堀内一史氏を学長賞に推薦する
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堀内一史氏を学長賞に推薦する
国際経済学部教授 宮川公男
世界の超大国アメリカはわが国にとっても最も深い国際的関係にあり、かつ友好関係を保つべき重要な国である。そのアメリカの社会はきわめて多様性に富む奥深い社会であり、われわれにとってその十分な理解は容易に到達できるものではない。しかもそれは不断に動態的に激しく変化しているものであるから、そのような変化を含めて理解することは不可能とさえいってよいであろう。
賞の対象となった堀内氏の著書『分裂するアメリカ社会-その宗教と国民的統合をめぐってー』(麗澤大学出版会、2005年刊行)は、そのような複雑かつダイナミックなアメリカ社会について、宗教という視点から光をあて、大国としての国民的統合においてそれがはたしている機能を明らかにしようとしたものである。
本書では、まず1620年の冬にアメリカ海岸に到着した最初の清教徒の集団の運命から始めて、アメリカの歴史を辿りながら、アメリカ社会の宗教的特殊性を明らかにする。そこでは、社会の秩序や正義をつかさどる神に対する信仰を社会が全体として持つ一つの宗教とみたトクヴィルの見方をアメリカの「市民宗教」としてとらえる立場が強調される。
このような立場から、多民族国家としてのアメリカの国民的統合に市民宗教がいかに重要な役割をはたしているか、そしてアメリカの公立学校の教育において宗教はどのように扱われているかが明らかにされる。また、公民権運動に偉大な役割をはたしたキング牧師の宗教的思想について考察を加えるとともに、2000年の大統領選挙に勝利したジョージ・W・ブッシュの信仰と市民宗教観を彼の言辞や政策から浮かび上がらせている。特に、ブッシュ政権のPPP(public-private
partnership)政策についての考察は、わが国においても現在その重要性が広く認識されているものであり、貴重である。またイラク戦争に対するアメリカのとり組みを理解する上でも宗教からの視点の重要性の強調は傾聴に値するものといえる。
以上のように本書は、16年にも及ぶ堀内氏の滞米生活の経験をも十分に活かした業績であり、複雑なアメリカ社会についてのわれわれの理解を深める上で多くの新鮮な示唆を与える優れた著作である。また、私はW.E.Hudson著『民主主義の危機』を堀内氏との共訳で出版しており(東洋経済新報社、1996年)、その時の共同作業で同氏の優れた能力から強い感銘を受けている。堀内氏の今回の業績もその能力と真摯な研究姿勢を反映したものであり、本学教員の研究水準の高さを広く学外にも誇示し得るものであり、学長賞にふさわしいものと確信を持って推薦することができる。
ウエッブサイト:-------http://www.pdffind.com/pdf/5safcb/
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