE計画等による新しい都市住宅の供給などが進められた。

・バブル経済の到来とその崩壊は、居住不安の広がりと、京都らしい職住共存の都市居住パターンの崩壊、伝統的な町並みの変容をもたらすこととなる。

・そうした中で、1991(平成3)年の答申「21世紀の高齢社会を展望した良質住宅ストックの維持と形成」に基づいて、安定した都市居住と良質なストック形成に向けた取り組みが進められた。

・さらに、前回、1996(平成8)年の答申「多世代都市居住のまちづくりの展開」においては、阪神淡路大震災の教訓に学ぶ安全性の確保、これまでの新規供給中心からストックの活用へ、そして行政施策は市場の補完的役割へと移行していくことが打ち出された。

・こうした量から質へ、さらにストックの活用への変遷を経て、バブル崩壊後約10年を経た今、経済的な混乱や時代的閉塞感がある中で、21世紀の安らぎある豊かな暮らしの実現をどう支えていくかが問われている。




2.21世紀初頭における居住の目標




(1)住宅政策の理念

 既往の答申にもあるとおり、その理念は、すべての市民が自らの営みによって健康で文化的な居住を営む権利を有し、市民社会と行政はこの権利の具体的実現を保障し支援する義務を担っているという基本的な理解で成り立っており、市民の豊かで安らぎある暮らしの実現を図るものである。

 住宅政策とは、この理念のもとに、市民、事業者、専門家やNPO、行政が協力・連携して取り組む様々な行動・施策の体系を示すものである。

 さらに、京都の住宅政策としては、風土や歴史、伝統文化などに基づく、暮らしやすまいづくりにおける地域性を尊重する施策を計画的に具体化することも求められている。特に、地方分権の時代にあっては、全国的な制度や技術を活用するとともに地域の資源や人材を活かし、地域独自のニーズを創造的に充足する総合的な取り組み能力が求められるところである。


(2)政策の基調となる考え方




(すまい・まちづくりの新しい価値の創造に向けて)

・現代において、市民はすまいに関して相当な投資を余儀なくされているが、反面、それだけの投資をする以上、それがすまいや暮らしの質の向上に確実につながらなければ、“もったいない”と言える。

・京都のすまいづくりを振り返ると、その大きな問題点の一つは、高度経済成長の中で培われた大量生産、大量消費のスタイルが持ち込まれてしまっていることである。

・ほんの数十年前までは、季節ごとの模様替えや大掃除、畳替えといった住まい方の風習の中で、こまめに点検をし、問題がある箇所は補修しながら、長く使い続けることが当たり前であった。

・一方で、大工や工務店などすまいを建てる側にも、自分達が建てたもののメンテナンスを継続的に手がけ、居住者との日常的なつながりを保ち、長く使うことを支える仕組みがあった。

・そうした住まい方、すまいづくりの仕組みがすたれ、使い捨ての感覚になってしまっているのである。

・また、すまいづくりや地域のルールが十分に機能しなくなっていることも問題である。違反建築によって、耐震性が確保されず、自らの生命はもちろん、周辺の他人の生命まで危険にさらす状況も生まれている。にもかかわらず、ルールを守らなければならないという意識も希薄であると言わざるを得ない。

・地域をみれば、コミュニティの衰退が叫ばれて久しいが、そこに住まう住民相互はもちろん、地域外の人も含めて、そのうちの多くの人々が、これが大切だと共有できる地域の価値(住環境の安全性や快適性、暮らしの文化であったり、都市景観であったり、多様なものが考えられる)を見出すこと、その価値基準に基づき自ら守るべきルールを設定し、地域の価値を大切にすることができないでいる。

・近年の敷地の狭小化(いわゆるミニ戸建て住宅の普及)も、初期投資は安く、一見、経済的、合理的に見えるが、結果的には長期の居住には(高齢期の居住にも)向かず、住み替えて売ろうとしても資産価値の低下も早い。また、周辺の住環境や町並みを悪化させることにもなりかねない。




(市民の主体的なすまいづくりや暮らしの向上)

・すまい・まちづくりに関わる多様な主体の役割発揮と連携が、こうした状況を打開し、すまいや暮らしを向上させることにつながると言える。

市民の役割・・・

・すまいや暮らしの質を向上させるためには、市民もすまいづくりや地域づくりについて学習し、地域社会との良好な関係を築き、市民相互に協働しながら、自らの要求の実現のために、相応の努力を払うことが求められる。

・自分の生活にあったよいすまいを選び、きちんとした契約を結ぶことは、自らの権利を守ることにつながるし、大事に手入れをしながら長く住めば、結果的に住居費の効果的な使い方につながり、かつ居住性も向上する。さらに、環境保全の社会的要請に対しても貢献できることになる。

・自分が払った努力の分、すまいと暮らしの質が向上するところに、住まうことの喜びを見出すことができる。

事業者の役割・・・

・事業者は、その責任においてルール違反をしないようにすること、そして、自分達が作ったものに対して責任を持つ意味でのメンテナンスと同時に、ストック活用を重視するスタンスにのっとり、新規供給主体から維持・補修へと軸足をシフトしていくことが求められる。

・そうしたマーケットを開拓し、こまめなメンテナンスや流通、技術の工夫でよりコストダウンも図り、消費者としての市民の信頼を勝ち得ていくことが必要である。

NPO、市民団体などの役割・・・

・そして、NPOなどの組織は、市民相互が協働し支えあう仕組みの担い手として、あるいは、地域における住宅供給や維持管理、生活支援サービスの供給主体としてなど、三者の中間的な存在として市民を支援する役割が期待される。

行政の役割・・・

・行政は、そうした市民の努力が、確実にすまいや暮らしの質の向上に結実するよう、市民の学習を支え、相談にものり、また、市民の権利が不当に侵されないよう、透明で公正な市場のルールをつくったり、市民と建築関連事業者やNPOのコーディネートや活動の活性化を促すことが必要である。







(3)居住の目標

 こうした考え方に基づき、今回の諮問課題である

「21世紀における安らぎあるくらしを支える住宅政策のあり方について」

 に対応する居住の目標を次のように定める。


- いきいき市民居住の実現 -


すなわち、「いきいき市民居住の実現」とは


○暮らしにおいて・・・

 自らの努力と相互の協働によって、すまいやまちを充実していくことが、市民のいきいきとしたくらしの自己実現につながる。




○すまいづくりにおいて・・・

 すまいのライフサイクルを通じて、きめ細かな手入れがなされ、ストックとして良好な質が確保される。




○多様な主体の連携において・・・

 主体が互いに信頼関係を結び、力を合わせることで、暮らし、すまいの質を相乗的に向上させる。




そうした将来像を目指すものである。





3.21世紀初頭における住宅政策の課題

 ここでは、1980(昭和55)年の答申以降における、京都市における居住をめぐる状況と住宅政策の推移を踏まえながら、目標像の実現に向けた21世紀初頭10年間における住宅政策の課題を暮らし、すまい、連携の三つを切り口として整理する。


(1)いきいきとした暮らしを支える




① 政策の方向 - いきいき市民居住の営みを支える住宅政策へ

 単身もあれば三世代同居もある世帯のかたち、二世帯住宅や親との近居・隣居など多様な家族の居住形態、単独所有、区分所有、賃貸など多様な住宅の所有形態、就労スタイルの多様化、それぞれの価値観に基づくライフスタイルなど、市民の多種多様な生き方は、そのまま多種多様な暮らし方として、それに見合うだけの居住ニーズを生み出している。

 市民が、こうした自らの要求に基づきながら、自分達の暮らしをよりよくしていくために努力をしていく営みを支えるためには、すまいのみならず、福祉・医療、安全、地域のコミュニティ形成やまちづくりなど、トータルな生活を支える視点が必要であり、そのために、住宅政策も多様な生活支援サービスや地域のまちづくりと密接につながりながら、市民とのパートナーシップを礎にして、市民の居住全体を支える政策へと裾野を広げていくことが必要となっている。




② 課題の設定 - 地域のまちづくりと多様化する居住ニーズへの対応

・価値観の多様化や、少子・高齢化、単身化など家族像の変化を通じて、住宅へのニーズの多様化が進んでおり、従来にも増して、居住ニーズに即したきめ細かい住宅供給を促進していく必要がある。

・とりわけ、長寿社会においては、高齢者の生きがいや介護等の問題も含めて、福祉施設や高齢者向け住宅の直接供給のみならず、適切な住居改善システムなど、すまいや地域において自立的な居住を支援する仕組みづくりを住宅政策の柱として重視する必要がある。

・子育て層の居住条件を高めることも、都市の安定的な維持に不可欠の課題であり、ゆとりある優良な住宅の供給はもとより、日常的な子育て支援に寄与する住宅政策が望まれる。

・こうした当面する福祉的視点をはじめとして、医療、教育、文化、産業、雇用等の多様な生活サービスの充実と連携しながら、住宅政策を総合化していく必要がある。

・また、そのような多様な居住ニーズは、必ずしも個々人の自助努力のみで満たされるものではなく、地域ごとの個性ある条件を生かした住民の協働による主体的なすまい・まちづくりの取り組みを促進することが不可欠である。

・老朽・密集地区等の居住環境整備・改善の取り組みや、良好な居住環境の保全等、地区の特性に応じた取り組みにおいては、市民、事業者、行政が相互の役割を明確にしたパートナーシップにより進めることが重要である。




(2)いきいきとしたすまいづくりを支える




① 政策の方向 - ストック活用を重視したすまいの質を高める住宅政策へ

 経済の低成長が継続するとみられる状況、また、2015(平成27)年には、世帯数も減少期に入ることが予測されていることからみても、今後、住宅に対する社会的投資は減少していかざるを得ないと考えられる。さらに、建設廃棄物の削減、リサイクルなど環境負荷の軽減は21世紀の社会的要請である。今後、住宅政策においては、量的な供給の充実よりも、既存ストックを有効に活用していくこと、そしてあわせて安全性、快適性といった住宅の品質を高めていくことを重視すべきである。そのため、既存ストックについては、適切な維持、補修をしながら、できるだけ有効に活用するとともに、新規供給についても、適切な品質を確保し、総体として住宅の質を向上させる政策展開を図る必要がある。




② 課題の設定 - 質の高い住宅・住環境のストックの形成

・わが国人口が2007(平成19)年には減少期に入ると予測され、京都市においても大きな人口減少が見込まれる中、今後の住宅政策は、公的住宅の直接供給や民間住宅の建設誘導といった新規フロー対策から、住宅ストック全体の質を高める方策へと本格的に軸足を移すべき時期に至っている。

・新規フローについては、その量的な促進でなく、むしろ高質化及び長寿化の促進を重視し、環境負荷の低減も視野に入れた住宅供給の誘導が必要である。

・既存ストックについては、適切な改修・維持管理による有効利用を誘導するための仕組みづくりが重要であるとともに、丁寧に住むライフスタイルの復興も重要である。

・京都らしい都市居住文化の観点から見たとき、木造の京町家の有効活用は京都に特徴的な課題であり、住宅をはじめ多様な用途への活用を積極的に促進する必要がある。

・ただし、既存の木造住宅の耐震化は進んでいないのが現状であり、密集市街地の再整備とあわせて、市民の安全確保のための多様かつ強力な取り組みが必要である。

・また、高度経済成長期以降、相当な戸数が蓄積されてきた民間分譲マンションについては、適切な維持管理や大規模改修等への備えが十分でないものも少なくないため、適切な維持管理システムの充実が急務となっている。

・さらに、本市の住宅総数の4%程度を占める公営住宅についても、高度経済成長期に大量に建設された既存ストックが更新時期を迎えているが、その建て替えや改善等にあたっては、環境の向上の視点から地域との結びつきを強める方向での再生が重要である。





(3)いきいきとした連携を支える


① 政策の方向 - 市民の主体性と居住ニーズに応える市場形成を支える住宅政策へ

 暮らしを営むのは市民自身であり、暮らしは、市民が主体となってすまいづくりやまちづくりについて学習し、地域社会との関係を育みながら、自らの価値観に基づく要求の実現に向けて築きあげていくものである。住宅政策は、これまでの与える政策から、こうした市民の主体的な取り組みを支援・促進する、市民、事業者、行政の協働の仕組みをつくっていくこと、また、市民の居住ニーズに応え得る透明性、公平性の高い住宅市場の形成を誘導することで、より自由な選択とすまいと暮らしの質の向上を図る方向へと展開していく必要がある。


② 課題の設定 - 住宅の良循環を進める市場の誘導

・住宅ユーザーの住宅を見る目や権利意識は徐々に高まりつつあるなか、住宅市場の透明化・円滑化を通じて居住者の自由な選択が可能な住宅市場を形成し、良好な品質を備えた住宅の供給を促進することで、ストックの良循環を形成していくことが必要である。

・近年、特に、インターネットを活用した住情報提供など住宅流通システムが急速に進化しつつあり、今後住宅市場の構造が大きく変化する可能性があることから、そうした動向を踏まえ、消費者の啓発を含めた住情報の提供・共有化を推進する必要がある。

・既存の京町家やマンション等で有効な住宅として循環しないものが多数存在するのが実情であり、市民に有効に提供するためには、安心して取得できるための必要な性能の明示など適切な情報提供の仕組みづくりや、公正な売買、賃貸借のルールの普及・徹底、定期借家制度の活用など多様な供給システム等の工夫が必要である。

・なお、市場の円滑化のみでは、住宅困窮者の居住を保障することはできないため、市場を補完する公的住宅政策は引き続き重要である。





4.具体的な施策展開

 政策の課題を受けて、三つの柱に沿った、具体的な施策展開を示す。


(1)多世代が支えあう地域居住の支援




ア.多様な世代のニーズに対応した住宅の供給

・若年層から高齢者まで、障害のあるひともないひとも、多様な世帯がそれぞれの生活にあったすまいに住むことができる地域社会の形成を目指す必要がある。

・そのため、所得、年齢などの階層や子育て、介護などの家族、ライフステージに応じた適切な住宅が選択できるよう、民間住宅の誘導や住宅市場の円滑化を通じて、多様な住宅供給を促進する。

・また、公営住宅団地を地域の有用なストックとして捉え、子育てや高齢者の生活支援サービスや地域のネットワークと連携しながら、有効な活用を図る。




【想定される具体的な施策例】








〇子育て世帯、中堅ファミリー世帯向けの住宅供給の促進

・特定優良賃貸住宅制度による、中堅ファミリー向けの優良な民間賃貸住宅の供給促進

・都心居住を促進する都心4区における特定優良賃貸住宅に対する特別家賃補助(若年新婚、子育て、高齢者世帯を対象とする補助)の継続

・住宅供給公社、都市基盤整備公団による賃貸住宅の供給促進

・入居希望者が共同で建設するコーポラティブ住宅*の供給促進

・個人や家族の独立した住戸と、食堂や共用室など交流スペースをもった居住者同士が共同で利用・管理し、相互に支えあいながら居住するコレクティブハウジング*の供給

・住宅供給公社などによる取得費用負担の少ない定期借地権付き分譲住宅*の供給促進




〇市営住宅の供給

・公営住宅不足地域への借上げ等の方式によるきめ細かい公営住宅の供給

・「公営住宅ストック総合活用計画*」等に基づく、小規模の既存市営住宅の改善等による、多様な世代のニーズに対応可能な住宅の供給

・多世代が暮らすコミュニティの形成に向けた、市営住宅と中堅ファミリー層向け住宅(特定公共賃貸住宅やその他公的賃貸住宅)とをあわせた複合的な建て替えや供給

・市営住宅団地における高齢者や乳幼児向け福祉サービスなど多様なコミュニティビジネスの導入

・市営住宅団地における児童遊園等、地域の交流スペースとなる空間の整備




〇定期借家制度の活用による良質な賃貸住宅の供給促進

・市民や不動産業界に対する定期借家制度の周知や適切な活用の促進に向けた情報提供




〇民間ストックの維持管理と中古市場での適正な流通の誘導

・市民に対する日常的な点検や丁寧な維持管理などを行うすまい方の普及

・床下などが点検しやすい構造の住宅の研究・開発

・地域で維持管理を行う建築士や大工・工務店などの人材やネットワークの育成とこれらと市民をつなぐ仕組みづくり

・京町家など伝統工法住宅の改修、維持管理の技術の開発と普及

・中古住宅の管理状況などの情報を加味した市場での適正な評価の誘導

・ライフスタイルやライフステージの変化に伴うニーズに対応したリフォーム市場の活性化




〇京都らしい環境共生すまいづくり

・京町家の知恵を生かした京都らしい省エネルギー型住宅の開発

・環境共生型住宅*の供給促進

・古材のリサイクルの促進・支援、古材バンク等の支援












イ.地域の福祉と居住の安定

・高齢者や障害のあるひとの居住を保障することは、重要な課題であり、高齢者や障害のあるひとの自立した生活と社会参加をできるかぎりサポートし、住み慣れた地域で生涯にわたり住み続けられる環境づくりが大切である。

・地域での自立し安定した居住を支えるためには、住宅そのものの耐久性の向上と生活状況に応じた改善を行うことを、介護、生活支援サービス、地域社会における支えあいなどのソフト面をあわせた総合的な取り組みとして行わなければならない。

・また、高齢期の生活に対応できるよう、これから高齢期に向かう中年層の世代を中心に、住宅改善の取り組みを促進する必要がある。

・若年層など、これから住宅を取得する者に対しては、住み続けることが可能な耐久性の高い住宅、生活状況に柔軟に対応できるゆとりのある基本設計の住宅供給を行い、かつ、その維持管理を適切に行うことが大切である。

・住宅改善は、居住者の将来のすまい方、身体状況、居住者が受ける生活支援サービスなどを総合的に判断して行うことが必要であり、そのため、各分野にかかわる専門家が連携した相談、実施体制を充実することが大切である。




【想定される具体的な施策例】            (ゴシックは重点施策)








〇高齢者、障害のあるひとへの住宅改善の支援

・高齢者等総合住宅相談事業*について、建築士、大工、理学療法士、作業療法士、弁護士などの専門家のネットワークによる相談・訪問体制を充実

・高齢者等リフォーム融資の充実

・介護保険制度*の住宅改修費の適切な活用の促進(ケアマネジャー*(在宅支援専門員)と建築士、大工・工務店などの連携の仕組みづくり)

・高齢者等総合住宅相談事業(すこやかリフォーミング)、重度障害者住宅環境整備費助成事業*(いきいきハウジングリフォーム)、介護保険制度などの連携

・ケアマネジャーや介護ボランティア等に対する、住宅改善や防災対策の学習プログラムの実施

・福祉施策と連携する各種施設の居住性の向上

・これから高齢期を迎える中壮年層に対する、住宅改善の促進に向けた情報発信

・防火アドバイザーによる住宅防火対策の支援




〇良質な新規住宅の供給

・国の「長寿社会対応住宅設計指針*」に基づく、バリアフリーを基本とし、高齢者等の生活にあわせた改修がしやすい住宅供給の促進

・国の「住宅防火対策基本方針」に基づく、住宅における防火設計及び住宅用防災機器等の普及




〇高齢者、障害のあるひとに対応する良質の賃貸住宅の供給

・高齢者向け優良賃貸住宅制度による、低廉で高齢者が暮らしやすい民間賃貸住宅の供給の促進

・高齢者や障害のあるひとのグループホーム*の供給促進

・市営住宅等における安否確認などの生活支援サービスの実施

・終身借家契約制度や高齢者の入居可能な住宅についての登録・紹介するシステムなど国の動向を踏まえた高齢者の居住保証の仕組みづくり

・市営住宅団地における高齢者や乳幼児向け福祉サービスなど多様なコミュニティビジネスの導入

・シルバーハウジングの供給

・高齢者、障害のあるひとの、公営住宅入居条件の緩和や住み替え制度の改善

・市営住宅団地における地域福祉施設の付設や合築の推進

・市営住宅団地におけるオープンスペースなどの地域の交流空間としての整備




〇高齢者の居住の安定に向けた今後の研究課題

・高齢者の資産を利用した融資(リバースモーゲージ*等)の検討

・スケルトンインフィル分離型住宅*など耐久性の高い住宅の供給促進















ウ.住み続けられる住環境づくり

・これまでの住環境の整備や地域コミュニティの醸成の中で培ってきた経験と蓄積を活かし、住民のまちづくりへの主体的な参画を進め、住民、事業者、行政が連携して、将来にわたり、地域コミュニティや地区の活力を維持し、多様な世代が快適に安心して住み続けられるまちの形成を図る必要がある。

・また、重点的に進めてきた同和地区の住宅地区改良事業等が概ね完了したことから,次の課題として、市全域を対象として、京都の密集市街地の特性に見合った住環境整備の展開に向けた将来方策の検討を進める必要がある。




【想定される具体的な施策例】            (ゴシックは重点施策)








〇防災性と居住性に配慮した地域住民の協働によるまちづくりの支援

・建築協定、緑地協定*、地区計画などの活用と制度適用にあたっての専門家の派遣

・都心部における土地利用に関する規制のあり方の検討

・職住共存地区*における活発な伝統産業や都市型コミュニティ産業と都市居住が調和したまちづくりに向けた地域(学区)ごとの地域の住民の協働による地区計画の推進

・伝統的建造物群保存地区等にある住宅、文化財登録の住宅の保全支援策の検討

・敷地面積が狭小な密集市街地における、優良建築物等整備事業*や連担建築物設計制度を活用した、敷地の共同化による共同建替や協調建替の促進

・狭隘道路が多く住宅が密集した地域における健全な市街地の更新を誘導するための方策の検討

・京町家の知恵と工夫を活かした町家型共同住宅*の供給促進




〇地区住環境の総合的整備

・市内の住環境に課題を抱える地区の把握に向けた客観的な指標の設定とこれに基づく全市的な調査と整備方針の策定

・住宅地区改良事業*や密集住宅市街地整備促進事業*の施行地区における事業の推進

・「パートナーシップによる住環境整備指針*」に基づく住環境整備の展開

・市営住宅団地の良質ストックへの更新

・定期借地権を活用した分譲住宅など多様な住宅供給の推進




〇マンションの供給時における周辺地域との調和の誘導

・マンション事業者と地域住民との事前協議制度や周辺地域との調和に配慮したマンションの誘導策等の検討

・京町家の知恵と工夫を活かした町家型共同住宅の供給促進













(2)すまいの質を高める仕組みづくり




ア.すまいの品質の確保

・住宅が新築され、人々が居住し、やがて廃棄されるまでの、ライフサイクルの過程で、建設時や流通時における質のチェックや居住時のきめ細かな維持管理がなされ、住宅ストック全体の質を向上させる京都の特性にあったマネージメントの仕組みづくりを目指す必要がある。

・こうしたきめ細かなマネージメントによって、すまいの安全性、快適性が確保されるとともに、長期にわたる住宅ストックの有効活用を可能とし、リサイクルのシステムと相まって環境への負荷も軽減できる。

・また、すまいの有する性能や維持管理の履歴などすまい固有の情報が流通時や資金調達の際のすまいの評価とリンクすることにより、質の低い住宅が市場原理で淘汰されていくことにつながる。

・こうした中で、市民が安心して良質な住宅を取得できるような住宅市場の形成を促進することが大切である。




【想定される具体的な施策例】            (ゴシックは重点施策)








〇新規建設の品質の確保

・住宅の建築時における中間検査制度及び完了検査制度の充実

・住宅の性能表示制度の活用

・建築パトロールの強化や行政と関係機関や団体との連携による違反建築防止推進会議等の取り組みの推進

・建築関連事業者に対する防火設計及び防火施工の講習




○中古住宅の品質の維持

・住宅の価値を向上させる適切な維持管理やリフォーム・増改築の誘導

・中古住宅の管理状況などの情報を加味した市場での適正な評価の誘導

・流動性のある中古住宅市場の形成の誘導




○京都らしい環境共生すまいづくり

・京町家の知恵を生かした京都らしい省エネルギー型住宅の開発

・環境共生型住宅の供給促進

・再生可能な建材、設備、構造の普及

・古材の再生・リサイクルの促進・支援(古材バンク等の支援)

・すまいの建材に含まれる化学物質などによる健康被害に関する情報提供、啓発
















イ.木造住宅の価値の再発見と有効活用

・京都市においては、京町家をはじめとする木造住宅とそれに関わるすまい方文化や伝統的な技術・工法などが、京都のすまいを特徴づけており、京都固有の文化にマッチし、環境負荷の面でも優れた特性を持っている木造住宅の普及と維持管理の仕組みづくりが大切である。

・市民に対して、きめ細かな維持管理を日常的に行うすまい方や必要な知識を普及していくことが大切である。

・また、木造住宅の日常的な維持管理について、大工や工務店の責任と役割を明確にし、きめ細かな点検や修繕を行う仕組みづくりが必要である。

・木造住宅は、再資源化しやすい部材が多く、また木材は循環利用ができる自然素材のため、環境負荷の軽減という点からも有効である。




【想定される具体的な施策例】








〇京町家の保全・再生・活用

・大工・工務店の業界団体が耐震性の向上や高齢化への対応に配慮して改修したモデル京町家*の活用による市民への情報提供

・京町家の集積度が高い地区における整備方針の検討(京町家街区に係る調査)

・「京町家再生プラン」及び「京都市観光推進計画~おこしやす21~」に基づく施策展開




〇木造住宅の普及

・木造住宅の良さの普及

・木造住宅に係る技術・技能の継承と人材育成に対する支援

・木造住宅に係る防火・耐震性能に関する新技術の開発や京都型デザインの開発等に対する支援

・林業振興との連携

・京都らしい木造住宅の補修・更新を可能にする防火地域制度など関連法規のきめ細かな運用




〇木造住宅のきめ細かな維持管理の仕組みづくり

・市民に対する日常的な点検や丁寧な維持管理などを行うすまい方の普及

・床下などが点検しやすい構造の住宅の研究・開発

・地域で維持管理を行う建築士や大工・工務店などの人材やネットワークの育成とこれらと市民をつなぐ仕組みづくり

・京町家など伝統工法住宅の改修、維持管理の技術の開発と普及













ウ.安全・安心のすまいづくり

・すまいの安全性の確保に向けて、新規供給住宅については、その建築時における指導、検査体制の強化や地域特性に見合った耐震基準の設定とその活用を促進するための融資制度の充実などが必要である。

・既存ストックについては、耐震診断、改修をはじめ、きめ細かな維持管理を行うことが必要である。

・しかし、既存ストックの耐震化は、遅々として進まない現状であり、抜本的に進めるためには、防災の重要性を再確認するための市民への啓発や防災関連情報の提供を前提としつつ、地域の総合的なまちづくりの中で、地域ぐるみの取り組みを進めることが必要である。とりわけ、災害時に大きな被害が予想される高齢者や障害のあるひとへの対応として福祉部門と連携した取り組みは重要である。

・また、老朽化した住宅が密集

ウエッブサイト:-------http://www.pdffind.com/pdf/9kbp5/

ファイル情报です »

时间(じかん)を発表した:2010-01-10   ファイルサイズ:0   フォーマット:doc ファイル
このファイルにダウンロード 京都市住宅審議会2001年答申に向けた中間まとめ(改定案)