平成18年 第1号

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石川県小児科医会会報

平成18年 第1号

桜の花の咲く学校





目 次 ページ

巻頭言

石川県小児科医会会長 兼松謙三・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

学術講演会報告

石川県小児科医会 春季例会 平成18年6月25日

①「小児心疾患の手術療法」 新井禎彦先生・・・・・・・・・・・・・(2)

②「小児気管支喘息治療における最近の話題」足立雄一先生・・・・・・・(3)

③「最近の入院症例から」 和田泰三先生・・・・・・・・・・・・・・・(5)

石川県小児科医会 秋季例会 平成18年11月12日

①「新しい小児起立性調節障害診断

・治療ガイドライン 梶原荘平先生・・(5)

②「外来でよくみる病気と気をつけなければならない事故」

大浜和憲先生・・(6)

過去 20年間の石川小児科医会会員による

石川県学校医研究発表会

における活動・・・・・・(9)

寄稿

「2007年の初夢」 小泉晶一・・・・・・・・・・・・・・・(11)

「死と背中合わせの日常」 佐藤 保・・・・・・・・・・・・(13)

「沖縄の旅」 浅井恭一・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(14)

「学校へ行こう」 斉藤建二・・・・・・・・・・・・・・・・(14)

「病気二題」 高橋謙太郎・・・・・・・・・・・・・・・・・

(16)

石川県小児科医会会員名簿 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(19)

石川県小児科医会会則 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・(21)

真剣に相手のいうことを聴く、相手のことを理解するというのは、

一方的

に話すよりも何倍もエネルギーを消費します。

大変に疲れることです。だからこそ、価値があるのです。

(大久保寛司)





巻頭言

石川県小児科医会会長

兼松謙三

戦後の悲惨な世情となったわが国で 、国民自らが考え着いた、我々にとって最も大切なことは、

『健康』という結論でした。以来国を挙げての検討の結果、生まれてより此の方、誰もが、どこにいても、

いつでも医療を受けられる初期の医療保険制度ができました 。後には世界で素晴らしい、誇るべき

国の事業と認められていますが 、年を経るにつれ、此の制度にも種々の不具合が認められ、その不

都合が各科に生じ 、社会の流れも伴い、いくたびか改定変更がなされています。

各科の医会ができたのも 、丁度この頃で、昭和 30 年代から 40 年代の前半であったと思われます。

改正の主なものは 、医学、医療の進歩の取り込みであることは言うまでもなく、小児科に於いては、

小児医療に従事する医師たちの 、幼い子どもに対する可愛さ或いは心くばりなどが大いに加味され

ていたものと理解されます 。斯くて現在の如き社会保険法規が運用されているところです。

さて 、国の社会保険制度、或いは社会経済の現状では、政府の政策と相入れないところが生じ、そ

れぞれの改革が求められています。

昨年より 、卒業医師の研修期間が 2 カ年に延長され 、このために病院医師の減少が全国的に生じ、

勤務医師の過労が話題の一つになり 、特に病院小児科では著明で、小児科を廃した病院も各地に

出現しています 。更にこの研修に関して、将来小児科を希望する若い医師達は、プライマリーケアも、

先進的医療も共に学べる小児科医療総合センターを望んでいることを知るにつけても 、北陸にも小

児医療の発展とそれを担当する医師の増加を計る小児病院の創設を地域一体となって提言すべき

と考えます。

小児医療のことに関心を持てば 、行政の単なる医療費の抑制など些細なことではなく、問題山積で、

医療関係者のみならず 、国全体のコンセンサスを得るべく話題を拡げることが必要と思います。

その二 、三をあげれば、少子高齢化と人口減少、医師の

都市集中 、患者の大病院指向、病院医師の過労と医師不

足(特に小児科で顕著)、更に近くでは、本年 4 月より発足

の老人保険法に伴って 、同じく小児保険法の制定など、話

題はつきません。

小児科医会発足の遠い昔の話から最近の話題の一端を

記しました。

(1)





学術講演会報告

《石川県小児科医会

春季例会》 平成18年6月25日 金沢都ホテル

①「小児心疾患の手術療法」〜金沢大学医学部附属病院

での手術〜

金沢大学医学部心臓血管外科

新井禎彦先生

近年先天性心疾患の外科治療は進歩をとげている 。かつては右室切開によるアプローチが主体

であったファロー四徴症の外科治療は 、現在では右室切開を最小限にとどめる経右房経肺動脈ア

プローチが行われている 。この方法により右室機能の温存が得られるとともに、遠隔期の生命予後に

影響する心室性不整脈の発生を抑える事が期待される 。また完全大血管転位症に対する動脈スイ

ッチ手術もMeeらが提唱した冠動脈移植におけるトラップドア法の応用により 、手術成績の安定が得

られ始めている 。これにより動脈スイッチ手術の成績が現在では先天性心疾患外科手術施設

の能力

のベンチマークとなりつつある 。また以前は救命が極めて稀であった左心低形成症候群の外科治療

も、佐野らの提唱する右室肺動脈シャントの導入により画期的な成績の改善を得ており乳児新生児

心臓移植の困難な本邦において多くの患者がフォンタン手術へと到達できるようになった 。このよう

に小児心疾患の外科治療は現在も進歩が続いている。

前述のMee, 佐野の両先人の下で小児心臓外科を習得した新井は、金沢大学において長年に

わたり空白のあった先天性心臓外科を赴任以来再開した。赴任以来、成人先天性心疾患 27例

(ASD 19例、VSD,IE 4例、バルサルバ洞動脈瘤破裂 3例、先天性僧帽弁閉鎖不全1例)小児先

天性心疾患 55例(ファロー四徴症 3例、完全型心内膜床欠損症4例、中間型心内膜床欠損症3

例、VSD 19例、VSD/PS 5例、PDA 5例、ASD 14例、その他2例)の手術を行い手術死亡0例

の良好な成績を得 、早期退院をその多数の症例で達成している。また小児科との協力による動脈管

開存症の治療成績と 、世界初となる青色ゴムマリ母斑症候群に合併した心室中隔欠損症の手術例

について報告した。

今後 、石川県、北陸の先天性心疾患の子供たちは金沢で治療する事を大きな目標に小児科医会の

皆様とともに努力していく事を改めて決意した。

(2)





②「小児管支喘息治療における最近の話題」

富山大学医学部小児科

足立雄一先生

はじめに

小児の慢性疾患のなかで喘息は最も罹患率が高く、

患児ならびに保護者のQOL (生活の質)に少なから

ず影響を与えているものと思われる 。我が国では、

1998 年に内科・小児科合同の、2000 年には小児科

独自のガイドラインが作られ 、喘息の診療レベルの向

上を目指している 。本稿では、JPGL2005 における変

更点 (図1)を中心に小児気管支喘息における最近の

話題について概説する。

急性発作への対応

1)

乳幼児においては 、テオフィリン使用中にけいれん

などの神経症状を発症する可能性が否定できないた

め、発作時のアミノフィリンの位置づけが図 2 に示すよ

うに変更され 、さらに使用にあたってのいくつかの注

意事項が付記された 。一方、JPGL 2005 では小発作

の段階からβ

2

刺激薬の反復吸入を積極的に勧める

こととなったが 、外来では単に吸入を繰り返すのでは

なく 、吸入が終わる毎に効果を確認し、吸入を繰り返

すのか 、あるいは次の治療へ進むべきなのかの判断をする必要がある。また、経口ステロイド薬の使

用もJPGL 2005 で初めて記載されたが、ステロイド薬の頻回あるいは持続的な全身投与は副作用を

来す恐れがあり 、ステロイド薬は漫然とは使用せず、必要よっては小児アレルギー専門医に紹介す

ることが望ましい 。さらに、乳幼児期の感冒に伴う喘鳴に対する経口ステロイドの効果について疑問

を示す報告もある2) 。一方、抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(抗LT薬)がウイルス感染後の喘鳴に効

果がある可能性も示されており3) 、今後ウイルス感染と喘息における抗LT薬の位置づけが明らかに

なることが期待される。

長期管理

長期管理薬の位置づけとして大きく変わった点は 、乳幼児におけるテオフィリン徐放製剤の使用に

いくつかの制限が加えられた一方 、抗LT薬と吸入ステロイドの位置づけが上に押し上げられたこと

である (図1)。抗LT薬と吸入ステロイドのいずかを第一選択薬とするかについては、同一患児に両

剤をクロスオーバーで投与して 、その有効性の差と患児背景を調べた研究がある4) 。その結果によれ

ば、吸入ステロイドの方が有効であったのは、血中好酸球数やIgE値が高い者や気道過敏性が亢進

している者であり 、一方抗LT薬のほうが効果的であったのは、より低年齢児であったり、発病からの

(3)





期間が短い者であった 。このことからも、ステロイドと抗LT薬の作用機序が異なる可能性が示唆され

る。また、以前から「One airway, One disease」という概念で、アレルギー性鼻炎と喘息の間には同じ

気道として密接な関係があると言われてきた 。最近、アレルギー性鼻炎を合併した喘息患者では吸

入ステロイドを 2倍量使用するよりも、通常量の吸入ステロイドに抗LT薬を併用した方が鼻症状の改

善と共に喘息のコントロールも良くなるとの報告があり5) 、喘息児の管理において鼻症状のコントロー

ルにも留意すべきであろう。

乳児喘息

6 )

ガイドラインでは 2歳未満を乳児喘息と定義される。

実際の日常診療では 、喘鳴を認めるこの年齢の児に

対して喘息の診断を下すことが躊躇され 、喘息性気

管支炎としてしばらく様子を見るということが多いよう

に思われる 。より早期からの介入を目指すのであれ

ば、より早期から喘息の診断を下すことが大切であり、

今回の改訂では 「気道感染の有無にかかわらず明ら

かな呼気性喘鳴を 3エピソード以上繰り返した場合に

(広義の)乳児喘息と診断する」という実際的な診断

の目安を提唱している 。一方、他疾患の見逃しや過剰治療の危険性もあるため、図 3 に示すようなア

プローチが求められる。

おわりに

小児気管支喘息治療 ・管理ガイドラインは 2000 年、2002 年、2005 年と改訂を重ねてきたが、未だ

完成されたものではない 。今後の改訂にあたっては、専門医以外に一般小児科医や保護者の意見

も取り入れて 、より良く、より使いやすいものにしていく必要があろう。

文献

1. 足立雄一.小児気管支喘息の急性発作.小児科臨床 59:1283-90;2006.

2. Oommen A, et al. Efficacy of a short course of parent

-initiated oral prednisolone for viral

wheeze in children aged 1

-5 years. Lancet 362:1433;2003.

3. Bisgaard H. A randomized trial of montelukast in respiratory syncytial virus postbronchiolitis.

Am J Respir Crit Ca

re Med 167:379;2003.

4. Szefler SJ, et al. Characterization of within-subject responses to fluticasone and montelukast in

childhood asthma. J Allergy Clin Immunol 115:233;2005.

5. Price DB, et al. Effect of montelukast on lung function in asthma patients with al

lergic rhinitis:

analysis from the COMPACT trial. Allergy 61:737;2006.

6. 足立雄一.乳児喘息の実態、診断、治療.日本小児アレルギー学会誌 19: 27-32、2006.

(4)





③「最近の入院症例から」

金沢大学小児科 和田泰三先生

最近経験した入院症例の中より 、免疫・アレルギーに関係した興味深い 2 症例を報告した。

(1)蛋白漏出性胃腸症

を呈した非即時型ミルクアレルギーの 1 例

症例は 、嘔吐、下痢、浮腫、低蛋白血症を主訴に紹介入院となった 7 ヵ月男児。脂肪便を認め、小

腸壁肥厚や便中免疫グロブリン高値などの検査所見より蛋白漏出性胃腸症と考えられた 。その原因

に関しては 、ミルク制限・カゼイン加水分解乳にて症状が速やかに改善したこと、便中EDN

(eosinophil-derived neurotoxin)の高値を認めたこと等よりミルクアレルギーの関与が疑われた。普通

ミルクを用いた負荷試験にて 、負荷翌日に下痢を認め、便中EDNが著明に上昇したことから、非即

時型ミルクアレルギーと確定診断した 。本例に関連して、様々な臨床像を呈した食物蛋白(ミルク)誘

発胃腸症を示し 、食物アレルギーのスペクトルについて概説した。さらに、診断や経過観察における

便中EDNや免疫グロブリン定量の有用性について報告した。

(2)創傷治癒遅延により白血球接着異常症 1 型の診断に至った 1 例

症例は 4ヵ月男児。日齢1 に白血球増多 、CRP上昇を認め新生児感染症として加療されている。そ

の後 、臍部に浸出液を繰り返し認め、2 ヵ月時に尿膜管臍瘻を指摘され 、切除術を受けた。しかし白

血球異常増多と創部の治癒遅延が続いたため 、白血球機能検査を実施したところ、白血球表面の

CD18、CD11b、CD11cの発現が全く認められず、白血球接着異常症 1 型と診断した。本例の経過を

新生児期から振り返り 、遺伝子診断や本症の病態について報告した。本症は稀な疾患であるが、持

続する白血球増多 、創傷治癒遅延、臍帯脱落遅延などを認めた場合には、念頭におくべき疾患で

あると考えられた。

《石川県小児科医会

秋季例会》 平成18年11月12日 金沢都ホテル

①「新しい小児起立性調節障害診断

・治療ガイドライン」

国立病院機構医王病院

梶原荘平先生

起立時の循環調節障害に基づく身体症状 、すなわち全身倦怠感、たちくらみやふらつき、失神発

作、頭痛、食欲不振、顔色不良、朝起き不良などの症状(OD症状)が、午前中に強く、午後からは

改善する場合に 、OD研究班の診断基準(旧OD診断基準)により、起立性調節障害(OD)と診断さ

れることが多い 。旧OD診断基準において、起立試験(シェロングテスト)は小症状に含まれているだ

けで、その陽性率も約 15%と低く、機能的障害であるODを的確に診断しうるツールとは言い難い。

(5)





そこで、



新起立試験 (OD症状を有する不登校児の 80%に陽性であり、ODの 50〜60%は不登校

を伴う)により 4サブタイプ分類を行う

②新起立試験の結果と日常生活状況により重症度分類を行い 、治療法を選択する

③からだ (循環生理機能)のみならず、こころ(心理社会的)の面からアプローチできるように心理社

会的関与についてチェックリストを用いて診断を行い 、治療に役立てるの 3 点を基本に、新しいOD

診断 ・治療ガイドラインの作成を行った。

新起立試験は、安静臥位 10 分後 、聴診法により、収縮期/拡張期血圧、脈拍数測定を行った後、

血圧計のカフに送気し収縮期血圧でコッヘル固定 、その後患者起立と同時にストップウオッチをスタ

ートさせ 、コロトコフ音が再び聞こえ始めた時点でストップウオッチを停止してウオッチの示した血圧

回復時間 (秒)を記録、直ちにコッヘルを外してエアーを解放し、起立後、1,3,5,7,10 分における

収縮期 /拡張期血圧、脈拍を測定し判定を行う。この新起立試験により起立直後性低血圧(INOH)、

体位性頻脈症候群 (POTS)、神経調節性失神、遷延性起立性低血圧の 4 サブタイプに分類したうえ

で、重症度分類を行うと共に診断チェックリスト(学校を休むと症状が軽減する;身体症状が再発・再

燃を繰り返す ;気にかかっていることを言われたりすると症状が増悪する;1 日のうちでも身体症状の

程度が変化する;身体的訴えが 2 つ以上にわたる ;日によって身体症状が次から次へと変化するの 6

項目のうち 4項目が週1〜2 回以上を認められるものを 、心理社会的要因の関与ありとする)で心理

社会的要因の関与についても検討し 、治療法を選択する。

例えば 、INOHで血圧が回復するタイプで午前中に症状が強く週 1〜2 回遅刻や学校を休むことが

みられる場合は 、中等症として塩酸ミドドリンやジヒドロエルゴタミンなどの薬物療法を行い、そのうえ

で心理社会的要因の関与がみられる場合には家族に対しODの発症機序を説明すると共に 「子ども

を信じて見守る 」ことの重要性を説明する。

薬物療法は中等症以上のODに対し行い 、軽症のODに対しては起立時にはゆっくり起立する;

日中はだるくてもできるだけ横にならない ;食事では塩分を 1 日 10〜12g、水分を 1.5 リットル摂取する

などの非薬物療法を中心に治療を行う 。重症例で心理社会的要因の強い症例に対しては、傾聴、

共感 、受容の姿勢を持って望むことが必要だが、1 カ月以上の長期にわたり不登校を合併している

症例や症状の改善がみられない症例は 、専門医への紹介が必要である。

(6)





②「小児外科でよくみる病気と気をつけなければならない事故」

石川県立中央病院

小児外科 大浜和憲先生

はじめに

小児外科でよくみる病気として 、急性虫垂炎・鼠径ヘルニア・停留精巣を取り上げる。気をつけな

ければならない事故としては 、のど突き事故とリチウム電池の誤飲について報告する。

(1)急性虫垂炎

(A)穿孔性虫垂炎に伴う膿瘍形成例に対するInterval Appendectomy(IA)

穿孔性虫垂炎に伴う膿瘍形成例に対する急性期の虫垂切除術は周囲腸管への炎症の波及によ

る浮腫や癒着のため容易ではない 。また術後に創感染、遺残膿瘍、腸閉塞などの合併症を併発す

ることも少なくない 。このような合併症が発症すれば入院期間が延長し、家族・患児への精神的・肉

体的負担は大きくなる。

私たちは 、このような負担を軽減するために、急性期には抗生剤(+/-穿刺排膿)による保存的

治療で炎症を沈静化して 、2~3 ヶ月後に待機的に虫垂切除術を行うIAを 2004 年 3 月から現在ま

で10 例に施行した。急性期治療として抗生剤投与のみが 7 例、抗生剤+穿刺排膿が 3 例であった。

投与した抗生剤はCAZ 、CMZ、CLDM、MEPMなどで、1 例はCAZとCLDM投与中に肝機能障害

を併発したためIAを断念し 、手術に踏み切った。残る 9 例は順調に経過している(うち 2 例は手術待

機中) 。

(B)鑑別疾患としての大網梗塞

大網梗塞は大網の血流障害によって引き起こされる 、急性腹症を呈する比較的まれな疾患であり、

小児期では特に頻度が少ない 。大網梗塞の症状は急性虫垂炎の症状と極めて類似しているが、前

者はself -limitingな疾患であり、後者は手術が必要であるため、両者を区別することは極めて重要で

ある。

症例:9 歳男児。肥満があり(身長 142.2cm、体重 65.7kg、BMI 33)、右側腹部痛を主訴に受診し

た。この間、発熱なく、嘔吐や下痢も認めず、食欲低下もなかった。マックバーネー点を含め右側腹

部に著明な圧痛を認めた 。腹部USで右側腹部肝臓の下方に紡錘形のややhyper-echoicな領域が

描出され 、腹部CTでは同部に大網の脂肪濃度が上昇していたため大網梗塞と診断し、保存的治

療を行った。

大網梗塞の原因としては捻転によるものが 90 %を占めており、そのほとんどが右大網動脈周辺で

ある 。またprimaryとsecondaryに分類されており、secondaryによるものには大網嚢腫、ヘルニア、

腫瘍や癒着によるものがある 。男女比は 2:1 で男児に多く、発生頻度は 600~800 例に 1 例、あるい

は200 例の虫垂切除術に 1 例の割合との報告もある 。肥満児に多いといわれているが、その理由は

大網の脂肪沈着が多いために捻転しやすく 、また相対的に血流が減少し梗塞を引き起こすと考えら

れている。

(7)





(2)鼠径ヘルニアのまれな合併症―腹壁膿瘍や臍瘻

腹壁膿瘍や臍瘻は鼠径ヘルニア手術後におこるまれな晩期合併症である 。私たちは手術に用い

たヘルニア嚢結紮糸周辺の感染が臍動脈索に沿って波及したと思われる腹壁膿瘍を経験し 、本邦

報告例 28例を集計した。

症例:6 歳女児。2歳時に左鼠径ヘルニア根治術を受けた。左下腹部に腫瘤を触知し、尿膜管腫

瘍が疑われ、近接臓器とともに腹壁腫瘍が摘出された。病理組織検査で腹壁膿瘍と診断された。

本邦報告例の検討では 、ヘルニア嚢高位結紮に用いられた縫合糸はほとんどが絹糸で、鼠径ヘ

ルニア手術から膿瘍形成までの期間は平均 3 年 10 ヵ月であった 。鼠径ヘルニア術後腹壁膿瘍や臍

瘻に対する治療の第一歩は切開排膿で 、過大手術を行わないことが大切である。このような合併症

を防ぐためにヘルニア嚢結紮糸には絹糸を用いず 、清潔操作に留意すべきである。

(3)停留精巣の最近の知見

(A)合併症としてはまず男性不妊が挙げられる。男性不妊の割合は精巣正常下降例で 7%、片側停

留精巣で 10%、両側停留精巣で 35 %と報告されており、胚細胞機能障害は精巣が高位であった期

間に関係している。続いて精巣腫瘍については 精巣胚細胞癌の発生率は精巣正常下降例で1

/100,000 であるのに対して、停留精巣例では 1/1,000~2,500 と 40 倍から 100 倍の発生率となって

いる 。精巣固定術を行っても、癌化のリスクを減じることはないと考えられている。また停留精巣の 90

~100 %に腹膜鞘状突起の開存がみられることから、ほとんどの症例に鼠径ヘルニアを発症するリス

クがあり 、ヘルニア嵌頓の危険についても必ず両親に説明しておくべきである。また正常な陰嚢内精

巣に比べて約 10倍精巣捻転を起こしやすいことも忘れてはならない。

(B)停留精巣の自然下降は、出生時体重や胎生週数にかかわりなく、ほとんどが生後 3 ヶ月までに

みられた 。また上記合併症の発生を考慮して、停留精巣の手術適期は生後 6 ヶ月から 1 歳前後であ

る。(C)移動精巣は注意深く経過をみる必要がある。

(D)思春期を迎えるまでの精巣の大きさは平均長径 20mm、短径 10 mmである。

(4)のど突き事故

好発年齢は1~3 歳で、自立歩行が始まり、転倒しやすく、また何でも口へ持っていく時期である。

原因としてはおもちゃ 、箸やスプーン、歯ブラシなどが多い。合併症としては膿瘍形成、内頸動脈閉

塞、気腫、縦隔炎や異物混入などが挙げられる。治療の必要のないものがほとんどであるが、数日

経ってから症状が出ることもある 。異物が咽頭壁を突き抜けている可能性がある場合には、入院の上

絶飲食とし輸液を行い 、炎症所見があれば強力な抗生剤を投与し、異物が体内に残っていないこと

も必ず確認しなければならない 。何よりも大切なのはこのような事故を予防することであり、ものを口

にくわえたまま歩かせないよう 、啓発していくべきである・

症例1:1 歳男児。歯ブラシを咥えたままソファーより転落し、4 日後に発熱 ・右後頸部腫脹(膿瘍)

を主訴に入院した 。抗生剤投与に反応せず、9 日後切開排膿した。症例 2:1 歳男児。竹の定規で誤

って咽頭を突き刺し 、下咽頭に裂傷を認め、CTで縦隔気腫を認めたため、直ちに入院となった。絶

(8)





飲食 、抗生剤(PIPC→MEPM)を開始した。内視鏡検査と造影検査で漏れがないことを確認して、

8日後から経口摂取を開始した。

(5)リチウム電池の誤飲

ボタン型アルカリ電池は 1980 年代より販売されるようになり 、1990 年代になると起電力が 3 Vとボタ

ン型アルカリ電池の倍もあるコイン型リチウム電池の流通が増加するようになった 。これはアルカリ電

池に比べて径が大きく 20mm以上あり、厚みが薄くなっているため、形体はコインと類似する。デジタ

ルカメラ 、テレビ、パソコンのリモコンなどに用いられている。リチウム電池の誤飲はたとえ短時間でも

食道潰瘍 、気管食道瘻などの重篤な合併症をきたすため早期に摘出し(バルーンカテーテルによる

摘出は禁 )、慎重な経過観察が必要である。

症例:1 歳女児。パソコン用リモコン内にあるコイン型電池を自分で取り出し、飲み込んだ。胸部レ

ントゲン写真で食道入口部付近にボタン電池の陰影を認めた 。症状は嗄声のみであった。5 時間後、

硬性鏡下にこの電池を摘出したが 、食道入口部粘膜にはまり込んでいて摘出に難渋した。その後、

絶飲食 、抗生剤(MEPM)静注開始した。内視鏡検査と造影検査で漏れがないことを確認して、8 日

後から経口摂取を開始した。

このような事故を防ぐため 、メーカーに対して、電池が容易に出てこないように蓋をねじで固定する

などの工夫をするように 、強く要望したい。

《過去 20年間の石川小児科医会会員による

石川県学校医研究発表会

における活動》

武藤一彦 心身症状態を併せもつ重症アトピー性皮膚疾患への対応について 昭和63年

田丸忠良 金沢市内学童心臓検診報告(第14報) 平成元年

村田祐一 てんかん児の学校生活 -学校及び校医へのアンケート結果について-

平成元年

高橋謙太郎 金沢市内学童心臓検診報告(第15報) 平成2年

西川二郎 特別講演「最近の登校拒否について」 平成3年

永田 巽 金沢市内学童心臓検診報告(第17報) 平成4年

長基 顕 ・高橋謙太郎 金沢市立中学生の貧血検査について 平成4年

渡辺礼二 金沢市内学童心臓検診報告(第18報) 平成5年

長基 顕 平成4年度の金沢市立中学生の血液検査結果 平成5年

岡本 力 金沢市内学童心臓検診報告(第19報) 平成6年

斉藤建二 松任市立小中学生の10年間にわたる貧血検査結果について 平成6年

(9)





小泉晶一 特別講演「学童生徒の不定愁訴:起立性調節障害とその関連疾患」

平成 6年

森田正人 金沢市内学童心臓検診報告(第20報) 平成7年

渡辺礼二 アンケート方式を加えた幼稚園定期健診の試み 平成7年

高橋謙太郎 平成6年度金沢市立中学校2年生血液検査結果 平成7年

鈴木祐吉 金沢市内学童心臓検診報告(第21報) 平成8年

浅井恭一 血液検査から診た中学生の健康 平成8年

斉藤建二 松任市立中学生の貧血等今年度検査結果について 平成9年

村田祐一 金沢市内学童心臓検診報告(第22報) 平成9年

斉藤建二 中学生貧血等検査における基準値改訂の試み 平成10年

横井 透 金沢市内学童心臓検診報告(第23報) 平成10年

鈴木祐吉

平成 9年度金沢市立中学校 2 年生血液検査結果 平成10年

太田和秀 特別講演「学校検尿の現状について」 平成10年

桜井秀明 七尾市立中学校2年生の最近十年間にわたる貧血検査結果 平成11年

入道秀樹 金沢市内学童心臓検診報告(平成11年度) 平成12年

清酒外文 七尾市医師会心臓検診過去十年間のまとめ 平成12年

関 秀俊 特別講演「小児の反復する痛み」 平成12年

横井 透 障害児における学校医と主治医の連携 平成13年

斉藤建二 5年間にわたる松任市立中学校生徒の貧血等血液検査結果について

平成 13年

高橋弘昭 特別講演「小児のいろいろな成長障害に対する臨床的アプローチ」

平成 14年

斉藤建二 松任市立中学校生徒の貧血等血液検査結果について 平成15年

横井 透 学校における医療的ケアについて 平成16年

横井 透 幼稚園での「困った子」への対応の試み 平成16年

横井 透 学校医へのアンケート結果 平成17年

斉藤建二 12年間にわたる松任市立小中学校児童生徒の心臓検診報告 平成17年

大野高史 平成17年度金沢市小中学生心臓検診結果報告 平成18年

斉藤建二 10年間にわたる白山市内4中学校生徒の貧血等血液検査結果について

平成 18年

横井 透 学校長へのアンケート結果 平成19年

武藤一彦 児童に「すこやか相談」を試みて 平成19年

(10)





《寄稿》

「2007年の初夢」 金沢大学小児科 小泉晶一

2007 年の新春早々に、石川県小児科医会会報

が発刊の運びと

なるとお聞きし 、お慶びを申し上げます。「医会」をたびたび開催し

熱心なディスカッションをしながら 、その記録をきちんと残さない手

はありません 。この点からも会報が今後継続して発行されることを

切に望みます。

さて 、私も立場上、医学部学生や研修医の教育と教室の研究に

係わるかたわら 、最近は小児科医不足、救急医療など小児(科)医

療体制のことが非常に気になっております 。少ない小児科医でもっ

て、地域の小児科診療をいかに効率良く実施するか、そのモデル案が小児科学会から提案され、中

核病院 、サテライト診療所などを含む案が厚生労働省から示されているところですが、さて具体的に

どうするか 、集約化が良いのか悪いのか、石川県の医療対策課も未だに思案投げ首の状態のようで

す。

根本的 、本質的な解決法は小児科医の数を増やすことです。小児科を志す若い医師はどういう医

療体制 、医療環境を望んでいるのでしょうか。小児科医を厚遇するしかないのでしょうか。医学部入

学生の地元枠を増やし 、奨学金をはずめば良いのでしょうか。それも一案でしょう。しかし、ここに小

児科医を増やす画期的妙案があります 。それは「子ども病院」構想です。大規模な子ども専門病院

で、質の高い小児医療が実施され、そこで多くの小児科医が良質なQOLを保ちながら生き生きと働

いている姿を若い研修医が見れば 、必ずや将来小児科専門医を目指す医師が増えると確信しま

す。

ちなみに医学部最終学年の 6 年生に聞くと、約 10 %は将来小児科医になってもよいと考えていま

す。金沢大学では毎年 10 人程度です 。可愛い子供達のために、日本の将来を担う子供達のために

働きたいと思う学生は多いのです 。そして彼ら彼女らは都会の"小児専門病院"にあこがれています。

したがって石川県では卒後研修を希望しないし 、東京などへ出た人は帰ってこない。彼らにその理

由を聞くと 、地元に魅力的な子ども専門の病院が無いといいます。働く場所が無いといいます。子ど

も病院構想は地域の小児科医を増やすための 、根本的、本質的な解決法と思います。そのような環

境を北陸ではまず金沢市に創設したいと思います。

私の提案ですが 、金沢市には開業医を含めて一番小児科医が多く存在しますので、ここの小児診

療体制を先ずしっかり確立することが肝要かと思います 。石川県立中央病院と金沢市立病院と金沢

医療センターの小児科を集約化して 、「子ども病院」を北陸にも一つ創設してはどうでしょうか。そこ

に大手町の医師会夜間急病診療所を取り込んで 、一次、二次、三次

すべてを診る 「小児救命救急センター」も併設するのです。大手町夜間急病診療所の内科も取り込

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んでもかまいません。

子ども病院の設置場所は 、石川県立中央病院の小児科を増設拡大するか、または県立中央病院

と金沢市立病院が合併して 、金沢市立病院の半分くらいを「子ども病院」とするなど愚考します。中

小の病院小児科の集約化はどうしても必要です 。石川県のみならず、富山県、福井県を巻き込んで、

人口 300 万を対象とすれば、行政のバックアップと一般からの寄付金を集めて経営的にも成り立つ

のではないでしょうか 。少子化対策が叫ばれている折、県民の理解も得られるのではないでしょうか。

金沢大学病院に卒業生が残らない理由は 、大学では初期救急が勉強できないというものです。も

し金沢市立病院が 「子ども病院・小児救命救急センター」となれば、学生や研修医に対する小児科

の臨床実習はすべてそこで行います 。一次、二次、三次すべての疾患を体験出来ます。テレビの

「ER」のような光景を若い医学生や研修医は夢見ているのです。そこでの一次診察は、現在大手町

の医師会夜間急病診療所で実施しているように 、開業医の先生方が総出で診ます。入院患者は勤

務医が総出でバックアップします 。すべての開業の先生方も月に 2 回ぐらいは時間外休日診療が廻

ってくるでしょう 。常勤医は十数人は必要でしょうが、集約化すればできないことはありません。フレッ

クスタイム制を取れば 、女性医師にも好都合でしょう。

石川県立病院の周産母子センターを取り込み 、各種障害児のリハビリセンターを設置すれば、す

ばらしい小児医療の中核的センターとなるでしょう 。若い小児科医が集まれば、従来の大学医局が

行っていた 、輪島、珠洲や加賀のサテライト病院・診療所への医師紹介業務もこの子ども病院が中

核となって行うことになりましょう。

そうすれば一方で大学は本来の先進的 、学際的診療と研究、そして大学院生の教育と研究に専

念できるのではないでしょうか 。大学と子ども病院の役割分担が明確になり、相互の交流が必然的に

活発になるでしょう 。ひょっとしたら、開業にそろそろ疲れた、飽きた先生方が勤務医に戻ってこられ

るかもしれません。

いま 、患者さんのQOLを向上させる医療が求められています。当然ですが、一方で、われわれ小

児科医のQOLも尊重されなければなりません 。若い小児科希望者は公私に余裕のある制度を望ん

でいます 。その点からも、彼ら彼女らの希望を載せて、北陸にも一つ、是非金沢に「子ども病院・小児

救命救急センター 」を創設することを提言します。

高齢者医療が焦眉の急ではありますが 、時は経過し、小児医療が真剣に議論される時期がいよい

よきました 。余裕のある完備されたシステムの小児医療、勤務医、開業医を問わず全員参加の小児

医療を社会が期待しています。

以上のことは昨年末の石川県小児 ・周産期医療対策部会でも申し述べました。私見を叩き台に、

石川県の近未来の小児診療体制について検討会が立ち上がることを希望します 。私の初夢が正夢

になることを夢見ています。

(12)





「死と背中合わせの日常」 石川整肢学園 佐藤 保

昨年末 、身近で直接死につながる出来事を、立て続けに二つ経験した。いずれも突発した出来事

で予想もしていなかっただけに 、起こってからその結果に唖然としている。

ひとつは同僚の医師が朝 、自転車通勤の途上で道端に倒れているところを通行人に発見され、警

察へ通報があり 、パトカーで救急病院へ運ばれた。病院から勤務先へ「死亡された」との連絡が入っ

たので 、急遽、関係施設に通知したところ、その後「ICUに入院され、目下治療中」との連絡が入って、

最初の早とちりを取り消すのに冷や汗をかいた。

死亡が誤報であったことは幸いであったが 、いまだに事故発生当時の状況がわからず、事故なの

か内因性の病気であったのか 、その原因が不明のままである。日頃のご本人の意思を慮り、延命治

療は行わない方針を貫かれて 、幸いなことに今は死線を越え、快方に向かっておられる。

二つ目は入園児が夜間 、痙攣発作をおこし、当直医から「マニュアルどおりに対処したが、呼吸不

全が持続している 」と緊急電話が入った。すぐに大病院へ搬送するように指示し、タクシーを呼んで

園に駆けつける 。その途上、病院へ向かう救急車とすれ違い、まずは一安心した。園についてから

家族に緊急移送の連絡をいれ 、すぐにどなたか病院へ行って下さるようお願いする。

同行した当直医と看護師長からの情報で 、事態が容易ならざることを知る。ICUで気管内挿管、輸

液、昇圧剤、ステロイドなどを投与するも効果なく、その日の午後、「亡くなられた」との連絡がはいっ

た。痙攣が起こってから僅か半日の経過で、いったい何が起こったのか? 「最も可能性が高いのは急

性脳症 」と考えたが、主治医も同じ見解であった。医療関係者として葬儀に参列し、ご家族や友人の

悲しみの只中で 、針の莚に座す心地であった。天寿を全うして亡くなられた方の葬儀は、失礼ながら

一種の安堵感がただよっているが 、一家の大黒柱や愛する子供が急死された場合は、式場の空気

がずっしりと重く肩に感じられる 。その死が家族に受け入れられるまでには、歳月の経過を待たねぱ

ならない 。「二人称の死」が「三人称の死」と区別される由縁である。

年明けに入院時検査の報告をいただき 、思いもよらなかった「播種性血管内凝固 (disseminated

intravascu1ar coagu1ation;DIC) 」が起こって肝、腎、脳、消化管の機能障害、出血をきたしたことが

判明した 。DICの基礎疾患がなんであったかは不明であるが、少なくとも敗血症は否定された。この

病態の下では 、急速に死の転帰をとってもやむを得ない。「障害児でもそう簡単には死なない」と思

い始めた矢先であったので 、この結果に強いショックを受けた。常識の非常識とでもいうか、「人体で

は乏しい経験からは思いもつかない事態がおこる 」という苦い教訓を得た。年末に出会った二つの出

来事から 、「人の死は背後より迫りきて、突然に襲いかかる (徒然草、155 段) 」との認識を新たにした

次第である。

(13)





「沖縄の旅」 浅井小児科医院 浅井恭一

昨年(平成 18年)10月下旬、全医連の会議に出席のため 2 泊 3 日で沖縄へでかけました。

会議の中で特別講演 「インフルエンザウイルス感染症の歴史と未来」と題して、琉球大学第一内科

教授藤田治郎先生のお話を拝聴しました。

そのなかで 、インフルエンザに合併する肺炎に原発性インフルエンザ肺炎が現在でも時々みられ、

場合によっては致死的になることがあるということ ;沖縄は夏でもインフルエンザが流行し、大学病院

の病棟でも職員からの感染で 、入院患者に大流行しかかったが、タミフルの予防内服で鎮静するこ

とが出来たということ:この 2 点を特に興味深く聴いてきました。

懇親会では琉球舞踊 (紅型衣装をまとい、頭の方にはハスの花をかたどった花笠をかぶり、手に四

つ竹を持って踊る )が綺麗なのと、泡盛(アルコール度 50 度以上 )の強さに感激するやら、吃驚する

やらでした。

会議の翌日は観光で世界遺産登録の首里城公園 ―泡盛工場―沖縄美ら海水族館とまわりました。

水族館で 3頭のサメが餌をひとつも逃すまいと飛びつく様が圧巻でした。

2泊目のリゾートホテルはどこまでも青くて綺麗な海が眼前に広がるとても素晴らしいホテルでした。

この海の青さを見ることが出来ただけでも 、沖縄へ来たかいがありました。

万座毛 ―沖縄海岸国定公園―琉球村―東南植物楽園とまわり、牛にサトウキビをひかせて黒糖を

つくる素朴な風景 、ブーゲンビリアの花のあざやかさ、大きなハブの背中を、願い事がかなうといわれ

て、おっかな吃驚で触ったこと等思い出されます。

しかしびっくりしたのは、10 月のおわりでも、連日気温 30℃をこす猛暑であったことです。

沖縄は年間 500万人の観光客が訪れるとのことですが道路が狭いですね。

それと魚はやはり北陸ですね。

小松空港から片道2時間半 案外近くて、初めてでしたから、とても楽しい旅でした。

話は全く変わりますが≪わが医院の外来から≫

昨年は感染性胃腸炎が多い年でしたが 、私は幼児のアッペ 3 例を経験しました。

そのうち 2例は穿孔した例でした。幼児の腹痛はアッペに留意してください。

「学校へ行こう」 斉藤小児科医院 斉藤建二

学校医の立場から今一度学校保健を考えてみたいと思います 。学校医制度の歴史はすでに一世

紀を超えていますが 、学校医を取り巻く環境は社会経済、衛生状態、疾病構造などの変化で大きく

変わってきたことは言うまでもありません。

かつては学校衛生の中心は学校医であるとして 、重んじられていましたが、栄養状態の改善、感染

症の激減 、さらに就学前の疾病管理の充実等で、学校で新たに重大な疾患を発見することも少なく

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なり 、勧告することもほとんどなくなり、定期の健診に行っているだけでは単なる健康診断機関になっ

てしまったような感すらあるようです。

一方 、ますます子どもたちや教師のこころの問題が大きくなり、この方面への貢献が望まれますが、

身体疾患に比べてなかなか一筋縄ではいかず 、多大な時間とエネルギーを必要とし、大きな関心を

持っていても簡単に取りかかれないのが現状です 。学校側からは数少ないスクールカウンセラーに

並んで対応に参画できれば大いに歓迎されることと思われますが 、この方面については学校側も医

師の多忙な毎日の診療を配慮され学校医に遠慮されているのが現状のようです。

しかし早期な対応という観点からすれば 、こころの問題についてでは私たち小児科医は日常診療

において大きな役割を果たしています 。問題行動に発展する前の兆候で来院した、例えば心気症の

段階などでは対応を間違えないようにしなければなりませんが

、学校医の立場とは別に日常の診療

の場で 、ほとんど学校側にはわからない形で、かなり子どもたちの心の問題に対応していることも事

実です。

また 、児童生徒の健康管理の中心は医師をおいて他にはないのであって、学校医の職務はと言

いますと 、学校保健計画、学校環境衛生、健康診断、健康相談、疾病の予防、伝染病の予防、救急

処置 、就学時健康診断、職員健康診断、その他保健管理指導などが省令で定められています。

変化の激しい時代に生きていくために子どもたちに 「生きる力」を育む必要性が言われ学校保健

にもこれまでの 「健康管理」の方向から、自ら健康を保持していく習慣を育成する「健康教育」の方向

へとシフトされる必要性が出てきています 。そして肥満や生活習慣病の若年化、増加するアトピー性

疾患 、不登校をはじめとするこころの問題など山積する現場が存在しています。

とりあえず学校へ行くことから始めなければならない 。まず学校単位にいわゆる「保健委員会」なる

ものを年に一回以上の完全実施を働きかけ 、助言指導を積極的に行うことを慣例としていけたらと思

います 。校医、学校薬剤師、歯科医、耳鼻科医、眼科医、校長、教頭、保健関係教諭、養教、PTA

役員他が一同に会し学校保健について懇談する機会を持つことは極めて意義あることであり 、同時

に学校独自の安全計画の立案に寄与できることになると思われます。

学校医は教育関係者と手を携えてともに子どもたちの育成に参

画しようという気持ちが 、大切と思われます。

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「病気二題」 高橋小児科医院 高橋謙太郎

中学生の時虫垂炎を患って以来 、病気らしい病気も知らず 60 代も終盤を迎え 、健康だけが取り柄

と自負していた私でしたが 、昨年の夏 3 ヶ月の間に 2 回も病変に見舞われました。

結果良ければ全て良しですが 、当初は私にとって青天の霹靂でした。

その1 「めまい」

平成 18年7月25日(火曜日)

午前の診療前に目薬をさそうと天井をみると 、ぐらっぐらっぐらっとめまい発作に襲われる。2~3 度試

みるが転倒しそうになるので点眼を中止する 。日医雑誌「症状からみた救急処置」をみるとどうも「頭

位めまい」のようである。

午前の診療を普通に終え 、近所の耳鼻咽喉科を受診する。ゴーグルみたいものを装着して検査する

と水平眼振が頻発している 。頭痛、耳鳴り、難聴は一切なし。さっそくイノリンの点滴静注を開始し 30

分くらいで終了し少し楽になる。

石丸幹夫先生の診断は 「中枢性の小脳疾患は考えにくい。おそらくウイルスによる前庭神経炎か発

作性頭位めまいであろう 」といわれる。イノリンの通院点滴と内服薬でめまいは日毎に改善し、1 週間

後には眼振は完全に消失した 。聴力検査を 2 回行ったが異常はなかった 。大好きな音楽鑑賞も続け

られる。神様、仏様に感謝!!

その2 「血尿」

9月 1日(金曜日)

午後の診療を終えて 6時半頃トイレで尿が赤っぽいのに気付く。テープで調べると潜血反応強陽

性。

30 年前の事を思い出す。医局対抗野球大会で皮膚科との決勝戦で奥田則彦先生とバッテリーを組

んでキャッチャーで出場していた私は同点の 7 回の裏ホームスチールされ下腹部をおもいっきり蹴ら

れサヨナラ負けを喫した 。案の定翌日からグレープジュースの様な血尿で泌尿器科の黒田教授のお

世話になった(外傷性血尿)。

今回の血尿は紅茶色であるが腹痛や排尿時痛は一切なく 、本で調べると不安がむらむらと広がった。

無症候性血尿 。家族に話すと心配すると思いだんまり決め込む。食欲なし。

9月 2日(土曜日)

痛みでもあれば石の可能性が高いのに血尿以外は自覚症状なく不安が募り食欲なし。

午後 4時診療を終えてこのままではまずいと思い妻に打ちあける。健康管理してもらっている山崎幹

雄先生に電話し県立中央病院の受診を薦められる 。妹の正木夫婦に電話したらとにかくすぐに病院

へ行くようにという指示 、県立中央病院の小児科に電話したら当直の堀田成紀先生が出られ救急外

来で事情を話せばCTスキャンも出来るということで午後 6 時妻の運転で県中へ 。悪性のものかもし

れないと考えるととても運転する気になれない。

救急外来内科当直の濱口先生には堀田先生から既に事情を話してあったらしく手際よい指示

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で検尿 、採血、CTスキャンと進む。CTの時は当直で忙しいにもかかわらず堀田先生は放射線部ま

で診に来てくださり気持ちがだいぶ休まる。

検査終了したが内心はドキドキである。

尿所見:肉眼的血尿以外異常

なし 。生化学的血液検査:異常なし。胸部および腹部単純X-P:異

常所見なし 。腎CTスキャン:異常所見なし。

濱口先生の意見 :腎の悪性腫瘍は考えにくい。尿路の結石が最も考えられる。近日中に泌尿器科を

受診するよう指示あり。

9月 3日(日曜日)

今日は大手町の夜間急病診療所の出向日 、午後 7 時から午前 0 時まで普通に診療をこなす。

9月 4日(月曜日)

夜間検尿すると潜血反応が何故か陰性化している。

9月 5日(火曜日)

午前 10 時まで診療し、留守を従業員にまかせて妻の運転で県中へ、10 時 30 分泌尿器科外来受付。

検尿 、IVP(経静脈腎盂撮影)終了。

1時 10分診察室に呼ばれる。診察医は中嶋孝夫先生。

一般尿検査 :異常なし(血尿認めず)。IVP:異常なし。

先生曰く、3 日前救急外来で撮ったCTスキャンの左下腹部に写っている白い影は尿管から少しず

れているから石ではない 。膀胱内の白い影も石ではない。申し訳ないがこれまでの検査結果からで

は原因不明といわざるを得ない強いて云えば特発性血尿か写らない結石であろう 。念のため尿中の

細胞診断だけしておきます 。再び血尿が出れば再受診してください。その後毎日検尿するが異常は

みられない。

9月 16日(土曜日)

台風 13号九州に接近。明日の九頭龍川鮎釣りは中止で気が楽になり冷酒の飲みすぎと食べすぎか

深夜に大量嘔吐 。更に左下腹部の鈍痛(左下腹部にすりこぎを押し当てられている感じ)。追い打ち

かける様に再び血尿発現 。腹痛があるのに便意が全く無いのでもしかしたらイレウスを考え妻に浣腸

してもらう 。少し便が出たが血便なし。どうしても嘔気治まらずプリンペランの静脈注射してもらう。朝

方うつらうつら眠る。

9月 17日(日曜日)

食欲全くなし 。嘔気と鈍痛は連動しているみたい。あんなに好きなマツタケご飯が一口も入らない。

朝から氷水だけ 。夕食はマツタケご飯を少し食べる。夜の 9 時ごろ左下腹部の鈍痛が抜けるように楽

になる 。ところが今度は外尿道口の先が詰まった様な痛みに変わり排尿痛出現。残尿感が著しい。

尿が漏れるような気がして横になっておれない 。この時石が移動していると直感し、夜の 10 時頃娘達

に自動販売機で緑茶を買ってきてもらう 。いきなり一本をがぶ飲みする。10 時 50 分ごろ利尿がつい

て下腹部に力をいれて排尿する 。今一度腹部

を凹まして努力して終末尿を出すと 、外尿道口からヒヨッコリと棒状の物が顔を出す。指で

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つまんで引き抜くと瞬間ヒヤッとして全身の力が抜ける様に楽になる 。珊瑚のような硬くて黄褐色を呈

している 。スライドグラスに載せて、まだテレビを見ていた娘達に見せると珍しそうに眺めていた。それ

からは朝まで完全熟睡。

9月 18日(月曜日)敬老の日

朝から快調である 。検尿:外観は薄黄色、潜血反応+1、自覚症状皆無。

3時頃から家族で鳥越の蕎麦の花を見にドライブ 。もちろん私の運転で。

途中鶴来の白山さんへ寄り 、無事石排出のお礼参り。帰りは水淵にある親父の句碑「鮎釣れば思ふ

ことなし水悠々」をみて帰る。

9月 20日(水曜日)

尿の潜血反応 :完全に陰性化する。

以上 、思いがけず短期間に患者体験を 2 度も経験しました 。患者はそれぞれの不安を抱えながら医

療を信頼し 、医療従事者の一挙手一投足に過敏になっていることを実感しました。

やらなければならないことに 身を置きながら

心はいつも すきなことを 追いかける

(18)





石川県小児科医会会則

1.名称

本会は石川県小児科医会と称する。

2.目的

本会は会員相互の親睦 、小児臨床医学の研鑚および小児科医業の

向上を目的とする。

3.会員

イ) 会員は原則として石川県内に在住する小児科医師にして、石川

県医師会会員

であるものとする。

ロ)新入会は会員の推薦により、常会で承認を受けるものとする。

ハ)退会は役員に申し出て、常会で承認を受けるものとする。

4 .

事業

本会は目的達成のために次の事業を行なう。

イ)常会を年 2回開催する。議題は会員の提案により、役員がこれを定める。

ロ) 必要に応じ、情報を交換し渉外活動を行い、臨時集会を開催する。

ハ)本会は日本小児科医会に加入し、その事業に協力する。

ニ)慶弔関係

については役員に一任する。

5.運営

本会を円滑に運営するため 、つぎの役員を常会で選出する。任期は

いずれも2年とするが、再任を妨げない。

イ)会 長

1名

会を代表する。

ロ)理 事

若干名 会長を補佐し、実務を担当する。

ハ)会 計

1名

会計を担当する。

ニ)監 査 1名

会計を監査する。

6.会計

イ)年会費は、開業会員 8,000円とする。(平成18年度より)

勤務医会員

3,000

円とする。

ロ)懇親会費は別に徴収する。

ハ)会計年度は 4月 1日〜翌年の 3 月 31 日までとする。

ニ)会計事務は(社)白山ののいち医師会事務局の担当者が行なう。

7.雑則

イ)

会則の変更は総会の承認を経るものとする。

ロ)所は石川県白山市倉光七丁目 122 番地 (社)白山ののいち医師会

に置く。

(19)





昭和47年 5月5日設立

昭和54年 2月15日改正

昭和56年 4月18日改正

昭和59年 4月21日改正

昭和 59年10月28日改正

平成13年 6月24日改正

平成18年 6月25日改正

平成 18年11月12日改正

編集委員

斉藤建二

谷内江昭宏

西田直巳

武藤一彦

石川県小児科医会会報

平成18年度 第1号

平成 19年6月1日発行

発行 石川県小児科医会

事務局

白山ののいち医師会内

〒924-0865 白山市倉光七丁目122

TEL(076)275-0795

FAX

(076)276-8205

メールアドレス jimu@imcc-med.com

表紙(表と裏)とカット写真

校庭に桜の花は付き物である 。桜の花を見上げながら、新入生が手を振って入学式に臨む姿はいつ見ても

すがすがしい 。校庭の花々も在校生と同時に歓迎の挨拶を贈っているようだ。

(白山市立旭丘小にて 19.4.14. )

(20)

ウエッブサイト:-------http://www.pdffind.com/pdf/16cech/

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时间(じかん)を発表した:2010-01-07   ファイルサイズ:0   フォーマット:pdf ファイル
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