第6-2編 共犯

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特定物

当事者が、取引において個性に着目している物

責めに帰すべき事由

故意、過失、または信義則上これと同視すべき事由








取立債務の特定時期

Q取立債務の場合、「給付に必要な行為の完了」(401Ⅱ)にはいかなる行為が必要か

A口頭の提供では足りず、目的物の分離/準備/通知が必要

  ①特定すると危険が移転する(534ⅠⅡ)ため、特定は危険の移転にふさわしいものでなければならない

瑕疵物の提供と特定

Q瑕疵ある物を提供した場合でも特定(401Ⅱ)といえるのか

A「給付に必要な行為の完了」とはいえず、特定は生じない

  ①債務の本旨に従った給付といえず、なすべき必要な行為をしたとはいえない

第三者による債権侵害と不法行為の成否

Q第三者による債権侵害が不法行為を構成しうるのか

※債権は債務者に対してのみ義務を課す相対的権利だが…

A709条のその他の要件をみたす限り、不法行為が成立する可能性がある

  ①債権といえども権利であり、権利の共通の性質として不可侵性を有している

  ②債権が相対的権利であることと、法的保護を受けるかどうかは別問題




履行補助者と責めに帰すべき事由

Q履行補助者の故意過失による場合も、債務者は債務不履行責任を負うのか

A信義則上、債務者の故意過失と同視すべき場合にあたり、責任を負う

①契約関係に入った者は信義則の支配する緊密な関係に立つ

②債務者は履行補助者の利用により活動範囲を拡大して利益を得ている(報償責任)

③債務者は履行補助者の管理支配権を有する

承諾転借人の過失

Q借家の承諾転借人の過失により借家が全焼した場合、借家人は家主に責任を負うか

A借家人は選任監督に過失がない限り債務不履行責任を負わない

  ①転借人は賃借人から独立して目的物を使用収益する(613)のであって、賃借人の履行補助者ではない

  ②賃借人と転借人の関係は、本人の許諾を得て復代理人を選任した場合(105)に類似する

拡大損害と債務不履行責任

Q売買目的物の瑕疵によって瑕疵以上の損害が発生した場合、債務不履行責任を追及できるのか

※本来の債務は給付義務に尽きるのでは…

A保護義務違反として、不完全な履行と債務者の帰責性が認められる限り、債務不履行責任を追及できる

  ①契約当事者は互いに信義則の支配する緊密な関係に立ち、給付にあたっては互いに相手方の生命、身体、財産に損害を与えないという保護義務が信義則上認められる

安全配慮義務の肯否

Q労働災害が生じた場合、使用者に契約責任を問うことはできるか

※雇用契約における中心的債務は賃金支払義務だが…

A安全配慮義務違反として、債務不履行責任を追及できる

  ①契約当事者は互いに信義則の支配する緊密な関係に立ち、給付にあたっては互いに相手方の生命、身体、財産に損害を与えないという付随的義務(安全配慮義務)が信義則上認められる

  ②雇用契約においては、身体と密接に関連する労務が給付対象となっており、使用者の指揮命令に服さねばならない被用者の安全性は使用者側に依存しているといえる

被用者による安全配慮義務違反

Q被害者の同僚が自動車運転上の注意義務違反により損害を与えた場合、使用者に責任を問えるか

※被用者が不法行為法上負う通常の注意義務違反だが…

A安全配慮義務違反として、債務不履行責任を追及できる

  ①安全配慮義務の内容は、使用者の支配領域で従事せざるを得ない被用者の安全確保という観点から判断すべき

  ②安全配慮義務は労務提供に必要不可欠のものであり、使用者は労務提供過程で生じうる危険を防止する義務を負うべきであるから、不法行為上の注意義務ともなる被用者の「通常の注意義務」も、安全配慮義務の履行過程に必要な注意義務といえる

  ③使用者の「通常の注意義務」が安全配慮義務の内容となることとの均衡

損害賠償の範囲

Q416条が定める損害賠償は具体的にいかなるものか

A1項は通常事情を基礎として相当因果関係内にある損害の賠償責任を認め、2項は当事者が予見可能な特別事情を基礎として相当因果関係内にある損害の賠償責任を認めたもの

  ①損害賠償制度の趣旨は当事者の公平を図ること

  ②事実的因果関係だけでは無限定に拡大するおそれがあるから、現実に生じた損害のうち、社会的にみて相当といえる因果関係の範囲に限定すべき

損害賠償額の算定時期

Q債務不履行により財産的損害が生じた場合、いつの時点の価格で賠償額を算定すべきか

A原則として本来の履行請求権が損害賠償請求権に転化したとき

  →履行不能=不能時/遅滞による解除=解除時/遅滞後の履行=履行時/履行請求と同時に賠償請求=口頭弁論終結時

Aその後の価格騰貴は特別事情(416Ⅱ)にあたる

  →予見可能であれば、中間最高価格=最高価格時/単純な価格騰貴=口頭弁論終結時

受領遅滞の法的性質

Q受領遅滞(413)により、債務者は契約解除や損害賠償を主張できるか

A履行遅延から生ずる不利益を債権者に負担させることを公平の観点から法が特別に定めた責任であり(法定責任説)、解除や損害賠償は認められないが、継続的取引など特別の取引においては、明示/黙示の約定や信義則により債権者の受領義務が認められることがある

  ①債権者は権利を有するのみで義務を負わないから、受領遅滞は権利の不行使であって義務の不履行ではない

  ②受領義務を一般的に債務として認めるのであれば、413条を規定する必要がない

債権者代位権と錯誤無効の主張

Q債務者が無資力の場合、債権者は債務者と第三者が行った錯誤無効を主張できるか

A表意者が錯誤無効を認めている場合には例外的に第三者たる債権者の錯誤主張が認められる

  ①錯誤無効は表意者保護のための制度であり、原則として第三者の無効主張は認められない

  ②無効主張するかは表意者の自由意思によるべきだが、意思表示の瑕疵を認めながら無効主張をせず、その不行使が責任財産を危殆化させる場合には、誠実な債務者とはいえず、無効主張の自由は制限されるべき

94条2項の第三者と債権者代位権

Q94条2項の第三者が譲渡人への登記請求権を被保全債権として、譲渡人の原所有者に対する登記請求権を代位行使した場合、原所有者は通謀虚偽表示により登記請求権の無効を主張できるか

※代位権の相手方は債務者に対する全ての抗弁を主張できるのが原則だが…

A原所有者の抗弁が善意の第三者に対抗できない事由であるときは、善意の代位債権者には対抗できず、無効を主張できない

  ①原所有者の虚偽表示無効の抗弁を認めると、善意の第三者に対抗できないにもかかわらず、第三者が登記を得る手段を失ってしまう

債権者代位権による直接履行請求権の可否

Q代位債権者は第三債務者に直接自己に金銭や動産の給付を求めることができるのか

※債権者代位権は責任財産の保全を目的としており、債務者への履行が原則だが…

A金銭や動産の引渡を求める場合には、例外的に債権者は直接自己への履行を請求できる

  ①金銭や動産の引渡を求める場合には、債務者がそれを受領しないと、債権者代位権の目的を達せられない

債権者代位権の転用の可否

Q金銭債権以外を被保全債権とする債権者代位権の行使は認められるか

※債権者代位権は本来、責任財産の保全が目的であり、金銭債権の保全が予定されているが…

A責任財産の保全を目的としない債権者代位権の転用を認めるだけの必要性と合理性がある場合には転用が認められ、この場合に債務者の無資力は要件とならない

  ①特定債権の保全のために他に手段がない場合には、債権者代位権の転用を認める必要がある

  ②423条は「債権」として金銭債権に限定しておらず、425条(総債権者のために効力を生ずる)のような規定がないから、転用を認めても明文に反するとはいえない

  ③債務者の財産管理権への不当な干渉は認められないから、干渉を許すだけの合理性を求めるべき

  ④責任財産の保全を目的とするものではない以上、債務者の資力は無関係

移転登記請求権の代位行使

Q不動産が甲乙丙に譲渡された場合、丙は乙への登記請求権を被保全債権として、乙の甲に対する登記請求権を代位行使できるか

A債務者の資力にかかわらず代位行使できる(なお丙が94条2項の第三者であれば、甲は甲乙取引の虚偽表示無効を主張できない)

  ①中間省略登記は三者の合意なくして認められず、債権者は代位行使なくして移転登記請求権を保全できず、代位行使の必要性がある

  ②債務者は債権者に移転登記の義務があり、第三債務者への権利行使なくしてそれを達成しえないのだから、当該債権者がそれを代位行使しても債務者の財産管理の不当な干渉とはいえず、代位行使に合理性が認められる

妨害排除請求権の代位行使

Q不法占拠が行われた場合、借家人が使用収益権を保全するため、賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権を行使できるか

A対抗力がなく賃借権に基づく妨害排除請求権が認められない場合には、代位行使できる

  ①賃借権に基づく妨害排除請求権が認められるには代位行使を認める必要はないが、固有の妨害排除請求権が認められない場合には、代位行使なくして使用収益権を保全できず、代位行使の必要性がある

  ②賃貸人は借家人に使用収益させる義務を負い、不法占拠者の妨害排除なくしてそれを達成しえないのだから、借家人がそれを代位行使しても債務者の財産管理の不当な干渉とはいえず、代位行使に合理性が認められる

建物買取請求権の代位行使

Q借地人が所有建物を賃貸して無断譲渡し、地主が無断譲渡を理由に借地契約を解除し、建物譲受人に建物収去土地明渡を求めたが、譲受人が建物買取請求権を行使しない場合、借家人がこれを代位行使できるのか

※判例は、家主が受ける利益は金銭債権に過ぎず建物所有権を失うこと不利益であるから、金銭債権によって賃借権が保全されるものではなく代位行使はできないとするが…

A代位行使できる

  ①代位行使により、地主は建物所有権とともに賃貸人たる地位を承継するので、対抗力ある借家人の賃借権を保全できる

  ②代位行使を認めても、建物譲受人は建物の代金債権を取得するから、財産管理への不当な干渉とはいえない

金銭債権を保全するための債権者代位権の転用

Q共同相続人の1人が登記手続の協力を拒み、買主が同時履行の抗弁権を主張して代金を支払わない場合、登記義務の履行を提供した他の相続人は代金債権を保全するために、買主の登記請求権を代位行使できるか

A代位行使できる

  ①被保全債権は金銭債権だが、目的は同時履行の抗弁権を消滅させるためであり、責任財産の保全のためになされるものではなから、無資力は要件とならない

  ②代位行使なくして代金債権を保全できず代位行使の必要性がある

  ③債務者は完全な登記を具備すれば債権者に代金を支払わなければならない地位にいる以上、代位行使が債務者の財産管理への不当な干渉とはいえず、代位行使に合理性が認められる

一部の債権者への弁済と債権者取消権

Q債務者が一部の債権者に抜け駆け的に弁済した場合、他の債権者は弁済を取消すことができるか

※債権者平等の原則は、破産や強制執行の場面に限られるが…

A客観的に詐害性は低く原則として詐害行為にならないが、共謀して他の債権者を害する意図をもってした場合など主観的に害意性が認められるときは詐害行為にあたる

  ①事態は強制執行を目前とした破局状態ものであり、弁済の自由といえども信義則上の制約を受ける

  ②詐害行為の成否は、計算上の資産の増減を基準とするのではなく、責任財産の保全という制度趣旨から、当該行為の主観的態様と客観的態様を総合的かつ相関的に判断して決すべき

不動産の時価相当額での売却と債権者取消権

Q債務者が所有不動産を時価相当額で売却した場合、詐害行為にあたるのか

A原則として詐害行為に該当するが、例外的に税金支払や日用品購入など有用の資にあてるためになされた場合は詐害行為にならない

  ①詐害行為の成否は、計算上の資産の増減を基準とするのではなく、責任財産の保全という制度趣旨から、当該行為の主観的態様と客観的態様を総合的かつ相関的に判断して決すべき

  ②不動産を費消しやすい金銭にかえることは、責任財産の実質的価値を減少させるものであり、客観的に詐害性が高い

担保権の設定と債権者取消権

Q債務者が一部の債権者のために所有の土地に抵当権を設定した場合、詐害行為にあたるのか

A原則として詐害行為に該当するが、債務者の生活上または営業上やむを得ない場合には詐害行為にならない

  ②詐害行為の成否は、計算上の資産の増減を基準とするのではなく、責任財産の保全という制度趣旨から、当該行為の主観的態様と客観的態様を総合的かつ相関的に判断して決すべき

  ②担保権の設定は、一般債権者を優先債権者に転化させ、優先弁済を受けうる額について共同担保が減少することとなり、客観的に詐害性が高い

債権者取消権の法的性質

Q債権者取消権を行使した場合、誰に何を請求できるのか

※421条は「取消」と規定しているに過ぎないが…

A債権者取消権は形成訴訟(詐害行為の取消)と給付訴訟(財産や賠償の請求)が合一したものであって、債権者は受益者または転得者を被告として原状回復や価格賠償を求めることができ、取消の効果はこれらの者に対する関係においてのみ生ずる(相対的効力)

  ①単なる形成権とすると、財産の取り戻しのために不当利得返還請求権の代位行使(423)が必要となり債権者保護に欠ける

  ②債権者取消権の行使は、債務者の財産管理の自由を制約し、受益者や転得者の取引の安全を制約するものであるから、責任財産保全の利益との合理的調和の観点から、取消の効果は責任財産保全に必要最小限度で認めれば足りる

Q転得者が目的物を所有している場合、受益者を相手に価格賠償を求めることができるか

A受益者を相手方とするか、転得者を相手方とするかは、債権者の自由である

  ①財産の回復義務は、債務者の財産を脱漏させた行為についての責任であり、転売することによって受益者が責任を免れることはできない

債権者取消権と他の債権者

Q債権者取消権を行使した債権者が事実上の優先弁済を受けた場合、他の債権者は分配請求できるのか

Aできない

  ①債権者取消権の目的は、詐害行為を取消して逸出した財産を取り戻すことによって総債権者の利益のために共同担保を保全することにあり、債権者間の平等満足を目的とするものではない

  ②取消債権者が自己に引渡しを求めることができるのは、取戻しを実行あらしめるためのやむを得ない措置であり、結果的に優先弁済を受けることとなっても、それは手続法上の手順の問題であって、債権者の分配請求権を認める理由にはならない

Q債権者取消権の相手方が債権者であった場合、案分額の支払を拒絶できるのか

Aできない

  ①債権者取消権の目的は、詐害行為を取消して逸出した財産を取り戻すことによって債権を保全することであって、債権者間の平等満足を目的とするものではない

  ②案文額の支払拒絶権を認めると、いち早く自己の債権につき弁済を受けた受益者を保護し、総債権者の利益を無視する

特定物債権保全のための債権者取消権

Q土地の二重譲渡の第一譲受人は、債権者が無資力であった場合、第二売買(代物弁済)を取消すことができるのか

※債権者取消権は責任財産保全のための制度であり、被保全債権は金銭債権に限られるが…

※取消が認められ、履行不能となった債権が履行可能となれば、特定物債権として権利行使できそうだが…

※177条の趣旨と矛盾することにもなりうるが…

A取消時(口頭弁論終結時)に履行不能による損害賠償債権に転化していれば、それを被保全債権として第二売買を取消すことができるが、受益者に直接移転登記請求をなすことも、取消後に債務者に対して移転登記請求をなすこともできない

  ①特定物債権も究極において損害賠償債権に変じうる以上、債務者の一般財産によって担保されねばならないのは金銭債権と同様

  ②取消により直接自己への不動産の引渡しを求めることは、総債権者の利益のために共同担保を保全するという債権者取消権の趣旨に反して許されない

  ③取消後であっても、債権者取消権の行使は損害賠償債権の保全のために認められたものである以上、取消債権者は金銭債権者として満足を受けるべきである

  ④取消債権者の所有権移転を認めるものではないから、177条の趣旨には反しない

連帯債務の共同相続

Q連帯債務を共同相続した場合、債権者は共同相続人の一人に全額を請求できるのか

※判例は金銭債務ゆえに当然に分割されるとするが…

A共同相続人全員が全部給付義務を承継し、負担部分につき相続分に応じて分割される(不分割承継説)

  ①分割承継では連帯債務の担保機能が弱められ、法律関係を複雑化する

  ②相続は債務者としての地位の承継である

  ③共同相続人には相続放棄の自由があり、また負担部分を超えた範囲で求償しうるから、保護に欠けることはない

原状回復義務と保証

Q主たる債務が解除された場合、保証人が原状回復義務(545Ⅰ)についても責任を負うのか

※解除が契約の遡及的消滅とすると、原状回復義務は一種の不当利得返還義務(704)であり、別個の債務になるが…

A特定物の売主(給付者)の保証人に限り、原状回復義務につき責任を負う

  ①保証債務は債権者と保証人の間の契約によって発生するものであり、契約自由の原則から、当事者の合理的意思解釈により決すべき

  ②特定物の売主(請負人)の保証の場合、代替的履行が不可能であることを前提とする以上、原状回復義務についても保証の意思があるといえる

  ③買主の保証の場合、代金支払の担保とみるのが一般であって、買主の受領物不返還を考慮しているとみることはできない

  ④一切の債務を保証し、相手方に損害を被らせない趣旨とみるのは、保証人の賠償責任を無限定に拡大する危険がある

保証人と相殺の抗弁

Q保証人は主債務者の反対債権による相殺をもって対抗できる(457Ⅱ)が、保証人の反対債権の処分権限を認めたものなのか

A単に保証人に弁済を拒絶する抗弁権を認めたに過ぎない

  ①第三者は他人の権利を処分できないのが民法の原則である

  ②457条2項の趣旨は、当事者間の求償関係の混乱を避ける点にある

  ②求償関係の混乱を回避するためには、主債務者が相殺するまでに保証人に弁済拒絶の抗弁権を認めれば十分

保証人と取消権の行使

Q保証人は主債務を取消すことができるのか

A自ら主債務の取消権を行使することはできないが、取消権が消滅するまで、保証債務の履行を拒絶できる一種の抗弁権が認められる

  ①120条は、私的自治の原則から、個人の財産管理の自由への干渉を防止するために取消権者を限定したものであり、保証人にこれを拡張すると、主債務者の追認権(122)を排除することとなり、妥当ではない

  ②主債務者が取消すのかどうか不確定の間、保証人は著しく不安定な立場におかれる

物上保証人と相殺の抗弁

Q物上保証人も保証人と同様に、主債務者の反対債権による相殺をもって対抗できるのか

A物上保証人も457条2項類推適用により、弁済拒絶の抗弁権として相殺を主張できる

  ①457条2項の趣旨は、当事者間の求償関係の混乱を避ける点にあり、弁済拒絶の抗弁権を解釈すべき

  ②物上保証人も主債務者に求償権を有する(372、351)以上、求償関係の混乱を避ける必要がある

  ③弁済拒絶の抗弁権にすぎないから、物上保証人にこれを認めても不都合はない

物上保証人の事前求償権

Q物上保証人は保証債務に関する規定に従い求償権を有する(372、351)が、事前求償権(460)まで認められるか

A事前求償権は認められない

  ①事前求償権は、委任契約に基づく事務処理費用の前払請求権(649)としての性格を有する

  ②物上保証の委託は、債務負担行為の委任ではなく、物権設定行為の委託にすぎず、担保権設定によって設定者の行為が完了するから、担保権実行/弁済をもって委任事務の処理とすることはできない

  ③物上保証人の求償権は条文上、債務弁済/担保権実行で所有権を失ったときに発生するから、351条の文言上も事後求償権しか認められていないことは明らか

債権譲渡禁止特約違反の効果

Q債権譲渡禁止特約に反して債権譲渡が行われた場合、譲渡自体が無効となるのか

A特約により債権は当然に譲渡性を失い、債権者の義務違反を生じるのみならず、譲渡契約自体が無効となり(物権的効果説)、債務者は特約の存在を主張立証すれば足り、善意/無重過失は譲受人が主張立証しなければならない

  ①契約自由の原則から当事者間で譲渡禁止の特約を定めうるのは当然であり、わざわざ466条2項を規定したのは、債権的効力以上の物権的効力であることを示すためである

  ②善意の第三者は466条2項によって保護されるので、取引の安全を害することはない

債権譲渡禁止特約と善意の第三者

Q466条2項但書で保護される善意の第三者は無過失まで必要なのか

A「善意」は無過失を要しないが、善意・無重過失を意味する

  ①債権は原則として譲渡が自由であり(466Ⅰ)、禁止特約(466Ⅱ)は例外である

  ②禁止特約の存在は外部から認識困難である以上、債権の自由譲渡性を信頼した第三者を保護すべきである

  ③取引行為においては重大な過失は悪意と同視できる

譲渡禁止特約付債権の譲渡後の債務者の承諾

Q譲渡禁止特約付の債権が悪意者に譲渡された後、債務者が悪意者に譲渡を承諾した場合、譲渡の効力はどうなるか

※譲渡禁止特約違反は譲渡契約自体の無効となり、無効な行為は追認できないが…

A116条類推適用により、譲渡時に遡って債権譲渡は有効となるが、承諾前に利害関係をもった第三者を害することはできない

  ①譲渡禁止特約は債務者保護のためであり、債務者が承諾する場合には無効とする必要がない

  ②譲渡禁止特約を付された債権者は、債権の処分権限を有しておらず、無権代理人の行為と類似のものとみることができる

  ③譲渡後、承諾前に第三者があらわれていた場合は、第三者を保護する必要がある

譲渡禁止特約付債権と転付命令

Q譲渡禁止特約につき悪意の者も、466条2項により差押・転付命令を得ることができないのか

※差押・転付命令は債権の強制移転であり、466条の「譲渡」と同視できるが…

A転付命令については466条2項の適用はなく、特約の存在につき善意悪意を問わず差押・転付命令により差押債権者に債権が移転する

  ①当事者間の合意により転付命令の及ばない財産を作りだすことは、強制執行秩序を乱すおそれがある

確定日付ある証書(467Ⅱ)の趣旨

Q確定日付ある証書を要求した467条2項と1項はどのような関係にあるのか

A467条1項は債務者を含めた第三者への対抗関係を定めた一般的規定であり、2項はその特別規定として1項を制限し、債務者以外の第三者に対する関係では1項の通知承諾のうえに特に確定日付を求めている

  ①1項は債務者の債権譲渡の有無についての認識を通じて、債権の帰属を債務者によって第三者に公示させるもの

  ②2項の確定日付ある証書は、旧債権者が債権を二重譲渡したうえで債務者と通謀し、通知や承諾の日時を遡らせるなどの作為によって債務者を通じた公示を信頼した第三者の権利が害することを可及的に防止するためにある

債権譲渡とともに確定日付ある通知の優劣

Q指名債権が二重譲渡され、いずれも確定日付ある通知承諾がなされた場合、いかに優劣を決するか

A確定日付ある通知が到達した日時/確定日付ある承諾の日時の先後によって優劣を決すべき

  ①467条1項は債務者の認識を通じて債権の帰属を第三者に公示させる趣旨であり、2項は譲渡人と債務者が通謀して譲渡の通知承諾日時を遡らせることを可及的に防止する趣旨

  ②確定日付の先後を基準とすると、いったん確定日付ある証書によって絶対的効力を生じたはずの債権譲渡が、その後到達した通知の確定日付が先行していたことによって覆されることとなり、法的安定性を害する

債権譲渡と確定日付ある通知の同時到達

Qともに確定日付ある通知が同時に債務者に到達した場合、両譲受人は債務者に履行請求できるか

Aいずれも債務者に請求できる

  ①対抗要件は債務者の認識を基準とする以上、両譲受人に優劣関係はない

  ②請求できないとすると、本来債務を負担する債務者がいずれに対しても弁済を免れることとなり不合理

Q両譲受人は全額を請求できるのか

Aいずれも全額請求が可能だが、いずれか一方が全額弁済を受けた場合は、債権は目的を達して消滅する

  ①分割債権とすると、非のない債務者に負担をかけることとなり不合理

Q弁済を受けられなかった譲受人は、弁済を受けた譲受人に分配請求できるのか

A弁済を受けた譲受人は清算義務を負い、債権額に応じた案分比例により分配しなければならない

  ①譲受人は対等な関係にある以上、公平の原則(債権者平等の原則)に照らし、清算義務を認めるべき

債権譲渡とともに確定日付ない通知の優劣

Q両譲受人がともに確定日付のない通知しか具備していない場合、各譲受人は債務者にいかなる請求ができるか

Aいずれも債務者に請求でき、債務者がいずれかに弁済すれば債権は消滅し、後は譲受人間の内部問題として処理する

  ①確定日付がない以上、第三者に対して対抗することはできない(467Ⅱ)

  ②債務者との関係では、確定日付がなくとも対抗要件として認められ(467Ⅰ)、債務者対抗要件は権利主張要件を意味する

債権の劣後譲受人への弁済と478条

Q債務者が二重譲渡の劣後譲受人に弁済した場合、478条(準占有者への弁済)として債務者を保護できないか

※478条を認めると対抗要件を定めた467条の趣旨を没却するが…

A債務者が善意無過失であれば、478条によって保護される

  ①債権者でない者に弁済した債務者を保護する478条と、債権帰属の優劣関係を決定する467条は別次元の問題

債権譲渡と通謀虚偽表示の抗弁

Q虚偽表示により発生した債権が、善意の第三者に譲渡された場合、第三者は債務者に請求できるか

※形式的に債務者は通知前に生じた事由として虚偽表示無効を第三者に主張できる(468Ⅱ)が…

※94条1項の抗弁に対して94条2項の再抗弁を認めるのは468条2項の趣旨を没却しないか…

A94条2項が適用され、第三者は債務者に請求できる

  ①468条2項の趣旨は、債権譲渡が債務者の関与なしに行えることから、債務者の利益を保護する点にある

  ②自ら虚偽の債務を負った債務者の帰責性は大きく、468条2項の保護に値しない

債権譲渡と解除の主張

Q債権譲渡後、債務者が旧債権者の債務不履行を理由に契約を解除し、債権消滅を譲受人に主張できるのか

※解除は通知前に生じた事由(468Ⅱ)といえるのか…

※債権譲受人は解除前に利害関係を有する第三者(545Ⅰ但)にあたるのではないか…

A通知前に将来の債務不履行の一般的可能性が生じていれば、通知前に生じた事由(468Ⅱ)として解除でき、債権譲受人は545条1項但書の第三者にあたらないので、解除による債権消滅を譲受人に主張できる

  ①468条2項の「譲渡人に対して生じた事由」は、債権譲渡に関与しえない債務者の利益を保護するという同条項の趣旨や、その文言から、抗弁事由そのものではなく、抗弁事由発生の基礎となる事由も含むと解される

  ②解除権発生の基礎とは、将来の債務不履行の一般的可能性を指す

  ③545条1項但書の第三者は、解除された契約から生じた法律効果を基礎として解除前に新たな利害関係を取得したものであり、解除によって消滅する債権の譲受人は含まれない

無留保承諾の法的性質

Q無留保承諾による債権譲渡の譲受人は善意無過失が必要なのか

※無留保承諾は新債務の承認なのか

A無留保承諾による抗弁の切断は、無留保承諾という観念の通知を信頼した譲受人の利益を保護して取引の安全を図るために法律が付与した法律上の効果

  ①467条1項の承諾は観念の通知であり、無留保承諾も「前条の承諾」(468Ⅰ)とある以上、観念の通知であるから、新債務承認の意思表示とみることはできない

  ②新債務の承認とみると譲渡人への弁済は譲渡人に対する債権の有効な弁済となるはずであり、468条1項後段を説明できない

A観念の通知であるから承諾の相手方は問題とならない

A抗弁事由の存在について悪意/有過失の譲受人は保護に値せず抗弁は切断されない

468条の「事由」

Q無留保承諾後に、旧債権者の債務不履行を理由に契約を解除し、債権消滅を譲受人に主張できるか

A468条1項の「事由」には2項の「事由」と同様、抗弁権発生の基礎となる事由も含まれ、譲受人が善意無過失であれば主張できない

  ①468条2項の「事由」と1項の「事由」を別異に扱う理由はない

無留保承諾と抵当権の復活――債務者所有の場合

Q弁済による債権消滅後に無留保承諾を行った場合、債務者所有の不動産に設定された抵当権は復活するのか

※抵当権は被担保債権の消滅で付従性により消滅しているはずだが…

A無留保承諾により債務者は譲渡人への弁済による債権消滅を主張できない結果、債務者は譲受人に抵当権の消滅も主張できず抵当権が復活する

  ①468条1項による抗弁の切断は、無留保承諾を信頼した譲受人の利益を保護して取引の安全を図るために法律が付与した法律上の効果である

  ②抵当権の随伴性から、譲受人は債権の取得によって抵当権も取得すると期待するのが通常

無留保承諾と抵当権の復活――物上保証人所有の場合

Q弁済による債権消滅後に無留保承諾を行った場合、物上保証人所有の不動産に設定された抵当権は復活するのか

A物上保証人は抵当権消滅を主張でき、抵当権は復活しない

  ①無留保承諾による抵当権の復活は、債務者と譲受人の関係において被担保債権消滅の抗弁が切断された結果、債務者と譲受人との関係において復活するのであって、譲受人と第三者との関係においては、第三者が当然に抵当権消滅を主張できなくなるわけではない

  ②無留保承諾に関与しない物上保証人が、抵当権消滅を主張する利益を奪われる理由はない

無留保承諾と抵当権の復活――後順位抵当権者の場合

Q弁済による債権消滅後に無留保承諾を行った場合、債務者所有の不動産に設定された抵当権は後順位者がいても復活するのか

A無留保承諾前の後順位抵当権者は抵当権消滅を主張できるが、無留保承諾後の後順位抵当権者は抵当権消滅を主張できず抵当権は復活する

  ①無留保承諾による抵当権の復活は、債務者と譲受人の関係において被担保債権消滅の抗弁が切断された結果、債務者と譲受人との関係において復活するのであって、譲受人と第三者との関係においては、第三者が当然に抵当権消滅を主張できなくなるわけではない

  ②無留保承諾前の後順位抵当権者は、先順位抵当権の消滅によって順位が上昇しているのであるから、抵当権消滅を主張する利益を奪われる理由はない

  ③無留保承諾後の後順位抵当権者は、復活後の抵当権の存在を前提にして利害関係を取得したものであるから、無留保承諾を信頼した譲受人の利益保護を優先すべきである

無留保承諾と抵当権の復活――登記の流用

Q無留保承諾により抵当権が復活した場合、無効に帰した登記を、復活した抵当権を公示するものとして流用できるか

※登記法の理想は、実体的な物権変動の過程を正確にあらわすことだが…

A現在の権利関係と合致していれば、登記の流用が認められる

  ①対抗要件として登記が要求されるのは、現在の権利関係を正確に公示して、第三者の取引の安全を害さないためであり、登記制度の本質は現在の権利関係の公示にある

無留保承諾と保証債務の復活

Q弁済による債権消滅後に無留保承諾を行った場合、債務者の保証人の保証債務も復活するのか

A復活しない

  ①468条1項による抗弁の切断は、無留保承諾を信頼した譲受人の利益を保護して取引の安全を図るために法律が付与した法律上の効果であるが、抗弁切断は債務者と譲受人の関係において相対的に捉えるべきであり、債務者の抗弁が切断されれば、当然に第三者の抗弁も切断されるわけではない

  ①無留保承諾に関与しない保証人が、主債務消滅を主張する利益を奪われる理由はない

  ②保証人の責任を可及的に軽減しようとする法の趣旨(448、452、453)

対抗要件と無留保承諾の関係

Q第一譲渡で確定日付ない通知があり債務者が弁済した後、第二譲渡がなされ確定日付ある通知があった場合、第二譲受人が優先するのか

A弁済によって債権が消滅した以上、第二譲受人は債務者に何ら請求できない

  ①467条は対抗要件を定めたものであり、468条のように債権自体の存在や内容を治癒するものではなく、債権が存在することが前提

Q第一譲渡で確定日付ない通知があり、第二譲渡が成立した後、債務者は第一譲受人に弁済し、第二譲受人がその後に確定日付ある通知を行った場合、第二譲受人が優先するのか

  ①債務者は第二譲渡が弁済前になされたか否かを知りえず、第二譲渡と弁済の先後によって結論が異なるのは妥当ではない

契約上の地位の移転

Q売買契約の売主/買主が、その地位を第三者に移転する場合、相手方当事者の承諾が必要か

A必要

  ①目的物引渡義務/代金支払義務の確実性が大きく変化し、相手方の権利義務に与える影響が大きい

Q賃貸借契約の賃貸人/賃借人が、その地位を第三者に移転する場合、相手方当事者の承諾が必要か

A賃貸人の場合は承諾は不要だが、賃借人の場合は必要

  ①賃貸人たる地位に伴う義務は、使用収益させる義務(601)や修繕義務(606)など目的物の所有者であれば誰でも履行できる非個性的なもの

  ②賃借人の地位移転の場合は、賃料債務の実現可能性や目的物の使用収益方法などの点で大きな変化がある

準占有者への弁済と詐称代理人

Q債権者の代理人と詐称した者に債務者が弁済した場合、債務者は478条により免責されるか

※無権代理人であり表見代理による保護が考えられるが…

A詐称代理人も債権の「準占有者」にあたり、478条の要件をみたせば債務者は保護される

  ①表見代理には本人の帰責性が必要だが、ともに権限なき者の受領にかかわらず、代理人と称したか債権者自身と称したかによって、債務者保護の要件が異なるのは均衡を失する

  ②契約締結と異なり、弁済の場面では債務者は弁済義務を負っている以上、詐称代理人の受領権限を確実に調査するよう要求するのは酷

準占有者への弁済と定期預金の期限前払戻

Q預金者と称する者が定期預金の期限前払戻を受けた場合、銀行は478条により免責されるか

※期限前払戻は単なる弁済ではなく、「解約」+「弁済」という性質を有し、銀行は解約に応じる義務はないが…

A定期預金の期限前払戻も「弁済」にあたり、478条の要件をみたせば銀行は保護される

  ①銀行は解約の申入れに応じるのが原則であり、期限前の払戻も実質的には満期後の弁済と異ならない

準占有者への弁済と預金担保貸付における相殺

Q銀行が出捐者甲、名義人乙の定期預金債権に質権を設定して乙に金銭を貸し付け、貸付満期に貸付債権と相殺する予約をした場合、銀行が実際に相殺を行えば478条により弁済は有効となるか

※相殺は「弁済」ではないが…

A預金をする意思で出捐した出捐者が預金者であるから、名義人は債権の準占有者となり、預金担保貸付における相殺も弁済と同視しうるので、貸付時に銀行が善意無過失であれば、478条類推適用により、銀行は保護される

  ①大量かつ定型的取引である定期預金契約において、銀行は預金者が誰であるか格別の利害を有さないのに対し、金員を支出している出捐者は保護されるべき利益を有するから、出捐者を預金者とすべき

  ②定期預金債権への担保設定、貸付、相殺予約、相殺という一連の行為は、経済的機能の点では定期預金債権の期限前払戻と同視でき、結果的に「弁済」と同視できる

  ③相殺は預金担保契約の実行であり、実質的にみれば担保設定時に自己の債権を処分したのと同視できるから、貸付時において銀行の判断は終了し、後の相殺は形式上の事務手続きにすぎない

相手方の受領拒絶意思が明確な場合の口頭の提供

Q債権者の受領拒絶の意思が極めて明確であり、口頭の提供すら無意味の場合、準備だけで足りるのか

A口頭の提供は不要

  ①あらかじめ受領を拒絶している場合でも口頭の提供を必要とするのは、債権者が翻意して受領する可能性があるため

  ②翻意の可能性がまったくなければ、口頭の提供を要求するのは無意味

Q債務者が無資力で、弁済しうる経済状態にない場合でも認められるのか

A債務者は債務不履行責任を負う

  ①口頭の提供が不要なのは、翻意の可能性のない債権者に協力を求めることが無意味だからであり、無資力の債務者はそもそも債権者に協力を求めうる地位にない

不法行為により生じた両債権の相殺

Q双方が同一の事由に基づく不法行為によって生じた損害賠償債権である場合でも、509条によって相殺は禁止されるのか

A509条は適用されず、相殺が認められる

  ①509条の趣旨は、報復的不法行為を防止するとともに、現実の弁済を必要とする被害者を救済する点にある

  ②双方的不法行為の場合は、報復的不法行為を誘発するとは考えられず、双方とも被害者である以上は現実の弁済の要請は双方に存するのであるから、かえって相殺を認める方が公平である

受働債権の差押と相殺

Q511条の反対解釈により受働債権の差押前に取得した債権であれば弁済期の前後を問わず相殺できるのか

※相殺は自働債権の取立てと受働債権の弁済を省略したものであり、弁済と等しいとすれば、第三債務者は弁済ができない(481Ⅰ)ため、相殺もできなくなりそうだが…

※差押債権者と相殺を主張する第三債務者は債権者同士であって、債権者平等の原則が適用されるべきだが…

A弁済期の先後を問わずに相殺できる(無制限説=判例)

  ①相殺は単なる簡易決済手段にとどまらず、取引社会において重要な担保的機能を果たしており、相殺制度によって保護される地位はできる限り尊重すべきである

  ②継続的な金融取引において弁済期の先後は偶発的なものにすぎず、担保機能としての相殺への期待は弁済期の先後を問わず保護すべき

  ③受働債権の弁済期が先の場合は遅滞が生じないと相殺できないが、遅滞には遅延賠償をもってすれば足りる

相殺予約の第三者効

Q受働債権の差押時点で、相殺の意思表示なく当然に相殺されたものとみなす特約(相殺予約)は第三者に対しても効力を有するか

A銀行取引など相殺予約に「公知性」が認められる場合には第三者効が認められる

  ①相殺予約は実質的に、代物弁済予約に類似する一種の担保権(非典型担保)である

  ②全面的に第三者効を与えると、債権者平等の原則に反して差押債権者や債権譲受人に著しい不利益を与える

  ③公示性のない担保権は、一般的にその存在が推知されるような「公知性」があって初めて第三者効が認められるべき

債権譲渡と相殺

Q債権譲渡の譲受人に対して、債務者は通知前に有していた旧債権者に対する債権と相殺することで対抗できるか

※相殺は自働債権の取立てと受働債権の弁済を省略したものであり、弁済と等しいとすれば、債務者は譲渡人に弁済しても譲渡人に対抗できないため、相殺もできなくなりそうだが…

※相殺を認めることは債権取引の安全を害することとなり、相殺への期待は譲渡禁止特約で保護できそうだが…

A通知前の反対債権の取得は「譲渡人に対して生じた事由」(466Ⅱ)といえ、債務者は弁済期の先後を問わず、相殺をもって対抗できる

  ①相殺は単なる債務の決済手段にとどまらず、取引社会において重要な担保的機能を果たしている

  ②一方当事者が関与しえない債権譲渡により、担保機能としての相殺への合理的期待を奪うのは妥当ではない

  ③譲渡禁止特約は善意・無重過失の譲受人に対抗できず、相殺の利益が確保されるとは限らない

順相殺と受働債権の転付債権者からの逆相殺

Q甲は預金債権を担保に銀行から貸付を受けた後、預金債権の転付命令を受けた債権者乙が、同じ銀行から受けた貸付金の返還債務と預金債権を相殺したが、銀行は期限の利益喪失約款により差押時に相殺適状に達したとして預金債権と甲への貸付債権を相殺した場合、どちらが優先するか

A乙の意思表示によって預金債権は消滅し、銀行の意思表示の時点では相殺適状にないため銀行は相殺することができない(意思表示先後説)

  ①相殺は意思表示を要件として発生する(506)ものであり、意思表示の時点で相殺適状にあることが必要

  ②実質的にも、相殺期待利益が競合した場合は、先に意思表示をして利益実現のために努力した者を保護すべき

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